木三共(木造三階建共同住宅)の設計基準まとめ|敷地内通路の緩和方法

防火規定

※2019年(令和元年)の建築基準法改正にともない、記事を加筆・修正しました。

確認検査機関に勤めていると、木三共(もくさんきょう)の相談が多い…。

なぜ質問が多いかというと、3つの理由で設計の条件がわかりづらいからですね。

  1. 木三共の設計条件を示す法文(告示255号)が読み取りづらい
  2. 平成27年の法改正によって木三共の基準が変わった
  3. 建築基準法の法文だけでは詳細がわからず、内容を補完する書籍が必要なため

この記事では、木三共の設計の基準について、できるだけわかりやすく解説します。

木三共という用語の意味がわからない方は、先に木三共(=木造3階建て共同住宅)とは|建築基準法の用語を解説をどうぞ。

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「木三共」を設計するときは4つの基準を守りましょう

木三共で耐火建築物としないための条件として、建築基準法で定められている基準は以下の4つ。

  1. 主要構造部を1時間準耐火構造とすること
  2. 避難上有効なバルコニーを各住戸に設けること
  3. 幅員3mの通路を建築物の周囲に設けること
  4. 3階の住戸の開口部は防火設備であること(※防火地域・準防火地域のみ)

 

この4つの基準を満たせば、耐火建築物にすることなく「木造3階建て共同住宅」が建てられます。

計画敷地が狭小地で、「幅員3m以上の通路を建物周囲に設ける」という条件がクリアできない…。

安心してください。「幅員3mの通路」と「避難上有効なバルコニー」は、一定の条件を満たすことで緩和することができます。

それでは、4つの基準の詳しい内容と緩和方法について、順に見ていきましょう。

 

基準1:主要構造部を1時間準耐火構造とすること

主要構造部とは、建築物の壁・柱・床・はり・屋根・階段を指します。

主要構造部を1時間準耐火構造とするための耐火被覆の方法は2種類。

  1. 国土交通省 告示第195号に定められた1時間準耐火構造の仕様にすること
  2. 1時間準耐火構造の大臣認定仕様とすること(例えば「QF060BE-9225」というように、主要構造部ごと、仕様ごとに認定番号が異なる)

つまり、主要構造部すべてをいずれかの耐火被覆で覆わなければならないということですね。

詳しい仕様については、準耐火建築物(イ-1)とは?3分でわかる設計の基準という記事にまとめています。

 

基準2:避難上有効なバルコニーを設けること

『避難上有効なバルコニー』が、どのような仕様かは建築基準法の本文には書かれていません。

木造建築物の防・耐火設計マニュアルという本に具体的な基準が記載されています。

確認検査機関や特定行政庁も、木造建築物の防・耐火設計マニュアルに書かれている基準をもとに「木三共」の法適合性を判断しています。

 

「避難上有効なバルコニー」の設計条件は以下のとおり。

  • バルコニーの床は1時間準耐火構造であること
  • 避難設備(避難ハッチ等)が設けられていること
  • 避難ハッチ等で地上に降りてから、道路に到達するまで幅員90㎝の通路が確保されていること(※幅員90㎝というのは明確には定められていません。特定行政庁により異なる可能性あり)
  • 避難バルコニーに出るための開口部(掃き出し窓or扉)は、有効高さ1.8m以上、幅0.75m以上、開口部下端から床までの高さは0.15m以下

 

避難上有効なバルコニーの緩和方法

「避難上有効なバルコニー」の設置を緩和する規定があります。

以下の条件を満たした場合は、「避難上有効なバルコニー」の設置は不要。

  • 各住戸から地上に通ずる廊下、階段が直接外気に開放されていること
  • 各住戸の廊下、階段に面する窓・扉が防火設備であること

 

✔「廊下、階段が直接外気に開放されている」とは?

