寄宿舎とは|建築基準法における定義を解説【共同住宅・寮との違い】

寄宿舎 建築基準法まとめ
  • 寄宿舎って何?
  • 建築基準法による定義が知りたい。
  • 共同住宅との違いは?

こんな疑問に答えます。

本記事では、「寄宿舎」という建物用途についてわかりやすく解説。

社員寮やグループホームなど、1つの建物に複数人が生活する建築計画をつくる方に役立つ情報です。

このサイトは、確認検査機関で審査を担当していた一級建築士が運営。

住宅から特殊建築物まで1000件以上の設計相談を受けた経験をもとに、建築知識をわかりやすくまとめていきます。ご参考までにどうぞ。

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寄宿舎とは

寄宿舎とは、1つの建築物に複数人が同居し、共用の便所・台所・浴室などが1ヵ所〜数ヵ所に設けられる居住施設のことです。

寄宿舎_平面図

寄宿舎の由来

  • 寄宿:生徒・会社員などが、学校・会社などの宿舎に住むこと。
  • 舎:人の住む建物。いえ。やしき。

学生寮をイメージするとわかりやすいでしょう。

たくさんの学生が風呂・トイレ・食堂を共有して使い、寝食をともにしていますね。

 

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建築基準法における分類

寄宿舎は建築基準法2条による「特殊建築物」に該当します。

特殊建築物は主に、以下のいずれかに当てはまるような建物のこと。

  • 多数の人が利用する
  • 衛生上・防火上の危険性が高い
  • 周辺への影響が大きい

多くの人が利用する施設では、火災のリスクが高まります。そのため、防火区画の設置や避難経路の確保など、建築基準法において防火や避難に関する厳しい規定が課せられています。

ちなみに、寄宿舎の床面積が200㎡を超える用途変更を行う場合、確認申請の提出も必要。

たとえば、事務所を社員寮(寄宿舎)へ転用するのは「用途変更」にあたるため、確認検査機関や行政の確認審査を受けなければなりません。

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寄宿舎と寮の違い

寮とは、寺院・学校・会社等の寄宿舎です。つまり、「寮」は広い意味で「寄宿舎」に含まれるもの。

どちらも、学生や労働者などが一定期間滞在するための施設を指します。

一般的には、学生が学校へ通うために滞在する場所として提供されることが多いですね。

 

寄宿舎と共同住宅の違い

共同住宅は以下の要件に当てはまる建築物です。

  1. 2つ以上の住戸がある。
  2. それぞれの住戸は独立していて、内部で行き来ができない。
  3. 廊下・階段等を各住戸で共有する。

マンションやアパートとも呼ばれますね。

寄宿舎は学生向けの集中型の宿泊施設であり、共同住宅は複数の家族や個人が独立した住戸で暮らすための住宅施設という違いがあります。

 

寄宿舎を設計する際の注意点

階数3以上の寄宿舎を計画する場合、原則として耐火建築物にしなければいけません。

耐火建築物

ただし、一定の条件を満たすことで緩和することも可能。

詳しくは、耐火建築物としなければならない特殊建築物|建築基準法27条を解説をご確認ください。

さらに、寄宿舎には建築基準法施行令114条による防火上主要な間仕切り壁も必要となります。

『防火上主要な間仕切り壁』とは、火災時に避難経路を確保するために重要となる壁のことです。

防火上主要な間仕切壁出典:国土交通省

【114条区画】防火上主要な間仕切壁_設置位置

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寄宿舎に関するQ&A

寄宿舎に関してよくある質問をまとめました。

  1. グループホームは建築基準法において、どの用途に当てはまる?
  2. シェアハウスは建築基準法において、どの用途に当てはまる?

 

グループホームの建築基準法における用途について

Q.グループホームは建築基準法において、どの用途に当てはまる?
A.グループホームは平面計画や利用形態によって、以下のいずれかの用途とみなされます。
・寄宿舎
・共同住宅
児童福祉施設等

寄宿舎と共同住宅の違いは以下のとおり。

  • 寄宿舎:共用の便所・台所・浴室などが設けられる居住施設。
  • 共同住宅:2以上の住戸があり、廊下・階段等を各住戸で共有する施設

高齢者・身体障害者・精神障害者など、特別な支援やケアが必要な人々が共同生活をするためのグループホームであれば児童福祉施設等に分類されます。

 

シェアハウスの建築基準法における用途について

Q.シェアハウスは建築基準法において、どの用途に当てはまる?
A.寄宿舎に該当します。

シェアハウスは個々のプライベートスペース(部屋)を持ちつつ、キッチンやリビングなどの共有スペースを共同で利用するのが特徴。

異なるバックグラウンドやライフスタイルを持つ人々が共同生活を楽しめる選択肢として人気がありますね。

世帯の異なる人々が同居して、便所・台所・浴室などを共用する計画のため寄宿舎とみなされます。

 

寄宿舎について建築基準法を読む

寄宿舎は建築基準法2条により、特殊建築物に分類されます。

「建築基準法を読みたくない」という方は、建築法規PRO2024 図解建築申請法規マニュアル建築申請memo2024といった書籍で、図や表を見て理解を深めていきましょう。

(用語の定義)
第二条 この法律において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

中略

二 特殊建築物 学校(専修学校及び各種学校を含む。以下同様とする。)、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、市場、ダンスホール、遊技場、公衆浴場、旅館、共同住宅、寄宿舎、下宿、工場、倉庫、自動車車庫、危険物の貯蔵場、と畜場、火葬場、汚物処理場その他これらに類する用途に供する建築物をいう。

寄宿舎には防火上主要な間仕切り壁の設置が必要です。

(建築物の界壁、間仕切壁及び隔壁)
第百十四条

中略

2 学校、病院、診療所(患者の収容施設を有しないものを除く。)、児童福祉施設等、ホテル、旅館、下宿、寄宿舎又はマーケットの用途に供する建築物の当該用途に供する部分については、その防火上主要な間仕切壁(自動スプリンクラー設備等設置部分その他防火上支障がないものとして国土交通大臣が定める部分の間仕切壁を除く。)を準耐火構造とし、第百十二条第四項各号のいずれかに該当する部分を除き、小屋裏又は天井裏に達せしめなければならない。

以下省略

 

まとめ

  • 寄宿舎とは、1つの建築物に複数人が同居し、共用の便所・台所・浴室などが設けられる居住施設。
  • 寄宿舎は建築基準法2条による「特殊建築物」に分類される。
  • 床面積が200㎡を超える寄宿舎への用途変更は、確認申請の提出が必要。
  • 寮とは、寺院・学校・会社等の寄宿舎。
  • 階数3以上の寄宿舎を計画する場合、原則として耐火建築物にすること。
  • 寄宿舎には建築基準法施行令114条による防火上主要な間仕切り壁が必要。

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