
- 居室の採光について、計算方法が知りたい。
- LVSを正しく算定できてるか不安…。
- 採光補正係数の取り方って地域ごとに異なる?
こういった疑問に答えます。
この記事では、居室における『採光』について、できる限りわかりやすく解説していきます。
記事を読み進めてもらえれば、『採光』の計算方法について、基本的な内容が理解していただけるかと。

当サイトは、確認検査機関で意匠審査を担当していた一級建築士が運営しています。
住宅から特殊建築物まで、1000件以上の設計相談を受けて得た建築基準法の知識を、できるだけわかりやすくまとめていくので、ご参考までにどうぞ。
居室における『採光』の計算とは
居室において採光上有窓と判定されるためには、以下の基準を満たす必要があります。
✔ 居室用途ごとに定められた割合(建築基準法施行令19条)※一部抜粋
建築物の用途 | 居室の用途 | 割合 |
住宅 | 居室 | 1/7 |
病院・診療所 | 寝室 | 1/7 |
幼稚園 | 教室 | 1/5 |
✔ 採光補正係数:「隣地境界線までの水平距離」や「敷地内の別の建築物との離隔距離」「用途地域」などの影響を考慮した”光の取り入れやすさを示す数値”。
知ってる方も多いと思いますが、建築基準法において「居室には日光を取り入れる窓が必要」というのが原則。

ただ、原則というからには例外があって、、、”採光が必須の居室”と”無くてもいい居室”があります。
採光が「必須の居室」と「無くてもいい居室」
”採光窓が必須の居室”について、おおまかにまとめると、以下のとおり。
採光が必須の居室 | 住宅・保育所・学校などの居室で、用途ごとに採光の割合が決められている居室 |
その他の居室 | 防火避難の規定における厳しい制限をクリアすれば、採光窓がなくてもよい居室 |

まず、自分が設計しようとしている建物の居室に、採光が必須かどうか、建築基準法で調べることからスタートですね。
採光が必須となる居室まとめ
建築基準法(令19条)において”採光が絶対に必要な居室”をまとめたのが以下の表です。
居室の種類 | 割合 | |
(一) | 幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校又は幼保連携型認定こども園の教室 | 1/5 |
(二) | 保育所及び幼保連携型認定こども園の保育室 | |
(三) | 病院又は診療所の病室 | 1/7 |
(四) | 寄宿舎の寝室又は下宿の宿泊室 | |
(五) |
| |
(六) | (一)に掲げる学校以外の学校の教室 | 1/10 |
(七) | 病院、診療所及び児童福祉施設等の居室のうち入院患者又は入所する者の談話、娯楽その他これらに類する目的のために使用されるもの |
居室に採光が取れないとどうなる?
採光が必須の室用途でない場合は、窓がない居室、いわゆる「採光無窓」でも構いません。
ただし、採光無窓になると「居室内を不燃材料の壁で区画しなければならない」とか、「階段に至るまでの歩行距離が短くなるよう制限される」など、防火避難規定における厳しい条件をクリアしなくてはいけないので要注意。

無窓居室があると、設計の難易度は格段に上がります。
採光無窓の居室にかかる建築基準法の制限を詳しく知りたい方は、無窓居室とは?採光・換気・排煙・避難の4種類を整理【一覧表あり】という記事をご確認ください。
採光の検討が不要な建物用途ってある?
結論からいうと、採光が取れているかどうかの検討が不要な建物用途はありません。
どんな用途の建物を設計するときでも、居室(継続して利用する部屋)があれば、採光窓の検討は必要です。
建築基準法について、あまり詳しくない設計者の方から「飲食店を計画しているんだけど、非常照明をつければ採光窓は不要だよね?」という質問をされることもありますが、これは大きな勘違い。
採光窓がいらないのではありません。法的な厳しい制限を満たせるのであれば採光窓を設けなくてもよいという話です。

採光無窓になると、建築基準法における規制が厳しくなる、ということを肝に命じておきましょう。
『採光補正係数』の計算方法
✔ 採光窓の計算式
採光窓の計算式における『採光補正係数』とは、どのように算定するか解説します。
まず、「採光補正係数の計算式は、用途地域によって変わる」ということを理解しておきましょう。
用途地域ごとに異なる『採光補正係数の計算式』を整理すると、以下のとおり。
✔ 採光補正係数の計算式
用途地域 | 算定式 | 採光補正係数を1とみなせる(窓から隣地・別建物までの)水平距離 |
住居系地域 | (D/H)×6-1.4 | 7m |
工業系地域 | (D/H)×8-1 | 5m |
商業系地域 | (D/H)×10-1 | 4m |
上記の算定式における(D/H)を”採光関係比率”と言います。

