- 異種用途区画を設けたくない…。
- 建築基準法における緩和はある?
- 2020年(令和2年)4月に緩和規定ができたってホント?
こんな疑問に答えます。
本記事では、異種用途区画を緩和するための条件についてわかりやすく解説。
異種用途区画が必要となる複合用途の建築物でも、建築基準法に定められた一定の要件を満たす場合は区画が免除されます。
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異種用途区画の緩和基準とは【建築基準法告示第250号】
異種用途区画は、建築基準法施行令112条18項ただし書き(告示250号)の基準を満たすことで緩和されます。
これは令和2年4月1日施行の建築基準法改正によるもの。
緩和の条件は大きく分けて4つ。
- 緩和が適用される用途
- 異種用途区画となる床は免除不可
- 異種用途区画に隣接する部分の用途
- 自動火災報知設備の設置
ここからは4つのポイントそれぞれについて詳しく解説していきます。
【条件1】異種用途区画の緩和が適用される用途
異種用途区画の緩和を受けられるのは、用途が以下のいずれかに当てはまる場合のみです。
- ホテル
- 旅館
- 児童福祉施設等(通所利用のみ)
- 飲食店
- 物品販売業を営む店舗
異種用途区画緩和【条件1】の考え方を整理しましょう。
- 異種用途区画は別表1の規模・階数に当てはまる用途に対してのみ適用される
- このエリアは特定用途部分(異種用途区画が必要となる部分)と呼ばれる
- 特定用途部分うち、異種用途区画の緩和の対象となる用途は「●ホテル●旅館●児童福祉施設等(通所利用に限る)●飲食店●物品販売業を営む店舗」【建築基準法告示250号】
たとえば、3階建て共同住宅の1階に店舗を設けるとき、共同住宅のエリアは特定用途部分にあたるため、異種用途区画が必要。
告示250号に定める用途には「共同住宅」は含まれていないことから、異種用途区画の緩和は適用されません。
【条件2】異種用途区画となる床は免除できない
告示250号における異種用途区画の緩和は、一定の条件を満たすことで区画となる「壁」を免除できるというもの。
よって、階をまたいで異なる用途をもつ建築物において、異種用途区画の床は免除できません。
異種用途区画は平面的ではなく、立体的に考えましょう。
特定用途部分の上下階に他の用途があれば、それぞれの用途を隔てる床が異種用途区画となります。
異なる用途を区画する床は、告示250号における緩和の対象外ということですね。
【条件3】異種用途区画に接する部分の用途
特定用途部分(異種用途区画が必要となる部分)の隣を以下のいずれかの用途とする場合、異種用途区画の緩和は適用できません。
- 法別表第1(い)欄1項に掲げる用途
- 劇場
- 映画館
- 演芸場
- 観覧場
- 公会堂
- 集会場
- 病院、診療所(患者の収容施設があるものに限る)
- 通所利用以外の児童福祉施設等(建築基準法施行令第115条の3第一号に規定するもの)
【条件4】警報設備が設けられていること
「特定用途部分(異種用途区画が必要な部分)」と「特定用途に接する部分」はそれぞれ、自動火災報知設備を設ける必要があります。
異種用途区画緩和について建築基準法を読む
異種用途区画の緩和について、建築基準法施行令112条18項ただし書きに記載されています。
「建築基準法を読みたくない」という方は、建築法規PRO2024 図解建築申請法規マニュアルや建築申請memo2024といった書籍で、図や表を見て理解を深めていきましょう。
(防火区画)
第百十二条中略
18 建築物の一部が法第二十七条第一項各号、第二項各号又は第三項各号のいずれかに該当する場合においては、その部分とその他の部分とを一時間準耐火基準に適合する準耐火構造とした床若しくは壁又は特定防火設備で区画しなければならない。ただし、国土交通大臣が定める基準に従い、警報設備を設けることその他これに準ずる措置が講じられている場合においては、この限りでない。
国土交通大臣が定める基準とは、国土交通省告示第250号です。
○警報設備を設けることその他これに準ずる措置の基準を定める件
〔令和二年三月六日号外国土交通省告示第二百五十号〕建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)第百十二条第十八項ただし書の規定に基づき、警報設備を設けることその他これに準ずる措置の基準を次のように定める。
警報設備を設けることその他これに準ずる措置の基準を定める件
第一 この告示は、建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号。以下「法」という。)第二十七条第一項各号、第二項各号又は第三項各号のいずれかに該当する建築物の部分(以下「特定用途部分」という。)を次に掲げる用途に供する場合であって、特定用途部分と特定用途部分に接する部分(特定用途部分の存する階にあるものを除く。)とを一時間準耐火基準に適合する準耐火構造とした床若しくは壁又は特定防火設備で区画し、かつ、特定用途部分に接する部分(特定用途部分の存する階にあるものに限る。第二において同じ。)を法別表第一い欄一項に掲げる用途又は病院、診療所(患者の収容施設があるものに限る。)若しくは児童福祉施設等(建築基準法施行令(以下「令」という。)第百十五条の三第一号に規定するものをいう。以下同じ。)(通所のみにより利用されるものを除く。)の用途に供しない場合について適用する。
一 ホテル
二 旅館
三 児童福祉施設等(通所のみにより利用されるものに限る。)
四 飲食店
五 物品販売業を営む店舗第二 令第百十二条第十八項ただし書に規定する警報設備を設けることその他これに準ずる措置の基準は、特定用途部分及び特定用途部分に接する部分に令第百十条の五に規定する構造方法を用いる警報設備(自動火災報知設備に限る。)を同条に規定する設置方法により設けることとする。
まとめ
- 異種用途区画は、建築基準法施行令112条18項ただし書き(告示250号)による緩和がある。
- 異種用途区画の緩和を受けられる用途
- ホテル
- 旅館
- 児童福祉施設等(通所利用のみ)
- 飲食店
- 物品販売業を営む店舗
- 異種用途区画となる「床」は免除できない。
- 異種用途区画に隣接する部分に以下の用途を設けてはいけない。
- 法別表第1(い)欄1項に掲げる用途
- 病院、診療所(患者の収容施設があるものに限る)
- 通所利用以外の児童福祉施設等(建築基準法施行令第115条の3第一号に規定するもの)
- 「異種用途区画が必要な部分」と「区画に接する部分」はそれぞれ、自動火災報知設備を設けること。
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