採光無窓居室の区画緩和について解説 |法35条の3→告示249号

採光無窓居室の区画緩和 防火規定
  • 居室に採光窓がとれない…。
  • 採光窓のない居室(採光無窓居室)の壁・天井を不燃材料でつくりたくない。緩和する規定はある?
  • 緩和告示をわかりやすく解説してほしい。

こんな疑問や要望に答えます。

 

本記事では、「採光無窓居室に必要な耐火構造等の区画」の緩和方法をわかりやすく解説。

「採光無窓居室」という用語について詳しく知りたい方は先に、無窓居室とは?採光・換気・排煙・避難の4種類を整理【一覧表あり】をご確認ください。

採光無窓居室は、その居室とその他の部分を「耐火構造」または「不燃材料」の壁・床で区画しなければなりません。

特に、木造建築物では不燃材料による区画はできず、耐火構造はハードルが高いので、採光無窓居室をつくりづらいですね。

そんなときに検討したいのが告示249号による緩和規定。木造建築物で窓のない居室をつくりたい設計者にとって役立つ情報です。

このサイトは、確認検査機関で審査を担当していた一級建築士が運営。

住宅から特殊建築物まで1000件以上の設計相談を受けた経験をもとに、建築知識をわかりやすくまとめていきます。ご参考までにどうぞ。

Sponsored Links

採光無窓居室の耐火構造等による区画の緩和基準

建築基準法35条の3による採光無窓居室であっても、「国土交通大臣が定める基準(告示249号)」を満たす場合は、耐火構造または不燃材料による区画が免除されます。

「国土交通大臣が定める基準(告示249号)」は、大きく分けて2パターンあり、いずれかを満足すればOK。

  1. 告示249号一号による緩和基準【令和2年4月1日施行】
  2. 告示249号二号による緩和基準【令和5年4月1日施行】

①よりも②の方が満たすべき条件が多くなっています。

Sponsored Links

1.告示249号一号による緩和基準【令和2年4月1日施行】

居室が以下のすべてに当てはまること。

  1. 居室は就寝用途(寝室、宿直室など)でないこと
  2. 以下のいずれかに該当すること
    • 居室の床面積が30㎡以内であること。
    • 避難階にある居室の場合:居室の各部分から屋外への出口に至る歩行距離が30m以下
    • 避難階の直上階 or 直下階にある居室の場合:居室の各部分から避難階における屋外への出口、または屋外避難階段(令第123条第2項)に至る歩行距離が20m以下
  3. 自動火災報知設備(令第110条の5に規定する基準による)を設けること

自動火災警報器の設置という条件はハードルが高いものの、その他の基準は満たしやすいですね。扱いやすい緩和規定だと思います。

 

2.告示249号二号による緩和基準【令和5年4月1日施行】

告示249号二号による緩和規定には、大きく分けて2種類の条件があります。

  1. 緩和が適用できない用途
  2. 建築物の設計基準

1.緩和が適用できない用途

緩和が適用できない居室は以下のとおり。

  • 就寝の用途である室(寝室、宿直室など)
  • 病院
  • 診療所(患者の収容施設があるものに限る)
  • 児童福祉施設等(通所のみに利用される施設は除く)
  • 地階にある室

緩和を利用する居室は、自力での避難が困難な方が利用しないこと。

 

2.建築物の設計基準

告示249号二号の緩和を適用するには、以下のイ~ヘすべての基準を満たす必要があります。

  • イ:居室から直通階段に至る廊下等の区画
  • ロ:直通階段の基準
  • ハ:避難階における廊下等の基準
  • ニ:居室から直通階段にいたる廊下等の基準
  • ホ:居室および廊下への非常用照明設置
  • ヘ:自動火災報知設備の設置

ここからは、それぞれの基準について詳しく解説します。

イ:居室から直通階段に至る廊下等の区画

建築物が以下の①または②のいずれかに当てはまること。

  1. 居室から直通階段に至る廊下等を以下のいずれかで区画すること。【不燃区画】
    • 不燃材料で造るか、または覆われた壁
    • 不燃材料で造るか、または覆われた戸(※ふすま、障子は不可) で令112条19項二号に規定する構造のもの
  2. 当該居室から直通階段に通ずる廊下等は、以下の両方に当てはまること。
    • 廊下等がスプリンクラー設備等を設けた室以外の室に面しないこと
    • 廊下等にスプリンクラー設備等を設けること

 「不燃区画」に関する補足

  • 壁は天井裏まで立ち上げることが必要。ただし、天井を不燃材料で造るか、覆われたものとすれば、壁は天井面までとすることが可能に。
  • 壁を小屋裏まで立ち上げた場合でも、建築基準法施行令112条20項および21項による貫通部処理は要求されません。
  • 不燃区画について、床の耐火性能等は要求されません。

スプリンクラー設備等とは

  • スプリンクラー設備(水源として、水道の用に供する水管を当該スプリンクラー設備に連結したものを除く)、水噴霧消火設備、泡消火設備その他これらに類するもので自動式のもの
  • スプリンクラー設備等には、パッケージ型自動消火設備は含まれない。

