市街化調整区域とは|建築許可と開発許可の基準・調べ方を詳しく解説

市街化調整区域 集団規定
  • 市街化調整区域って何?
  • 市街化調整区域で建築するには開発許可が必要?
  • 市街化調整区域のデメリットを教えてほしい。

こんな疑問に答えます。

本記事では、都市計画法における市街化調整区域についてわかりやすく解説。

記事を読むことで市街化調整区域で建築物をつくる条件、メリット・デメリット、用途地域の有無などを正しく理解することができます。

このサイトは、確認検査機関で審査を担当していた一級建築士が運営。

住宅から特殊建築物まで1000件以上の設計相談を受けた経験をもとに、建築知識をわかりやすくまとめていきます。ご参考までにどうぞ。

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市街化調整区域とは【市街化を抑制すべき区域】

市街化調整区域とは、都市計画区域のうち、市街化を抑制すべき区域のことです。

都市や町などの成長や開発を管理するために設定された地域。

都市計画区域外

都市計画や土地利用の観点から、まだ開発が進んでいない自然環境を保護し、バランスの取れた発展を目的としています。

宅地造成などの開発は原則として制限される。

 

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市街化調整区域内の建築に必要な開発許可

市街化調整区域では、原則として建築は禁止。ただし、次のいずれかに当てはまるものは許可されています。

  • 都市計画法43条(開発許可を受けた土地以外の土地における建築等の制限)に当てはまるもの
  • 都道府県知事の許可を受けたもの

都市計画法43条により開発許可を受けずに建築できるもの

以下に該当するものは、開発許可を受けずに建築することができます。

  • (都市計画法第43条1項で引用する)都市計画法第29条1項2号:農林漁業用の建物、または従事者の住宅
  • (都市計画法第43条1項で引用する)都市計画法第29条1項3号:駅舎・図書館などの公共用建物
  • 都市計画法第43条1項1号:都市計画事業施行による建築物・第1種特定工作物(コンクリートやアスファルトプラントなどの周辺環境の悪化のおそれがある工作物)
  • 都市計画法第43条1項2号:非常災害の応急措置としての建築物・第1種特定工作物
  • 都市計画法第43条1項3号:仮設建築物
  • 都市計画法第43条1項4号:都市計画法第29条により許可が不要な開発区域内での建築物・第1種特定工作物
  • 都市計画法第43条1項5号:通常の管理行為、軽易な行為
    • 車庫、物置などの附属建物物の建築
    • 10㎡以内の増築および改築
    • 周辺居住者の日常店舗等で、延床面積が50㎡以内の自己用建物
    • 土木事業等で一時的に使用する第1種特定工作物
  • 都市計画法第43条3項:国・都道府県が行う建築物・第1種特定工作物については、知事との協議成立をもって許可とみなす

上記以外の建築行為は都道府県知事による開発許可を受けなくてはいけません。

都道府県知事の許可が必要な建築物

許可の条件は都市計画法施行令36条に定められています。開発行為の許可基準とほぼ同じです。

  • 排水施設・擁壁・地盤の状態が、一定の基準を満たしているもの
  • 地区計画・集落地区計画の区域内にある場合は、地区計画に適合しているもの
  • 市街化調整区域内の開発行為の許可基準(都市計画法34条一号〜十四号)と同様のもの

 

市街化調整区域の調べ方

市街化調整区域の範囲は、以下の方法で調べることができます。

  • 地方自治体のウェブサイトで検索
  • 地方自治体への問い合わせ
  • 都市計画図を確認する
  • 地籍調査や不動産業者への相談

地方自治体のウェブサイトで検索

市役所のウェブサイトにアクセスし、都市計画や土地利用に関する情報を検索してみてください。

市街化調整区域に関する地図や規制事項、手続きの詳細などが掲載されていることがあります。

地方自治体への問い合わせ

市役所や町役場の都市計画課や土地利用課などに電話やメールで問い合わせることもできます。

都市計画図を確認する

都市計画図は、市街化調整区域を含む地域の情報を描いたもので、地方自治体のウェブサイトや図書館で入手できます。

地籍調査や不動産業者への相談

地籍調査や不動産業者に相談することで、特定の土地が市街化調整区域に含まれるかどうかを確認することができます。

 

市街化調整区域のメリット

市街化調整区域に建築するメリットをまとめました。

  • 自然環境との調和
  • 健康への配慮
  • 低密度な土地利用
  • 建築制限の保護

自然環境との調和

市街化調整区域は、都市や市街地の拡大を抑制し、自然環境を保護するために設定されています。

そのため、豊かな自然環境や緑地が残されており、自然に囲まれた穏やかな生活環境を楽しむことができます。

健康への配慮

自然環境に囲まれた市街化調整区域では、空気や水の質が良く、騒音や大気汚染などの影響が少ないでしょう。

健康的な環境で暮らすことができるため、ストレスの軽減につながるかもしれません。

低密度な土地利用

市街化調整区域では、土地利用に制限が課されることがあります。

建物や住宅の密集度が低くなり、ゆとりのある住環境を得られるはず。

建築制限の保護

市街化調整区域では、建築物の高さや容積率、建ぺい率などの制限が設けられています。

景観や周辺環境を保護し、将来的な景観の悪化や建築物の過密化を防止。

 

