
- 建築基準法の『児童福祉施設等』には、どんな用途が含まれる?
- 幼稚園は児童福祉施設ではなく、学校とみなされる?
- 老人ホームやデイサービスも児童福祉施設等に含まれる?
こんな疑問に答えます。
本記事では、建築基準法における『児童福祉施設等』に含まれる具体的な用途種別をまとめて解説。
計画する建築物が「児童福祉施設等」という用途に当てはまるかどうかを一覧表でチェックできます。
保育所・幼稚園・サービス付き高齢者向け住宅など、確認申請でよくある質問も取り上げているので、用途判定に迷う設計者に役立つ情報かと。

このサイトは、確認検査機関で意匠審査を担当していた一級建築士が運営しています。
住宅から特殊建築物まで、1000件以上の設計相談を受けて得た建築基準法の知識を、できるだけわかりやすくまとめていくので、ご参考までにどうぞ。
建築基準法における『児童福祉施設等』とは

建築基準法における『児童福祉施設等』という用語の「〜等」のなかには、多くの建物用途が含まれています。
箇条書きでまとめると以下のとおり。
✔️児童福祉施設等に含まれる建物用途
- 児童福祉施設
- 助産所
- 身体障害者社会参加支援施設
- 保護施設
- 婦人保護施設
- 老人福祉施設
- 有料老人ホーム
- 母子保健施設
- 障害者支援施設
- 地域活動支援センター
- 福祉ホーム
- 障害福祉サービス事業
さらに、上記の福祉施設は事業内容に応じて、細分化された名称で運営されています。
例えば、デイサービスという施設は、建築基準法の本文には「児童福祉施設等」として明記されていません。
ですが、”老人福祉法”にもとづく施設にあたるので、大きなくくりで言えば「老人福祉施設」であり、建築基準法における「児童福祉施設等」に含まれます。

「児童福祉施設等」は、小規模な建物でも直通階段を2つ設置しなければいけないなど、避難規定の制限がかなり厳しくなるので要注意ですね。
『児童福祉施設等』の施設名【一覧表】
『児童福祉施設等』に含まれる用途について、細かく分かれた施設名称をまとめると以下のとおり。
児童福祉施設(児童福祉法第7条第1項)
施設名 | 根拠となる条文 |
助産施設 | 児童福祉法 36条 |
乳児院 | 児童福祉法 37条 |
母子生活支援施設 | 児童福祉法 38条 |
保育所 | 児童福祉法 39条 |
幼保連携認定こども園 | 児童福祉法 39条の2 |
児童厚生施設 | 児童福祉法 40条 |
児童養護施設 | 児童福祉法 41条 |
障害児入所施設 | 児童福祉法 42条 |
児童発達支援センター | 児童福祉法 43条 |
児童心理治療施設 | 児童福祉法 43条の2 |
児童自立支援施設 | 児童福祉法 44条 |
児童家庭支援センター | 児童福祉法 44条の2 |
助産所(医療法第2条第1項)
施設名 | 根拠となる条文 |
助産所 | 医療法 2条 |
身体障害者社会参加支援施設(身体障害者福祉法第5条第1項)
施設名 | 根拠となる条文 |
身体障害者福祉センター | 身体障害者福祉法 31条 |
盲導犬訓練施設 | 身体障害者福祉法 33条 |
※補装具製作施設及び視聴覚障害者情報提供施設を除く
保護施設(生活保護法第38条第1項)
施設名 | 根拠となる条文 |
救護施設 | 生活保護法 38条 |
更正施設 | 生活保護法 37条 |
授産施設 | 生活保護法 38条 |
宿所提供施設 | 生活保護法 39条 |
※医療保護施設を除く
老人福祉施設(老人福祉法第5条の3)
施設名 | 根拠となる条文 |
老人デイサービスセンター | 老人福祉法 20条の2の2 |
老人短期入所施設 | 老人福祉法 20条の3 |
養護老人ホーム | 老人福祉法 20条の4 |
特別養護老人ホーム | 老人福祉法 20条の5 |
軽費老人ホーム | 老人福祉法 20条の6 |
老人福祉センター | 老人福祉法 20条の7 |
老人介護支援センター | 老人福祉法 20条の7の2 |
母子保健施設(母子保健法第3章)
施設名 | 根拠となる条文 |
母子健康包括支援センター | 母子保健法 22条 |
障害者支援施設(障害者総合支援法第5条第11項)
施設名 | 根拠となる条文 |
身体・知的・精神障がい者支援施設(通所系) | 障害者総合支援法 5条11項 |
精神障がい者支援施設(居住系) | 障害者総合支援法 5条11項 |
障害福祉サービス事業(障害者総合支援法第5条)
施設名 | 根拠となる条文 |
生活介護事業を行う施設 | 障害者総合支援法 5条7項 |
自立訓練事業を行う施設 | 障害者総合支援法 5条12項 |
就労移行支援事業を行う施設 | 障害者総合支援法 5条13項 |
就労継続支援事業を行う施設 | 障害者総合支援法 5条14項 |
※生活介護、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援を行う事業に限る
【建築基準法】幼稚園は“学校等”、保育所は“児童福祉施設等”
幼稚園は、建築基準法において「学校」として扱われるため、児童福祉施設等には含まれません。
- 保育所:児童福祉施設(児童福祉法)
- 幼稚園:学校(学校教育法)
✔ 建築基準法における学校の定義(学校教育法1条より)
- 幼稚園
- 小学校
- 中学校
- 義務教育学校
- 高等学校
- 中等教育学校
- 特別支援学校
- 大学
- 高等専門学校
建築基準法上の「学校」にあたるか、「児童福祉施設」となるかで法律の制限が大きく変わります。

