
- 建築基準法改正で”防火・準防火地域に建てられる耐火建築物の基準”が変わった?
- 『延焼防止建築物』『準延焼建築物』って何?
- 確認申請書の第四面が改訂されたけど、どこにチェックを入れればいい?
こんな疑問に答えます。
本記事では、2019年6月25日施行の建築基準法改正によって見直された、”防火・準防火地域に建てることができる建築物(法61条)”について解説。
防火・準防火地域内では、建物の規模によって、耐火建築物or準耐火建築物にしなければならないというのが、これまでの制限でしたよね。
今回の法改正で、『延焼防止建築物』『準延焼建築物』という新しい基準ができています。
確認申請書の第四面にも書かれているワードなので、確認申請を提出する設計者にとっては必須の知識かと。

このサイトは、確認検査機関で意匠審査を担当していた一級建築士が運営。
できる限りわかりやすく”法61条改正のポイント”をまとめます。
【法改正】防火・準防火地域における耐火・準耐火建築物の基準が見直し
建築基準法61条の改正のポイントをざっくりまとめると、以下のとおり。
- 通称『延焼防止建築物』『準延焼建築物』と呼ばれる新しい基準が追加された
- 法改正前は、防火地域(旧:法61条)、準防火地域(旧:法62条)と分かれていた条文が法61条にまとめられた
ポイント①:『延焼防止建築物』という新しい基準が追加
建築基準法改正で、防火・準防火地域に建てることができる建築物として、『延焼防止建築物』『準延焼建築物』という新たな基準が定められました。
法改正後に、防火・準防火地域に建てられる建築物を規模ごとにまとめると、以下のとおり。
準防火地域:階数4以上 or 延べ面積1500㎡超
上記の地域内・規模の建築物は、次のいずれかの構造とすること。
- 耐火建築物
- 延焼防止建築物
準防火地域:階数3で延べ面積1500㎡以下 or 階数2以下で延べ面積500㎡超~1500㎡以下
上記の地域内・規模の建築物は、次のいずれかの構造とすること。
- 耐火建築物
- 準耐火建築物(イ-1)
- 準耐火建築物(イ-2)
- 準耐火建築物(ロ-1)
- 準耐火建築物(ロ-2)
- 準延焼防止建築物

延焼防止建築物ってなに?そんな基準あったっけ…。

『延焼防止建築物』『準延焼建築物』は新たな基準です。
延焼防止建築物とは(令136条の2第1項一号ロ)
『延焼防止建築物』とは、外壁や開口部の防火性能を高めることで、外部からの"もらい火"を防ぎ、内部から炎が噴出するリスクを抑えた建築物のこと。
建物の外側を防火性能の高い材質にすることで、建物内部は木材あらわしなど、自由な仕様にすることが可能です。

これまでは”準防火地域で階数3以上になると準耐火建築物”という感じでしたが…、建物内の耐火被覆が不要になれば、意匠の自由度が高まりますね。
『延焼防止建築物』の詳しい仕様は、告示194号に定められているので、下記リンクでチェックしてみてください。
ポイント②:防火地域(旧:法61条)、準防火地域(旧:法62条)に分かれていた条文が法61条にまとめられた

「旧:法61条」「旧:法62条」「旧:法64条」に書かれていた内容が、法61条に統一されたため、条文の構成が変わっています。
これまでは、防火地域で耐火・準耐火建築物としなければいけない建物の規模は法61条、準防火地域であれば法62条を読めばOKでした。
それが法改正後は、『防火・準防火地域で耐火・準耐火建築物としなければならない建物の規模は、施行令によって定める』という流れに変わったので、施行令もセットで読まないと最終的な判断ができなくなっています。
ただ、おおまかな基準は変わっておらず…、これまで防火・準防火地域で建てることができていた耐火・準耐火建築物であれば法改正後も問題なく建築することが可能。

