
- 小屋裏収納・ロフト・床下収納を設計するときの基準は?
- 建築基準法において、どんな規制がかかる?
- 階段で上がる小屋裏収納はつくれる?
こんな悩みに答えます。
本記事では、小屋裏物置等(小屋裏収納・ロフト・床下収納)をつくるときの注意点や建築基準法による規制をわかりやすく解説。
「階数・床面積に含まれない小屋裏物置等」を設計する知識が身につきます。

このサイトは、確認検査機関で審査を担当していた一級建築士が運営。
住宅から特殊建築物まで1000件以上の設計相談を受けた経験をもとに、建築知識をわかりやすくまとめていきます。ご参考までにどうぞ。
階数・床面積に含まれない小屋裏収納・床下収納・ロフトとは
「小屋裏収納・床下収納・ロフト」で、一定の基準を満たすものは、階数・床面積に含まれません。
これは、国土交通省(旧建設省)の通達(昭32住指発461号)によるもの。
普通の構造の小屋裏の一部を利用し、季節的に不要な物等を置く設備を設けたものと認められる程度のもの等は、通常階数に算入されない。
ちなみに、戸建て住宅につくられる小屋裏収納の多くは、階数・床面積に入らないよう設計されています。

あくまでも「収納」として利用することが前提。
例えば、階数に含まれていないロフトを居室(寝室など)として利用することは、違法行為となるため注意しましょう。
小屋裏収納(小屋裏物置)の設計基準
小屋裏収納とは、天井と屋根の間(天井裏)にある収納のことです。
「階数・床面積に含まれない小屋裏収納」として日本建築行政会議の定めた基準は、以下のとおり。
基準 | 概要 |
余剰空間 | 小屋裏の余剰空間を利用するもの |
面積 | 小屋裏収納の水平投影面積<小屋裏収納のある階の床面積×1/2 |
内部の高さ | 小屋裏収納の内部の天井高さは1.4m以下 |
直下の天井高さ | 小屋裏収納の直下の天井高さは2.1m以上 |
用途 | 収納以外の用途での利用不可 |
昇降方法 |
(※階段を不可としている特定行政庁もある) |
出し入れ口の位置 | 室内から利用すること(外部出入り口のあるものは不可) |
ただし、特定行政庁によっては上記に加えて、さらに厳しい規制をかけていることがあります。
例えば、大阪府を見てみましょう。
Q.小屋裏部分を利用した場合の取扱いはどうなるか。
A.住宅の小屋裏部分、天井裏部分等の余剰空間を利用して設ける物置(以下「物置」という。)で、次の各号に該当するものについては、建築基準法の規定の適用にあたっては、階とみなさず、床面積も算入しない。なお、計画にあたっては防火上、構造上の安全性を確保すること。(平成 12 年告示1351号参照)
(1) 各階において、その階に出し入れ口がある物置の水平投影面積の合計が、その階の床面積の2分の1未満であること。また、下図のような場合は、天井裏物置と床下物置の水平投影面積の合計がその直下か直上の階の小さい方の床面積の2分の1未満であること。
(2) 物置の最高の内法高さは 1.4m 以下であること。なお、下図のような場合は、1 階天井裏物置と2階床下物置が一体の物置として内法高さを適用する。
(3) 物の出し入れのために利用するはしご等は、固定式でないこと。ただし、一戸建ての住宅等に設ける物置、又は床下物置で簡易なものはこの限りでない。
(4) 横から物を出し入れしないこと。ただし、一戸建ての住宅等に設ける図-3のような物置、又は図-4のようなロフトの場合を除く。
日本建築行政会議よりも厳しい基準を加えていますね。
他にも、行政ごとに見解が異なりやすいのは以下の条件です。
- 余剰空間かどうかの判定基準
- 住宅以外の用途での設置可否
- 階段の可否
- 固定はしごの可否
- 出し入れ口の方向に関する制限
- 窓をつける場合の面積の制限

計画中の小屋裏収納が階数・床面積に含まれないかどうか不安なときは、指定確認検査機関に相談しましょう。
床下収納の設計基準

床下収納とは、床下の空間につくる収納スペースです。
階数・床面積に含まれない床下収納の基準は、以下のとおり。
基準 | 概要 |
余剰空間 | 床下の余剰空間を利用するもの |
面積 | 床下収納の水平投影面積<床下収納のある階の床面積×1/2 |
内部の高さ | 床下収納の内部の天井高さは1.4m以下 |
用途 | 収納以外の用途での利用不可 |
昇降方法 |
(※階段を不可としている特定行政庁もある) |
出し入れ口の位置 | 室内から利用すること(外部出入り口のあるものは不可) |
ロフトの設計基準