市街化調整区域のデメリット

市街化調整区域に建築する主なデメリットは以下のとおり。

  • 建築制限の制約
  • 都市へのアクセスの制約
  • 生活インフラの不足
  • 地域経済の制約
  • 自然災害のリスク

建築制限の制約

市街化調整区域では、建築物の高さや容積率、建ぺい率などに制限があるため、自由な建築計画が難しくなります。

建物の規模や形状に制約があることで、自分の希望やニーズに対応できない場合もあります。

都市へのアクセスの制約

市街化調整区域は都市から一定の距離があります。

そのため、都市へのアクセスや公共交通機関の利便性が低下することも。

都心部の施設やサービスへのアクセスに時間や手間がかかるでしょう。

生活インフラの不足

都市部と比較すると、市街化調整区域には生活インフラが不足していることがあります。

道路や交通網、公共施設、商業施設などの整備が不十分な場合、生活の利便性やサービスの充実度が低下するでしょう。

地域経済の制約

市街化調整区域は都市部から一定の距離があるため、商業や産業の発展が制約されます。

雇用機会やビジネスチャンスが限られる可能性が。

自然災害のリスク

市街化調整区域は、自然環境を保護するために設けられることが多く、山岳地域や河川周辺など自然災害のリスクが高い場所に位置していることも。

地震や洪水などのリスクにさらされるため、災害対策に注意が必要です。

 

市街化区域と市街化調整区域の違い

市街化区域とは、以下のいずれかに当てはまる区域です。

  • すでに市街地を形成している区域
  • おおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域

人口の集中や都市機能の充実が進んでいる地域を指定したものです。

市街化区域と市街化調整区域の違いをまとめました。

  • 市街化区域:既に都市化が進んでいる地域であり、自由な開発が行われる
  • 市街化調整区域:まだ開発が進んでいない地域のため、自然環境や農地の保護が重視される制約がある

 

市街化調整区域について都市計画法を読む

都市計画法43条によって、市街化調整区域における建築には、都道府県知事の許可が必要とされています。

(開発許可を受けた土地以外の土地における建築等の制限)
第四十三条 何人も、市街化調整区域のうち開発許可を受けた開発区域以外の区域内においては、都道府県知事の許可を受けなければ、第二十九条第一項第二号若しくは第三号に規定する建築物以外の建築物を新築し、又は第一種特定工作物を新設してはならず、また、建築物を改築し、又はその用途を変更して同項第二号若しくは第三号に規定する建築物以外の建築物としてはならない。ただし、次に掲げる建築物の新築、改築若しくは用途の変更又は第一種特定工作物の新設については、この限りでない。

一 都市計画事業の施行として行う建築物の新築、改築若しくは用途の変更又は第一種特定工作物の新設

二 非常災害のため必要な応急措置として行う建築物の新築、改築若しくは用途の変更又は第一種特定工作物の新設

三 仮設建築物の新築

四 第二十九条第一項第九号に掲げる開発行為その他の政令で定める開発行為が行われた土地の区域内において行う建築物の新築、改築若しくは用途の変更又は第一種特定工作物の新設

五 通常の管理行為、軽易な行為その他の行為で政令で定めるもの

2 前項の規定による許可の基準は、第三十三条及び第三十四条に規定する開発許可の基準の例に準じて、政令で定める。

3 国又は都道府県等が行う第一項本文の建築物の新築、改築若しくは用途の変更又は第一種特定工作物の新設(同項各号に掲げるものを除く。)については、当該国の機関又は都道府県等と都道府県知事との協議が成立することをもつて、同項の許可があつたものとみなす。

都市計画法29条1項二号または三号に規定する建築物は下記のとおり。

(開発行為の許可)
第二十九条 都市計画区域又は準都市計画区域内において開発行為をしようとする者は、あらかじめ、国土交通省令で定めるところにより、都道府県知事(地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市又は同法第二百五十二条の二十二第一項の中核市(以下「指定都市等」という。)の区域内にあつては、当該指定都市等の長。以下この節において同じ。)の許可を受けなければならない。ただし、次に掲げる開発行為については、この限りでない。

一 中略

二 市街化調整区域、区域区分が定められていない都市計画区域又は準都市計画区域内において行う開発行為で、農業、林業若しくは漁業の用に供する政令で定める建築物又はこれらの業務を営む者の居住の用に供する建築物の建築の用に供する目的で行うもの

三 駅舎その他の鉄道の施設、図書館、公民館、変電所その他これらに類する公益上必要な建築物のうち開発区域及びその周辺の地域における適正かつ合理的な土地利用及び環境の保全を図る上で支障がないものとして政令で定める建築物の建築の用に供する目的で行う開発行為