ロ:直通階段の基準

直通階段が、次のいずれかに当てはまること。

  1. 直通階段の階段とその他の部分を以下のいずれかで区画すること。
    • 準耐火構造の床または壁
    • 法2条九号の二ロに規定する防火設備で令112条19項二号に規定する構造を持つもの
  2. 直通階段が以下の両方に当てはまること。
    • 屋外に設けること
    • 屋内から直通階段に通ずる出入口に、法2条九号の二ロに規定する防火設備で令112条19項二号に規定する防火設備を設けること。

竪穴区画をすれば上記の基準を満たすことができますね。

ハ:避難階における廊下等の基準

避難階において、階段から屋外出口にいたる廊下等(※)を以下のいずれかで区画すること。

  • 準耐火構造の床または壁
  • 法2条九号の二ロに規定する防火設備で令112条19項二号に規定する構造を持つもの

廊下等(※)

廊下等は、火災の発生のおそれの少ない室に該当するものに限る。ただし、その廊下等にスプリンクラー設備等を設けた場合は除く。

ニ:居室から直通階段にいたる廊下等の基準

居室から直通階段にいたる廊下等が、火災の発生のおそれの少ない室であること。

緩和基準

居室が「不燃材料で造るか、覆われた壁または令112条19項二号に規定する構造の戸」で区画されている場合で、次の1〜3(その居室で火災が発生したときに避難が安全に行われることを火災により生じた煙またはガスの高さに基づき検証する方法)により確かめたときは免除。

  1. 当該居室に存する者(当該居室を通らなければ避難することができない者を含む。)の全てが当該居室において火災が発生してから当該居室からの避難を終了するまでの時間を、令和三年国土交通省告示第四百七十五号第一号イ及びロに掲げる式に基づき計算した時間を合計することにより計算すること。
  2. (1)の規定によって計算した時間が経過したときにおける当該居室において発生した火災により生じた煙又はガスの高さを、令和三年国土交通省告示第四百七十五号第二号に掲げる式に基づき計算すること。
  3. (2)の規定によって計算した高さが、一・八メートルを下回らないことを確かめること。

ホ:居室および廊下への非常用照明設置

「居室」と「その居室から地上に通ずる廊下等」に非常用照明(令126条の5)を設けること。

緩和基準

採光上有効に直接外気に開放された部分は、非常用照明の設置免除。

ヘ:自動火災報知設備の設置

建築物の居室に自動火災報知設備(令110条の5)を設けること。

警報設備は建築物全体に必要となります。

 

火災の発生のおそれの少ない室とは【告示1440号】

「火災の発生のおそれの少ない室」とは、以下に該当する建築物の部分で、壁・天井の室内に面する部分の仕上げを準不燃材料とした室です。

  • 昇降機その他の建築設備の機械室
  • 不燃性の物品を保管する室
  • 廊下
  • 階段
  • 便所

 

建築基準法を読む

採光無窓居室の緩和基準は、国土交通省告示第249号に定められています。

「建築基準法を読みたくない」という方は、建築法規PRO2024 図解建築申請法規マニュアル建築申請memo2024といった書籍で、図や表を見て理解を深めていきましょう。

建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)第百十一条第一項の規定に基づき、主要構造部を耐火構造等とすることを要しない避難上支障がない居室の基準を次のように定める。

令和2年3月6日 国土交通省告示第249号
改正 令和5年3月20日 国土交通省告示第207号

主要構造部を耐火構造等とすることを要しない避難上支障がない居室の基準を定める件

建築基準法施行令(以下「令」という。)第百十一条第一項に規定する避難上支障がない居室の基準は、次の各号のいずれかに掲げるものとする。

一 次のイからハまでのいずれか及び第二号ヘに該当すること。

イ 床面積が三十平方メートル以内の居室(寝室、宿直室その他の人の就寝の用に供するものを除く。以下この号において同じ。)であること。

ロ 避難階の居室で、当該居室の各部分から当該階における屋外への出口の一に至る歩行距離が三十メートル以下のものであること。

ハ 避難階の直上階又は直下階の居室で、当該居室の各部分から避難階における屋外への出口又は令第百二十三条第二項に規定する屋外に設ける避難階段に通ずる出入口の一に至る歩行距離が二十メートル以下のものであること。

二 次のいずれにも該当するものであること。

イ 次の(1)又は(2)のいずれかに該当すること。

(1) 居室(寝室、宿直室その他の人の就寝の用に供するもの、病院、診療所(患者の収容施設があるものに限る。)若しくは児童福祉施設等(令第百十五条の三第一号に規定する児童福祉施設等をいい、通所のみにより利用されるものを除く。)の用に供するもの及び地階に存するものを除く。以下同じ。)から令第百二十条の規定による直通階段(以下単に「直通階段」という。)に通ずる廊下等(廊下その他の避難の用に供する建築物の部分をいう。以下同じ。)が、不燃材料で造り、又は覆われた壁又は戸(ふすま、障子その他これらに類するものを除く。以下同じ。)で令第百十二条第十九項第二号に規定する構造であるもので区画されたものであること。