「廊下、階段が直接外気に開放されている」とみなされるための具体的な基準は、以下のとおりです。

  • 「階段」の開放性とは
    • 階段の中間踊り場で、2㎡以上の開口部が設けられていること
  • 「廊下」の開放性とは
    • 廊下の手すり上部から天井までの間が高さ1m以上開放されていること

 

基準3:建物周囲の外壁面に幅3mの通路を設けること

木三共の設計にあたって、建物の周囲すべてに幅員3mの通路が必要となるわけではありません。

 

幅員3mの通路が必要となる外壁面」は以下のルールに沿って決まります。

  • 居室の開口部が道にのみ面する外壁面には幅員3mの通路は不要
  • 居室の開口部が隣地に面している場合、開口部のある外壁面から道路に到達するまで幅員3mの通路が必要

2つのルールを守ることができれば、「木三共」の設計基準の一つを満たしたことになります。

 

「幅員3mの敷地内通路」を緩和する方法

「幅員3mの通路を設けること」という条件も、一定の基準を満たせば緩和することができます。

以下のすべての条件を満たすことができれば、「幅員3mの通路」は設計不要。

  • 各住戸に「避難上有効なバルコニー」が設けられていること
  • 各住戸から地上に通ずる廊下、階段その他の通路が直接外気に開放されたものであること
    • 各住戸の通路に面する開口部は防火設備が設けられていること
  • 上下階の開口部との間には、延焼を防ぐ庇が設けられていること
    • 上下階の開口部との間が2m以上離隔されていれば、延焼防止の庇は不要

 

上記をよく読んでもらえればわかるように、周囲3mの通路の緩和条件にも「避難上有効なバルコニーの設置」が含まれています。

???

ちょっとなに言ってるかわからない…

例えば、「避難上有効なバルコニー」の緩和の条件を満たして設置を免除したとしますよね。

しかし、敷地が狭く、建物周囲に「3mの通路」を設けることができなかったとしたらどうなるでしょう?

「3mの通路」という条件を緩和するために、結果的に「避難上有効なバルコニー」を設ける必要が出てくるということです。

法文(告示255号)を3回くらい読めば理解してもらえると思いますが、ここで混乱する設計者の方がとても多いかと。

 

基準4:3階住戸の外壁の開口部が防火設備であること(※防火地域・準防火地域のみ)

計画敷地が防火地域・準防火地域の場合は、3階住戸の外壁開口部に原則、防火設備の設置が必要。

ただし、どうしても防火設備にしたくないときは、開口部が”延焼の恐れのある範囲”に無い場合であれば、一定の条件を満たすことで緩和できます。

 

以下のいずれかの条件を満たすことができれば、3階住戸の外壁開口部に防火設備設置が不要です。

  • 3階住戸に防火設備以外の窓を設ける場合、その窓の周囲90㎝未満の部分に、他の窓を設けないこと
  • 3階住戸の「防火設備以外の窓」と「他の窓」との間に、50㎝以上突出した庇・袖壁を設けること

ただし、上記の条件を満たしたとしても延焼ライン内にある開口部は防火設備が必要となるので、ご注意ください。

 

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木三共の設計条件(告示255号)を建築基準法で読んでみる

建築基準法で木三共の設計基準は、国土交通省告示第255号に書かれています。

建築基準法第27条第1項に規定する特殊建築物の主要構造部の構造方法等を定める件

(国土交通省告示第255号)

第一  建築基準法施行令(以下「令」という。)第百十条第一号に掲げる基準に適合する建築基準法(以下「法」という。)第二十七条第一項に規定する特殊建築物の主要構造部の構造方法は、次の各号に掲げる建築物の区分に応じ、それぞれ当該各号に定めるものとする。

 法第二十七条第一項第二号に該当する建築物(同項各号(同項第二号にあっては、法別表第一(一)項に係る部分に限る。)に該当するものを除く。) 準耐火構造又は令第百九条の三各号に掲げる基準に適合する構造とすること。