すでに建てられている防火地域内の耐火建築物などは『建築基準法の改正によって法適合しなくなった建築物=既存不適格建築物』にもなりません。
基準を変更するというよりも、延焼防止・準延焼防止建築物という基準を新たに追加することが主な目的のようです。
改正後の『建築基準法61条』を読んでみる
防火地域・準防火地域内の建築物に対する制限は、建築基準法61条に定められています。
「建築基準法の本文を読みたくない」という方は、建築法規PRO2020 図解建築申請法規マニュアルや建築申請memo2020
といった書籍で、図や表を見て理解することをおすすめします。
(防火地域及び準防火地域内の建築物)
第61条
防火地域又は準防火地域内にある建築物は、その外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に防火戸その他の政令で定める防火設備を設け、かつ、壁、柱、床その他の建築物の部分及び当該防火設備を通常の火災による周囲への延焼を防止するためにこれらに必要とされる性能に関して防火地域及び準防火地域の別並びに建築物の規模に応じて政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとしなければならない。ただし、門又は塀で、高さ2m以下のもの又は準防火地域内にある建築物(木造建築物等を除く。)に附属するものについては、この限りでない。
政令で定める技術的基準とは、建築基準法施行令136条の2に定められています。
(防火地域又は準防火地域内の建築物の壁、柱、床その他の部分及び防火設備の性能に関する技術的基準)
第136条の2
法第61条の政令で定める技術的基準は、次の各号に掲げる建築物の区分に応じ、それぞれ当該各号に定めるものとする。
一 防火地域内にある建築物で階数が3以上のもの若しくは延べ面積が100㎡を超えるもの又は準防火地域内にある建築物で地階を除く階数が4以上のもの若しくは延べ面積が1500㎡を超えるもの次のイ又はロのいずれかに掲げる基準
イ 主要構造部が第107条各号又は第108条の3第1項第一号イ及びロに掲げる基準に適合し、かつ、外壁開口部設備(外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に設ける防火設備をいう。以下この条において同じ。)が第109条の2に規定する基準に適合するものであること。ただし、準防火地域内にある建築物で法第86条の4各号のいずれかに該当するものの外壁開口部設備については、この限りでない。
ロ 当該建築物の主要構造部、防火設備及び消火設備の構造に応じて算出した延焼防止時間(建築物が通常の火災による周囲への延焼を防止することができる時間をいう。以下この条において同じ。)が、当該建築物の主要構造部及び外壁開口部設備(以下このロ及び次号ロにおいて「主要構造部等」という。)がイに掲げる基準に適合すると仮定した場合における当該主要構造部等の構造に応じて算出した延焼防止時間以上であること。⇐延焼防止建築物
二 防火地域内にある建築物のうち階数が2以下で延べ面積が100㎡以下のもの又は準防火地域内にある建築物のうち地階を除く階数が3で延べ面積が1500㎡以下のもの若しくは地階を除く階数が2以下で延べ面積が500㎡を超え1500㎡以下のもの次のイ又はロのいずれかに掲げる基準
イ 主要構造部が第107条の2各号又は第109条の3第一号若しくは第二号に掲げる基準に適合し、かつ、外壁開口部設備が前号イに掲げる基準(外壁開口部設備に係る部分に限る。)に適合するものであること。
ロ 当該建築物の主要構造部、防火設備及び消火設備の構造に応じて算出した延焼防止時間が、当該建築物の主要構造部等がイに掲げる基準に適合すると仮定した場合における当該主要構造部等の構造に応じて算出した延焼防止時間以上であること。⇐準延焼防止建築物
以下省略
建築基準法61条における、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものの具体的な仕様は、令和元年国土交通省 告示第194号に定められています。

2019年6月25日以降、防火地域・準防火地域で設計するときは、告示第194号を読むことが必須ですね。
『確認申請書 第四面』の書き方
防火・準防火地域に建てられる建築物の基準が変わったことで、確認申請書第四面の書式が改訂されました。

防火・準防火地域における制限によって、耐火・準耐火検知物としたときは、「■その他」にチェック。

改定前の申請書にあった「その他建築物」のことを示しているわけでは無いので注意しましょう。
まとめ
- 建築基準法改正で、防火・準防火地域に建てることができる建築物として、『延焼防止建築物』『準延焼建築物』という新たな基準が定められた。
- 「旧:法61条」「旧:法62条」「旧:法64条」に書かれていた内容が、法61条に統一されたため、条文の構成が変化。