
- 建築基準法における「地階」の定義は?
- 道路と敷地に高低差があり、設計が不安…。地階とみなされる条件、判定方法が知りたい。
- 地階に関する制限の緩和はある?
こんな疑問に答えます。
本記事では、建築設計における『地階』の判定基準を解説します。
建築計画のなかで、階全体が地中に埋まるような、誰がみても明らかな地階は意外と少ないもの。
傾斜地の一部に建物が埋め込まれるボックスガレージなど、地階か地上1階か、判定のむずかしいケースが数多くあります。
記事を読むことで、以下の知識が身につき、地階の設計に役立ちます。
- 地階の定義
- 地階の判定方法
- 地階に適用される緩和基準

このサイトは、確認検査機関で意匠審査を担当していた一級建築士が運営しています。
住宅から特殊建築物まで、1000件以上の設計相談を受けて得た建築基準法の知識をわかりやすくまとめていくので、ご参考までにどうぞ。
『地階』とは【建築基準法による用語の定義】
✔️ 建築基準法における地階の定義
『地階(ちかい)』とは、床が地盤面よりも下にある階で、建築基準法に定められた以下の要件を満たすもの。

部屋全体が地中に埋まっていなくても、建築基準法に定められた基準を満たせば、地階として計画が可能です。
ここからは、地階の判定基準について、詳しく解説していきます。
地階の判定基準【図解】
✔️地階判定における前提条件

つまり、地階の判定による床面・天井面は、階ごとに一つということ。
また、「部分的に地階」・「部分的に地上階」というように分けることもできません。
上記をふまえて、地階判定の基準をまとめると以下のとおり。
✔️地階の判定基準
- 階の床が地盤面よりも下にあること
- 床面から地盤面までの高さが、その階の天井高さの1/3以上であること
地階とみなすかどうかは、シンプルにいえばこれだけ。

ただ、上記の判定基準は解釈の幅が広いので、判断に迷うケースがわりと多い…。
そこで、以下の用語の解釈について詳しく解説します。
- 「床が地盤面下にある階」とは
- 地階の判定における「地盤面」とは
- 「床面から地盤面までの高さ」とは
- 「階の天井の高さ」とは
「床が地盤面下にある階」とは
✔️「床が地盤面より下にある階」の基準
傾斜地における地階判定①【地階とみなされるケース】
傾斜地における地階判定②【地階とならないケース】
傾斜地における地階判定③【地階とみなされるケース】
地階の判定における「地盤面」とは
地階の判定における「地盤面」は、建築物が周囲の地面と接する位置の「平均の高さである水平面」を意味します。
ただし、最高高さや軒高さの基準となる地盤面(令2条2項)とは違い、建築物と接する地面との高低差が3mを超えても、領域を分けることはありません。

あくまでも一つの建築物に、一つの地盤面を設定。日影規制において適用する平均地盤面とも異なります。
「床面から地盤面までの高さ」とは
「床面から地盤面までの高さ」とは、地面より下にある階のうち、最も高い位置にある床面から地盤面までの高さ。
折り上げ天井や勾配天井など、天井面が複数ある場合は要注意です。
「階の天井の高さ」とは
「階の天井の高さ」とは、地面より下にある階のうち、最も高い位置にある床面から、最も高い天井までの高さ。
床や天井に段差があるときの地階判定を図解すると以下のとおり。
地階における建築基準法の緩和まとめ
建築物の一部が地階とみなされることによって、建築基準法の制限が緩和されるケースがあります。
✔️地階における制限の緩和
- 建築面積の緩和
- 容積率の緩和
【緩和①】建築面積(建ぺい率)の緩和
地階で、地盤面からの高さが1m以下にある部分は、建築面積から除外されます。

建ぺい率による制限が厳しい敷地でも、半地下の部屋であれば設計が可能。
建築基準法の2条に定められた緩和です。
第2条
一 中略
二 建築面積 建築物(地階で地盤面上1m以下にある部分を除く。以下この号において同じ。)の外壁又はこれに代わる柱の中心線(軒、ひさし、はね出し縁その他これらに類するもので当該中心線から水平距離一メートル以上突き出たものがある場合においては、その端から水平距離一メートル後退した線)で囲まれた部分の水平投影面積による。ただし、国土交通大臣が高い開放性を有すると認めて指定する構造の建築物又はその部分については、その端から水平距離1m以内の部分の水平投影面積は、当該建築物の建築面積に算入しない。
【緩和②】容積率の緩和
✔️地階における容積率緩和が適用される条件
地下室の天井が地盤面からの高さ1m以下にある部分で、下記用途の床面積の1/3まで、容積率の対象から除外できる。
- 住宅
- 老人ホーム
- 福祉ホーム
- 上記の他これらに類する用途
建築基準法52条に緩和条文が書かれています。
3 前略
建築物の容積率(中略)の算定の基礎となる延べ面積には、建築物の地階でその天井が地盤面からの高さ1m以下にあるものの住宅又は老人ホーム、福祉ホームその他これらに類するもの(以下この項及び第六項において「老人ホーム等」という。)の用途に供する部分(第六項の政令で定める昇降機の昇降路の部分又は共同住宅若しくは老人ホーム等の共用の廊下若しくは階段の用に供する部分を除く。以下この項において同じ。)の床面積(当該床面積が当該建築物の住宅及び老人ホーム等の用途に供する部分の床面積の合計の1/3を超える場合においては、当該建築物の住宅及び老人ホーム等の用途に供する部分の床面積の合計の1/3)は、算入しないものとする。
「地階」の定義を建築基準法で読んでみる
地階の定義は、建築基準法施行令1条に定められています。
「建築基準法を読みたくない」という方は、建築法規PRO2020 図解建築申請法規マニュアルや建築申請memo2020
といった書籍で、図や表を見て理解するのがおすすめです。
第1節 用語の定義等
(用語の定義)
第1条 この政令において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 中略
二 地階床が地盤面下にある階で、床面から地盤面までの高さがその階の天井の高さの1/3以上のものをいう。
まとめ
- 『地階』とは、床が地盤面よりも下にある階で、以下の要件を満たすもの。
- 床面から地盤面までの高さが、階の天井の高さの1/3以上
- 地階判定における前提条件
- 地階の判定は、同一階で判定するものとし、部分的な判定はしない
- 地階の判定基準
- 階の床が地盤面よりも下にあること
- 床面から地盤面までの高さが、その階の天井高さの1/3以上であること
- 「階の床が地盤面よりも下」とは
- 床の周長の過半が地面よりも低い位置にあること
- 「地盤面」とは
- 建築物が周囲の地面と接する位置の「平均の高さである水平面」
- 「床面から地盤面までの高さ」とは
- 地面より下にある階のうち、最も高い位置にある床面から地盤面までの高さ
- 「階の天井の高さ」とは
- 地面より下にある階のうち、最も高い位置にある床面から、最も高い天井までの高さ。
- 「階の床が地盤面よりも下」とは
- 地階における制限の緩和
- 建築面積の緩和
- 地階で、地盤面からの高さが1m以下にある部分は、建築面積から除外
- 容積率の緩和
- 地下室の天井が地盤面からの高さ1m以下にある部分で、下記用途の床面積の1/3まで、容積率の対象から除外できる。
- 住宅
- 老人ホーム
- 福祉ホーム
- 上記の他これらに類する用途
- 地下室の天井が地盤面からの高さ1m以下にある部分で、下記用途の床面積の1/3まで、容積率の対象から除外できる。
- 建築面積の緩和