都道府県知事による許可の基準は、都市計画法施行令36条に書かれています。

(開発許可を受けた土地以外の土地における建築等の許可の基準)
第三十六条 都道府県知事(指定都市等の区域内にあつては、当該指定都市等の長。以下この項において同じ。)は、次の各号のいずれにも該当すると認めるときでなければ、法第四十三条第一項の許可をしてはならない。

一 当該許可の申請に係る建築物又は第一種特定工作物の敷地が次に定める基準(用途の変更の場合にあつては、ロを除く。)に適合していること。

イ 排水路その他の排水施設が、次に掲げる事項を勘案して、敷地内の下水を有効に排出するとともに、その排出によつて当該敷地及びその周辺の地域に出水等による被害が生じないような構造及び能力で適当に配置されていること。

(1) 当該地域における降水量

(2) 当該敷地の規模、形状及び地盤の性質

(3) 敷地の周辺の状況及び放流先の状況

(4) 当該建築物又は第一種特定工作物の用途

ロ 地盤の沈下、崖がけ崩れ、出水その他による災害を防止するため、当該土地について、地盤の改良、擁壁又は排水施設の設置その他安全上必要な措置が講ぜられていること。

二 地区計画又は集落地区計画の区域(地区整備計画又は集落地区整備計画が定められている区域に限る。)内においては、当該許可の申請に係る建築物又は第一種特定工作物の用途が当該地区計画又は集落地区計画に定められた内容に適合していること。

三 当該許可の申請に係る建築物又は第一種特定工作物が次のいずれかに該当すること。

イ 法第三十四条第一号から第十号までに規定する建築物又は第一種特定工作物

ロ 法第三十四条第十一号の条例で指定する土地の区域内において新築し、若しくは改築する建築物若しくは新設する第一種特定工作物で同号の条例で定める用途に該当しないもの又は当該区域内において用途を変更する建築物で変更後の用途が同号の条例で定める用途に該当しないもの

ハ 建築物又は第一種特定工作物の周辺における市街化を促進するおそれがないと認められ、かつ、市街化区域内において行うことが困難又は著しく不適当と認められる建築物の新築、改築若しくは用途の変更又は第一種特定工作物の新設として、都道府県の条例で区域、目的又は用途を限り定められたもの。この場合において、当該条例で定める区域には、原則として、第二十九条の九各号に掲げる区域を含まないものとする。

ニ 法第三十四条第十三号に規定する者が同号に規定する土地において同号に規定する目的で建築し、又は建設する建築物又は第一種特定工作物(第三十条に規定する期間内に建築し、又は建設するものに限る。)

ホ 当該建築物又は第一種特定工作物の周辺における市街化を促進するおそれがないと認められ、かつ、市街化区域内において建築し、又は建設することが困難又は著しく不適当と認められる建築物又は第一種特定工作物で、都道府県知事があらかじめ開発審査会の議を経たもの

2 第二十六条、第二十八条及び第二十九条の規定は、前項第一号に規定する基準の適用について準用する。

都市計画法第43条1項5号による軽易な行為は、都市計画法施行令35条に記載。

(開発許可を受けた土地以外の土地における建築等の許可を要しない通常の管理行為、軽易な行為その他の行為)
第三十五条 法第四十三条第一項第五号の政令で定める行為は、次に掲げるものとする。

一 既存の建築物の敷地内において行う車庫、物置その他これらに類する附属建築物の建築

二 建築物の改築又は用途の変更で当該改築又は用途の変更に係る床面積の合計が十平方メートル以内であるもの

三 主として当該建築物の周辺の市街化調整区域内に居住している者の日常生活のため必要な物品の販売、加工、修理等の業務を営む店舗、事業場その他これらの業務の用に供する建築物で、その延べ面積が五十平方メートル以内のもの(これらの業務の用に供する部分の延べ面積が全体の延べ面積の五十パーセント以上のものに限る。)の新築で、当該市街化調整区域内に居住している者が自ら当該業務を営むために行うもの

四 土木事業その他の事業に一時的に使用するための第一種特定工作物の新設

 

まとめ

  • 市街化調整区域は、市街化を抑制すべき区域のこと。
  • 市街化調整区域では、原則として建築は禁止。ただし、次のいずれかに当てはまるものは許可されている。
    • 都市計画法43条(開発許可を受けた土地以外の土地における建築等の制限)に当てはまるもの
    • 都道府県知事の許可を受けたもの
  • 市街化調整区域の調べ方
    • 地方自治体のウェブサイトで検索
    • 地方自治体への問い合わせ
    • 都市計画図を確認する
    • 地籍調査や不動産業者への相談
  • 市街化区域と市街化調整区域の違い
    • 市街化区域:既に都市化が進んでいる地域であり、自由な開発が行われる
    • 市街化調整区域:まだ開発が進んでいない地域のため、自然環境や農地の保護が重視される制約がある

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