(2) 当該居室から直通階段に通ずる廊下等が、スプリンクラー設備(水源として、水道の用に供する水管を当該スプリンクラー設備に連結したものを除く。)、水噴霧消火設備、泡消火設備その他これらに類するもので自動式のもの(以下「スプリンクラー設備等」という。)を設けた室以外の室(令第百二十八条の六第二項に規定する火災の発生のおそれの少ない室(以下単に「火災の発生のおそれの少ない室」という。)を除く。)に面しないものであり、かつ、火災の発生のおそれの少ない室に該当する場合を除き、スプリンクラー設備等を設けたものであること。

ロ 直通階段が、次のいずれかに該当すること。

(1) 直通階段の階段室が、その他の部分と準耐火構造の床若しくは壁又は建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号。以下「法」という。)第二条第九号の二ロに規定する防火設備で令第百十二条第十九項第二号に規定する構造であるもので区画されたものであること。

(2) 直通階段が屋外に設けられ、かつ、屋内から当該直通階段に通ずる出入口に?に規定する防火設備を設けたものであること。

ハ 避難階における階段から屋外への出口に通ずる廊下等(火災の発生のおそれの少ない室に該当するものに限る。ただし、当該廊下等にスプリンクラー設備等を設けた場合においては、この限りでない。)が、準耐火構造の床若しくは壁又は法第二条第九号の二ロに規定する防火設備で令第百十二条第十九項第二号に規定する構造であるもので区画されたものであること。

ニ 居室から直通階段に通ずる廊下等が、火災の発生のおそれの少ない室に該当すること。ただし、不燃材料で造り、又は覆われた壁又は戸で令第百十二条第十九項第二号に規定する構造であるもので区画された居室に該当する場合において、次の?から?までに定めるところにより、当該居室で火災が発生した場合においても当該居室からの避難が安全に行われることを火災により生じた煙又はガスの高さに基づき検証する方法により確かめられたときは、この限りでない。

(1) 当該居室に存する者(当該居室を通らなければ避難することができない者を含む。)の全てが当該居室において火災が発生してから当該居室からの避難を終了するまでの時間を、令和三年国土交通省告示第四百七十五号第一号イ及びロに掲げる式に基づき計算した時間を合計することにより計算すること。

(2) (1)の規定によって計算した時間が経過したときにおける当該居室において発生した火災により生じた煙又はガスの高さを、令和三年国土交通省告示第四百七十五号第二号に掲げる式に基づき計算すること。

(3) (2)の規定によって計算した高さが、一・八メートルを下回らないことを確かめること。

ホ 居室及び当該居室から地上に通ずる廊下等(採光上有効に直接外気に開放された部分を除く。)が、令第百二十六条の五に規定する構造の非常用の照明装置を設けたものであること。

ヘ 令第百十条の五に規定する基準に従って警報設備(自動火災報知設備に限る。)を設けた建築物の居室であること。

附 則(令和2年3月6日 国土交通省告示第249号)
この告示は、建築基準法施行令の一部を改正する政令(令和元年政令第百八十一号)の施行の日(令和二年四月一日)から施行する。

附 則(令和5年3月20日 国土交通省告示第207号)
この告示は、建築基準法施行令の一部を改正する政令の施行の日(令和5年4月1日)から施行する。

 

まとめ

  • 法35条の3による採光無窓居室は「国土交通大臣が定める基準(告示249号)」を満たす場合、耐火構造または不燃材料による区画が免除される。
  • 国土交通大臣が定める基準(告示249号)は大きく分けて2つ。
    1. 告示249号一号による緩和基準
    2. 告示249号二号による緩和基準
  • 【告示249号一号】居室が以下すべてに当てはまること。
    1. 居室は就寝用途(寝室、宿直室など)でないこと
    2. 以下のいずれかに該当すること
      • 居室の床面積30㎡以内
      • 避難階にある居室の場合:居室の各部分から屋外への出口に至る歩行距離30m以下
      • 避難階の直上階 or 直下階にある居室の場合:居室の各部分から避難階における屋外への出口、または屋外避難階段(令第123条第2項)に至る歩行距離が20m以下
    3. 自動火災報知設備(令第110条の5に規定する基準による)を設けること
  • 【告示249号ニ号】適用できない用途
    • 就寝の用途である室(寝室、宿直室など)
    • 病院
    • 診療所(患者の収容施設があるものに限る)
    • 児童福祉施設等(通所のみに利用される施設は除く)
    • 地階にある室
  • 【告示249号ニ号】設計基準:以下のイ~ヘすべての基準を満たすこと
    • イ:居室から直通階段に至る廊下等の区画
    • ロ:直通階段の基準
    • ハ:避難階における廊下等の基準
    • ニ:居室から直通階段にいたる廊下等の基準
    • ホ:居室および廊下への非常用照明設置
    • ヘ:自動火災報知設備の設置

人気記事 転職3回の一級建築士が語る。おすすめ転職サイト・転職エージェント

人気記事 副業ブログで月5万円を目指すには? 始め方とおすすめの収益化方法

人気記事 一級建築士試験のおすすめ資格学校・アプリ【総合資格とスタディング】