ロフトとは、天井の高い部屋で、一部を二層式にした収納スペースのことです。
「小屋裏物置」と「ロフト」の違いは扉があるかどうか。
- 小屋裏物置:扉あり。閉鎖性が高い。
- ロフト:扉がない。開放性が高い。
✓ 階数・床面積に含まれないロフトの基準
基準 | 概要 |
余剰空間 | 小屋裏の余剰空間を利用するもの |
面積 | ロフトの水平投影面積<ロフトのある階の床面積×1/2 |
内部の高さ | ロフトの内部の天井高さは1.4m以下 |
直下の天井高さ | ロフトの直下の天井高さは2.1m以上 |
用途 | 収納以外の用途での利用不可 |
昇降方法 |
(※階段を不可としている特定行政庁もある) |
出し入れ口の位置 | 室内から利用すること(外部出入り口のあるものは不可) |
小屋裏収納・床下収納・ロフトに関するQ&A
小屋裏収納・床下収納・ロフトについて、よくある質問をまとめました。
- 「階数・床面積に含まれない小屋裏収納」に階段をつくることはできる?
- 小屋裏収納が「余剰空間を利用しているかどうか」はどのように判断する?
- 小屋裏収納の側面に出し入れ口を設けてもいい?
- 小屋裏収納に窓を設けてもいい?
- スキップフロアのある建物で、階段の途中に床下収納を設けてもよい?
- 「ロフト」と「棚」は、どう違う?
【Q&A】小屋裏収納に階段をつくることはできる?
「書籍:基準総則・集団規定の適用事例」には小規模な階段に関する記述があります。
小屋裏物置等への専用の階段は、法第2条第5号に規定する「局部的な小階段」に該当する。
ただし、階段を設置不可としている特定行政庁もあります。
例えば、大阪府の基準は以下のとおり。
物の出し入れのために利用するはしご等は、固定式でないこと。ただし、一戸建ての住宅等に設ける物置、又は床下物置で簡易なものはこの限りでない。
【Q&A】余剰空間かどうかの判断基準
✓ 【大阪府】 余剰空間を利用した物置として認められない事例

余剰空間とは、意図せず余ってしまった空間のこと。

小屋裏物置をつくる目的で、屋根の形状を変形させるのは不可となります。
【Q&A】出し入れ口に関する制限
大阪府では小屋裏収納に対して、横からの出し入れを禁止しています。
横から物を出し入れしないこと。ただし、一戸建ての住宅等に設ける図-3のような物置、又は図-4のようなロフトの場合を除く。

横入れ禁止の場合は、小屋裏収納の下(天井)に開口を設けることに。
【Q&A】小屋裏収納の窓に関する制限
例えば、大阪市は以下のとおり。
小屋裏物置等(ロフトを除く)には、原則として建物内外に面して開口部を設けないこと。ただし、換気用に設ける面積が 0.2m2程度の開口部は可とする。この場合の換気用開口部に設ける建具は、ガラス・アルミ等でつくられた固定又は可動のガラリとする。
出典:大阪市建築基準法取扱い
【Q&A】スキップフロア型の床下収納に関する制限
大阪府のように横からの出し入れを制限している場合は、スキップフロア型を計画できません。
【Q&A】「ロフト」と「棚」の違い
下図のような出幅が 1.0m 以下の棚については、小屋裏物置及びロフトに該当せず、階とみなさず、床面積に算入しないものとして扱う。(棚の上部及び下部の高さ制限なし。)
出典:大阪市建築基準法取扱い
まとめ
- 小屋裏収納・床下収納・ロフトで、一定の基準を満たすものは、階数・床面積に含まれない。
- 小屋裏収納:天井と屋根の間(天井裏)にある収納。
- 床下収納:床下の空間につくる収納。
- ロフト:天井の高い部屋で、一部を二層式にした収納。
- 「階数・床面積に含まれない小屋裏物置等」の基準(日本建築行政会議)
- 小屋裏の余剰空間を利用するもの
- 小屋裏物置等の水平投影面積<小屋裏収納のある階の床面積×1/2
- 小屋裏物置等の内部の天井高さは1.4m以下
- 小屋裏物置等の直下の天井高さは2.1m以上
- 収納以外の用途での利用不可
- 昇降方法は、階段または、はしご
- 室内から利用すること(外部出入り口のあるものは不可)
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