採光補正係数は最大値が「3」と決まっています。

つまり、計算した結果、3を超える数値となった場合であっても「採光補正係数3」ということですね。
さらに覚えておきたいのが、採光窓が道路に面していたり、隣地境界線から一定の距離以上離れていると、採光補正係数が最低でも「1」は得られるという点。
要件 | 採光補正係数の値 | ||
窓が道に面する場合 | 採光補正係数<1 | 採光補正係数=1 | |
窓が道に面していない場合 | 住居系地域 | (窓から隣地・別建物までの) 水平距離7m | |
工業系地域 | 水平距離5m | ||
商業系地域 | 水平距離4m |
建築確認において意識したい採光計算テクニック
採光窓が道路に面していれば、「採光補正係数=1」は最低でも確保できるので、計算不要となる場合があります。
これは、特に確認申請図書を作るときに意識したいテクニック。
採光補正係数「1」で計算しても基準をクリアするのであれば、わざわざ道路との空き寸法などを考慮して採光関係比率を計算するのはやめましょう。
不要な計算をすることで、ミスが起こる可能性が高くなります。
図面にコメントで、「道路に面しているため採光補正係数を1とする」と書けばOK。
こういったコメントだけ書かれている方が、確認検査員も喜ぶと思います。

計算が書かれていると、数値が正しいかどうかの検算をしなければならず、ムダに時間がかかるので…。
設計者も確認検査機関も、お互い意味のない労力を使わないために、居室の採光計算は、基準を満たすための最低限の計算で済ませましょう。
例えば、採光の基準は道路に面する窓だけでクリアしているのに、居室に窓が6つあるからといって、すべての窓で採光について計算するのはやめるべき。
貴重な時間をなくすことになり、ミスをするリスクも高くなるからです。
確認申請を出す設計者は、できるだけシンプルに、ミスが起こりづらい図面を作るよう心がけましょう。
建築基準法で『居室の採光』について読んでみる
居室の採光については、建築基準法28条に書かれています。
「建築基準法を読みたくない」という方は、建築法規PRO2020 図解建築申請法規マニュアルや建築申請memo2020
といった書籍で、図や表を見て理解を深めるのがおすすめです。
(居室の採光及び換気)
第28条
住宅、学校、病院、診療所、寄宿舎、下宿その他これらに類する建築物で政令で定めるものの居室(居住のための居室、学校の教室、病院の病室その他これらに類するものとして政令で定めるものに限る。)には、採光のための窓その他の開口部を設け、その採光に有効な部分の面積は、その居室の床面積に対して、住宅にあつては1/7以上、その他の建築物にあつては1/5から1/10までの間において政令で定める割合以上としなければならない。ただし、地階若しくは地下工作物内に設ける居室その他これらに類する居室又は温湿度調整を必要とする作業を行う作業室その他用途上やむを得ない居室については、この限りでない。
以下省略
”建築基準法28条における政令で定める居室”については、施行令19条を確認しましょう。
(学校、病院、児童福祉施設等の居室の採光)
第19条
前略
2 法第28条第1項の政令で定める居室は、次に掲げるものとする。
一 保育所及び幼保連携型認定こども園の保育室
二 診療所の病室
三 児童福祉施設等の寝室(入所する者の使用するものに限る。)
四 児童福祉施設等(保育所を除く。)の居室のうちこれらに入所し、又は通う者に対する保育、訓練、日常生活に必要な便宜の供与その他これらに類する目的のために使用されるもの
五 病院、診療所及び児童福祉施設等の居室のうち入院患者又は入所する者の談話、娯楽その他これらに類する目的のために使用されるもの3 法第二十八条第一項に規定する学校等における居室の窓その他の開口部で採光に有効な部分の面積のその床面積に対する割合は、それぞれ次の表に掲げる割合以上でなければならない。
以下省略
まとめ
- 居室における採光の計算とは、以下の式を満たすことです。
- 居室の床面積 × 居室用途ごとに定められた割合 ≦ 窓の面積 × 採光補正係数
- 採光が必須の用途でない場合は、防火避難規定における厳しい条件をクリアすれば「採光無窓」でもOK。
- 『採光補正係数の計算式』は、用途地域ごとに異なる
- 採光補正係数は最大値が「3」
- 居室の採光計算は、基準を満たすための最低限の計算で済ませましょう。