 地階を除く階数が三で、三階を下宿、共同住宅又は寄宿舎の用途に供するもの(三階の一部を法別表第一(い)欄に掲げる用途(下宿、共同住宅及び寄宿舎を除く。)に供するもの及び法第二十七条第一項第二号(同表(二)項から(四)項までに係る部分を除く。)から第四号までに該当するものを除く。)のうち防火地域以外の区域内にあるものであって、次のイからハまでに掲げる基準(防火地域及び準防火地域以外の区域内にあるものにあっては、イ及びロに掲げる基準)に適合するもの 一時間準耐火基準に適合する準耐火構造とすること。

  下宿の各宿泊室、共同住宅の各住戸又は寄宿舎の各寝室(以下「各宿泊室等」という。)避難上有効なバルコニーその他これに類するものが設けられていること。ただし、各宿泊室等から地上に通ずる主たる廊下、階段その他の通路が直接外気に開放されたものであり、かつ、各宿泊室等の当該通路に面する開口部に法第二条第九号の二ロに規定する防火設備が設けられている場合においては、この限りでない。

  建築物の周囲(開口部(居室に設けられたものに限る。)がある外壁に面する部分に限り、道に接する部分を除く。)に幅員が三メートル以上の通路(敷地の接する道まで達するものに限る。)が設けられていること。ただし、次に掲げる基準に適合しているものについては、この限りでない。

(1) 各宿泊室等に避難上有効なバルコニーその他これに類するものが設けられていること。

(2) 各宿泊室等から地上に通ずる主たる廊下、階段その他の通路が、直接外気に開放されたものであり、かつ、各宿泊室等の当該通路に面する開口部に法第二条第九号の二ロに規定する防火設備が設けられていること。

(3) 令第百二十九条の二の三第一項第一号ハ(2)に掲げる基準に適合していること。

 三階の各宿泊室等(各宿泊室等の階数が二以上であるものにあっては二階以下の階の部分を含む。)の外壁の開口部及び当該各宿泊室等以外の部分に面する開口部(外壁の開口部又は直接外気に開放された廊下、階段その他の通路に面する開口部にあっては、当該開口部から九十センチメートル未満の部分に当該各宿泊室等以外の部分の開口部がないもの又は当該各宿泊室等以外の部分の開口部と五十センチメートル以上突出したひさし等(ひさし、袖壁その他これらに類するもので、その構
造が、令第百二十九条の二の三第一項第一号ハ(2)に規定する構造であるものをいう。以下同じ。)で防火上有効に遮られているものを除く。)に法第二条第九号の二ロに規定する防火設備が設けられていること。

 

まとめ

  • 木三共(もくさんきょう)の設計基準は4つ。
    • 主要構造部を「1時間準耐火構造」とすること
    • 避難上有効なバルコニーを設けること
    • 建物周囲に幅員3mの通路を設けること
    • 3階の住戸の開口部は防火設備であること(※防火地域・準防火地域のみ)
  • 「避難上有効なバルコニー」「建物周囲の幅3mの通路」は条件を満たせば緩和できる。それぞれの緩和条件を正しく理解しましょう。
  • 以下のすべての条件を満たした場合は、「避難上有効なバルコニー」の設置は不要。
    • 各住戸から地上に通ずる廊下、階段が直接外気に開放されていること
    • 各住戸の廊下、階段に面する窓・扉が防火設備であること
  • 以下のすべての条件を満たすことができれば、「幅員3mの通路」は設計不要。
    • 各住戸に「避難上有効なバルコニー」が設けられていること
    • 各住戸から地上に通ずる廊下、階段その他の通路が直接外気に開放されたものであること
    • 各住戸の通路に面する開口部は防火設備が設けられていること
    • 上下階の開口部との間には、延焼を防ぐ庇が設けられていること
      • 上下階の開口部との間が2m以上離隔されていれば、延焼防止の庇は不要