
- 準耐火建築物って何?
- 4つに分類されるって聞いたけどホント?
- 「ロ準耐火」や「イ準耐火」それぞれの基準が知りたい。
こんな疑問に答えます。
本記事では、建築基準法における準耐火建築物の基準をわかりやすく解説。
建築設計において準耐火建築物という用語の理解は欠かせません。戸建住宅から特殊建築物まで建物用途を問わず、幅広い計画に役立つ情報です。

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1000件以上の設計相談を受けた経験をもとに、建築基準法の知識をわかりやすくまとめていきます。ご参考までにどうぞ。
準耐火建築物とは【イ-1・イ-2・ロ-1・ロ-2の4種類】
準耐火建築物とは、建築基準法2条にもとづき、以下の基準を満たす建築物です。
- 主要構造部:準耐火性能
- 延焼ライン内の開口部:防火設備(建築基準法2条九の二号ロ)
準耐火性能は、大きく分けて2種類。
- 準耐火構造(イ準耐火)
- 準耐火構造と同等の準耐火性能を有するための技術的基準に適合するもの(ロ準耐火)
本記事では、準耐火建築物を主要構造部の仕様が異なる4つに分けて解説します。
延焼ライン内の開口部は防火設備が必須
準耐火建築物において延焼ラインにかかる開口部は「防火設備」が必須。
告示仕様、または大臣認定仕様のいずれかを選択することになります。
- 告示仕様:建築基準法の建設省告示第1360号に適合すること
- 大臣認定仕様:EB-####の認定を受けているもの
準耐火建築物(イ-1)の設計基準とは【木三共の必須知識】

準耐火建築物(イ-1)とは、以下の基準を満たす建築物です。
- 主要構造部:1時間準耐火基準に適合する準耐火構造
- 延焼ライン内の開口部:”建築基準法2条九の二号ロ”による防火設備
「1時間準耐火基準に適合する準耐火構造」は、告示仕様か大臣認定仕様のいずれかを選択。
- 告示仕様:建築基準法における国土交通省告示第195号に適合
- 大臣認定仕様:耐火被覆の仕様ごとに大臣の認定を受けているもの
特に「木造3階建て共同住宅」いわゆる「木三共(もくさんきょう)」を設計するときに欠かせない知識です。
準耐火建築物(イ-1)とは|3分でわかる設計の基準という記事で、”用語の意味”や”構造”を詳しく解説しています。
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準耐火建築物(イ-2)の設計基準とは
準防火地域内の3階建て住宅に多く用いられるのが「準耐火建築物(イ-2)」。
「45分準耐火」と呼ばれることもあり、火災発生後45分間、建物が倒壊しない構造をもちます。

準耐火建築物(イ-2)について、大まかにまとめると下記のとおり。
- 主要構造部:45分間準耐火基準に適合する準耐火構造
- 延焼ライン内の開口部:”建築基準法2条九の二号ロ”による防火設備
- 建築物の地上部分の層間変形角:1/150以内
「45分間準耐火基準に適合する準耐火構造」は、告示か大臣認定仕様のいずれかを選択。
- 告示仕様:建築基準法における国土交通省告示第1358号に適合
- 大臣認定仕様:耐火被覆の仕様ごとに大臣の認定を受けているもの
詳しくは、準耐火建築物(イ-2)とは?3分でわかる設計の基準という記事をご確認ください。
準耐火建築物(ロ-1)の設計基準とは【外壁耐火】

準耐火建築物(ロ-1)は、通称「外壁耐火」。外壁と屋根の耐火性能を高めることで、建物の倒壊を防止します。
具体的には、以下の基準を満たす建築物。
- 主要構造部:準耐火構造と同等の耐火性能をもつこと
- 延焼のおそれのある開口部:”建築基準法2条九の二号ロ”に該当する防火設備
✓「準耐火構造と同等の耐火性能」として求められる仕様
- 外壁:耐火構造
- 屋根(延焼のおそれのある部分):準耐火構造など
- 屋根(一般部分):不燃材料で造るか、または葺く
詳しくは、準耐火建築物(ロ-1)とは?3分でわかる設計の基準という記事で解説しています。
準耐火建築物(ロ-2)の設計基準とは【主要構造部の不燃化】

『準耐火建築物(ロ-2)』は、主要構造部を不燃材料でつくるため、主に鉄骨造の建物で用いられます。
以下の2つの基準を満たすもの。
- 主要構造部:不燃材料で造り、”準耐火構造と同等の耐火性能”をもつこと
- 延焼のおそれのある開口部:”建築基準法2条九の二号ロ”に該当する防火設備
主要構造部ごとの基準は、以下のとおり。
- 柱 、はり:不燃材料
- 壁:不燃材料および準不燃材料
- 外壁 (一般):不燃材料および準不燃材料
- 外壁 (延焼のおそれのある部分):耐火構造・準耐火構造または防火構造
- 床(2階以下):不燃材料および準不燃材料
- 床(3階以下):準耐火構造又平成12年告示第1368号に適合する構造
- 屋根:
- 不燃材料で造るか又はふく
- 準耐火構造(屋外に面する部分が準不燃 材料であるもの)
- 耐火構造(屋外面に断熱材及び防水材を 張ったもので屋外面を準不燃材料で造り勾配 30 度以内のもの)
- 階段:不燃材料および準不燃材料
詳しくは、準耐火建築物(ロ-2)とは?3分でわかる設計の基準をご確認ください。
準耐火建築物の種類によって異なる「建築基準法の制限」
準耐火建築物の種別の選択は、設計に大きな影響をおよぼすもの。
「イ準耐火」または「ロ準耐火」のどちらを選ぶかで、建築基準法の制限が変わります。
「竪穴区画(建築基準法施行令112条)」は、その一例。
例えば、3階建の事務所ビルを設計するとして、主要構造部が準耐火構造で造られた「イ準耐火建築物」は竪穴区画が必要となります。
しかし、「ロ準耐火建築物」であれば、主要構造部が準耐火構造ではないため竪穴区画が不要となるケースも。詳しくは、準耐火建築物(ロ-1・ロ-2)は竪穴区画が緩和?【ロ準耐による区画免除】という記事で解説しています。
他にも「面積区画(建築基準法施行令112条)」が必要となる規模や区画の基準も変化しますね。

おおまかに言えば、「準耐火イ-2・ロ-1」は、500㎡以内ごとの面積区画。
「準耐火イ-1・ロ-2は床面積1000㎡以内ごとの区画でOK」など、各種別によって制限が異なります。
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まとめ
- 準耐火建築物とは、下記の基準を満たす建築物。
- 主要構造部:準耐火性能
- 延焼ライン内の開口部:防火設備
- 準耐火建築物は、主要構造部の仕様ごとに4種類に分かれる。
- 準耐火建築物の種類によって、建築基準法の制限が変わる。
- 竪穴区画の要否
- 面積区画の規模・構造
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