例えば、「学校」であれば排煙設備の緩和が適用され、「児童福祉施設」には免除規定がない等。
保育所や幼稚園をはじめて設計する場合、どのような法規制があるかイメージがつかめないという方は、[用途別]建築法規エンサイクロペディアといった書籍を読みましょう。
建築基準法だけでなく、消防法なども含めた設計の全体像がつかめると思います。
【用途判断に迷う事例①】サービス付き高齢者向け住宅
サービス付き高齢者向け住宅(通称:サ高住)は、設計するプランによって、児童福祉施設等にあてはまるかどうかの用途判断が分かれます。
間取りや施設の利用形態に応じて、下記3つのいずれかに分類。
- 老人ホーム(児童福祉施設等)
- 共同住宅
- 寄宿舎
例えば、大阪市では下表の基準にもとづいて用途の判断を行っています。
【用途判断に迷う事例②】介護老人保健施設

介護老人保健施設は、建築基準法または建築士法において、入所定員に応じ「病院」または「診療所」の用途に分類されます。
つまり、建築基準法の「児童福祉施設等」用途に含まれていません。
✔ 介護老人保健施設の取り扱い
- 入所定員20人以上のもの:「病院」として扱う
- 入所定員19人以下のもの:「診療所」として扱う
児童福祉施設等について建築基準法で読む
児童福祉施設等の定義が書かれているのは、建築基準法施行令19条。
「建築基準法を読みたくない」という方は、建築法規PRO2020 図解建築申請法規マニュアルや建築申請memo2020
といった書籍で、図や表を見て理解するのがおすすめです。
第19条
法第28条第1項(法第87条第3項において準用する場合を含む。以下この条及び次条において同じ。)の政令で定める建築物は、児童福祉施設(幼保連携型認定こども園を除く。)、助産所、身体障害者社会参加支援施設(補装具製作施設及び視聴覚障害者情報提供施設を除く。)、保護施設(医療保護施設を除く。)、婦人保護施設、老人福祉施設、有料老人ホーム、母子保健施設、障害者支援施設、地域活動支援センター、福祉ホーム又は障害福祉サービス事業(生活介護、自立訓練、就労移行支援又は就労継続支援を行う事業に限る。)の用に供する施設(以下「児童福祉施設等」という。)とする。
ちなみに、「幼保連携型認定こども園」は、令19条では「児童福祉施設等」に含まれていません。
ですが、令115条の3に「児童福祉施設等(幼保連携型認定こども園を含む。以下同じ。)」と書かれています。

つまり、令115条の3より後の規定では、”児童福祉施設等”とみなされ、避難規定(令116条の2)など厳しい基準が適用されます。
第115条の3
法別表第1(い)欄の(二)項から(四)項まで及び(六)項(法第87条第3項において法第27条の規定を準用する場合を含む。)に掲げる用途に類するもので政令で定めるものは、それぞれ次の各号に掲げるものとする。
一 (二)項の用途に類するもの 児童福祉施設等(幼保連携型認定こども園を含む。以下同じ。)
以下省略
まとめ
- 建築基準法における『児童福祉施設等』という用語には、多くの建物用途が含まれている。
- 児童福祉施設等に含まれる用途
- 児童福祉施設
- 助産所
- 身体障害者社会参加支援施設
- 保護施設
- 婦人保護施設
- 老人福祉施設
- 有料老人ホーム
- 母子保健施設
- 障害者支援施設
- 地域活動支援センター
- 福祉ホーム
- 障害福祉サービス事業
- 上記の福祉施設は事業内容に応じて、細分化された名称で運営されている。
- 本記事の一覧表で「児童福祉施設等」に含まれるかをチェック。
- 幼稚園は「学校」のため、児童福祉施設に該当しない。
- 幼稚園:学校
- 保育所:児童福祉施設
- サービス付き高齢者向け住宅(通称:サ高住)は、間取りや利用形態に応じて、下記のいずれかに分類。
- 老人ホーム(児童福祉施設等)
- 共同住宅
- 寄宿舎
- 介護老人保健施設は入所定員に応じて、下記のように分類。
- 入所定員20人以上:病院
- 入所定員19人以下:診療所