
- 延焼ラインってなに?
- どんな建物を設計するときに必要?
- 敷地に建物が2棟あるとき、建物同士で延焼ラインを検討しないといけない?
- 延焼ラインを緩和する方法はある?
こんな疑問に答えます。
本記事では、建築基準法における『延焼ライン(延焼のおそれのある部分)』について解説。
図解をまじえて説明していくので、延焼ラインの基準が正しく理解できるかと。

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住宅から特殊建築物まで1000件以上の設計相談を受けて得た建築基準法の知識を、できるだけわかりやすくまとめていきます。ご参考までにどうぞ。
延焼ライン(延焼のおそれのある部分)とは
『延焼ライン』とは、”計画建物の隣の敷地”や”道路”で火災が発生したときに、火が燃え移る可能性のある範囲のことです。
延焼ラインの位置
延焼ラインの位置は、計画する建物の階数と、以下に示す境界線、中心線からの建物の離隔距離で決まります。
以下の“境界線等”から、建築物の1階部分で3m、2階部分で5m離れた位置に延焼ラインが発生します。
- 隣地境界線
- 道路中心線
- 敷地内に二つ以上の建物があり、床面積の合計が500㎡を超える場合、外壁同士の中心線
延焼ラインのイメージ図
建築基準法における延焼ラインの定義
延焼ラインとは略称で、建築基準法における正式名は「延焼のおそれのある部分」。
建築基準法において以下のように定義されています。
(用語の定義)
第2条 この法律において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。〈中略〉
六 延焼のおそれのある部分
隣地境界線、道路中心線又は同一敷地内の二以上の建築物(延べ面積の合計が500㎡以内の建築物は、一の建築物とみなす。)相互の外壁間の中心線から、1階にあつては3m以下、2階以上にあつては5m以下の距離にある建築物の部分をいう。ただし、防火上有効な公園、広場、川等の空地若しくは水面又は耐火構造の壁その他これらに類するものに面する部分を除く。
敷地内に建築物が2棟以上ある場合の延焼ライン
ひとつの敷地内に2つ以上の建物があり、それぞれの床面積の合計が500㎡を超えるときは、隣り合う建物同士の延焼ラインも検討しなければいけません。
これを「隣棟間(りんとうかん)延焼線」と呼ぶことも。
隣棟間延焼線について設計者が間違えやすいポイント
隣棟間延焼は床面積が500㎡をこえる場合にのみ必要な制限です。

敷地内に建物が2棟以上あったとしても、建物すべてを合計した延べ床面積が500㎡を超えない限り、隣棟間の延焼は検討不要ですね。
延焼ラインの緩和
延焼ライン(延焼のおそれのある部分)には、防火上有効な部分に対する緩和規定があります。
緩和が適用できる部分は以下のとおり。
- 都市計画公園
- 広場
- 川、水面
- 耐火構造の壁これらに類する部分
たとえば、計画敷地が都市計画公園に面している場合、その官民境界線からは延焼ラインは適用されません。
建築基準法における以下の「ただし書き」の部分ですね。
六 延焼のおそれのある部分 (中略)
ただし、防火上有効な公園、広場、川等の空地若しくは水面又は耐火構造の壁その他これらに類するものに面する部分を除く。
法文にはざっくりとしか書かれていません…。
「その他これらに類するもの」とは何か、建築基準法の本文では触れられていないため、詳しくは建築物の防火避難規定の解説という書籍を読む必要があります。

延焼ラインにかかる防火設備を減らしたい場合など、緩和規定を存分に使いたい場合は、”建築物の防火避難規定の解説”に書かれた基準にしたがって設計しましょう。
まとめ
- 延焼ラインとは、隣地や道路で火災が発生したときに、火が燃え移る可能性のある範囲のこと。
- 以下の“境界線等”から、建築物の1階部分で3m、2階部分で5m離れた位置に延焼ラインがかかる。
- 隣地境界線
- 道路中心線
- 二つ以上の建物があり「床面積の合計>500㎡」の場合、外壁同士の中心線
- ひとつの敷地内に2つ以上の建物があり、それぞれの床面積の合計が500㎡を超えるときは、隣り合う建物同士の延焼ラインも検討。
- 延焼ラインには、防火上有効な部分に適用される緩和規定あり。
- 都市計画公園
- 広場
- 川、水面
- 耐火構造の壁これらに類する部分