店舗併用住宅とは|建築基準法による定義を解説【店舗設計の注意点】

店舗併用住宅 集団規定
  • 店舗併用住宅って、どんな建築物?
  • 建築基準法による制限はある?
  • 戸建て住宅の一部に飲食店をつくりたい。

こんな疑問や要望に答えます。

本記事では、店舗併用住宅の定義や設計基準についてわかりやすく解説。

住宅の一部を飲食店や物販店舗として利用したい方にとって役立つ情報です。

このサイトは、確認検査機関で審査を担当していた一級建築士が運営。

住宅から特殊建築物まで1000件以上の設計相談を受けた経験をもとに、建築知識をわかりやすくまとめていきます。ご参考までにどうぞ。

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店舗併用住宅とは

店舗併用住宅とは、戸建て住宅の一部に店舗を設けたもので、住宅部分と店舗部分が内部で行き来できない構造の建築物です。

店舗併用住宅

よく似た用語で、店舗兼用住宅というのもあります。

店舗兼用住宅

「兼用住宅」と「併用住宅」の違いは以下のとおり。

  • 兼用住宅:内部で行き来できる。構造的にも機能的にも一体。
  • 併用住宅:内部で行き来できない。

店舗併用住宅と店舗兼用住宅の違い

 

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店舗併用住宅における建築基準法の制限

店舗併用住宅(住宅部分と店舗部分が内部で行き来できないもの)には、戸建住宅にはない建築基準法の制限がかかります。

用途地域による制限(建築基準法48条)

計画敷地が用途地域内にある場合、建築可能な用途は限定されます。

住居系の用途地域に兼用住宅または併用住宅をつくる際の制限をまとめました。

第1種低層住居専用地域 第2種低層住居専用地域 第1種中高層住居専用地域 田園住居地域
兼用住宅 单独・併用住宅 兼用住宅 单独・併用住宅 兼用住宅 单独・併用住宅 兼用住宅 单独・併用住宅
日用品販売店、食堂、喫茶店、理髪店、美容院、クリーニング取次店、質屋、貸衣装屋、 貸本屋、学習塾、華道教室、部碁教室等

50㎡以下

150㎡以下かつ2階以下

500㎡以下かつ2階以下

150㎡以下かつ2階以下

洋服店、畳屋、建具屋、自転車店、家庭電気器具店等(原動機を使用する場合は、その出力の合計が0.75kw以下のものに限る)

50㎡以下

150㎡以下かつ2階以下、作業場の床面積50㎡以下

500㎡以下かつ2階以下、作業場の床面積50㎡以下

150㎡以下かつ2階以下、作業場の床面積50㎡以下

パン屋、米屋、豆腐屋、菓子屋等の自家販売のための食品製造業(原動機を使用する場合は、その出力の合計が0.75kw以下のものに限る)

50㎡以下

150㎡以下かつ2階以下、作業場の床面積50㎡以下

500㎡以下かつ2階以下、作業場の床面積50㎡以下

150㎡以下かつ2階以下、作業場の床面積50㎡以下

上記以外の物品販売業を営む店舗または飲食店

500㎡以下かつ2階以下

地域で生産された農産物の販売を目的とする店舗その他の農業の利便を増進するために必要な店舗、飲食店

500㎡以下かつ2階以下、作業場の床面積50㎡以下

美術品又は工芸品を製作するためのアトリエ、工房(原動機を使用する場合は、その出力の合計が0.75kw以下のものに限る)

50㎡以下

50㎡以下

50㎡以下

50㎡以下

建築基準法において、店舗併用住宅は住宅と店舗がそれぞれ独立した建物であるかのように扱います。

たとえば、美容院を併用する住宅は、用途地域の建築制限において、敷地内に美容院を単独で建てるかのように考えるということ。

最も規制の厳しい一種低層住居専用地域では、美容院を単独で建築できないため、美容院併用住宅も同様に建築不可となります。

対して、建物内部で行き来することが可能な「美容院兼用住宅」であれば、以下の条件を満たすことで建築が可能に。

  1. 店舗 ≦ 住宅(住宅の床面積の方が大きい事)
  2. 店舗 ≦ 50㎡(店舗の床面積は50㎡以下である事)

店舗併用住宅と店舗兼用住宅は、建築基準法における制限が大きく異なることを理解しておきましょう。

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避難規定全般(建築基準法施行令第5章)

店舗の中でも「飲食店」や「物品販売業を営む店舗」は建築基準法別表1の特殊建築物に含まれます。

別表1の特殊建築物は建築基準法において避難規定の対象。

建築基準法施行令 第五章 避難施設等
第一節 総則(第百十六条の二)
第二節 廊下、避難階段及び出入口(第百十七条―第百二十六条)
第三節 排煙設備(第百二十六条の二・第百二十六条の三)
第四節 非常用の照明装置(第百二十六条の四・第百二十六条の五)
第五節 非常用の進入口(第百二十六条の六・第百二十六条の七)
第六節 敷地内の避難上及び消火上必要な通路等(第百二十七条―第百二十八条の三)

特に、非常用照明設備の要否は見落としがちなので注意しましょう。

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店舗併用住宅に関するQ&A

店舗併用住宅の計画において、よくある質問をまとめました。

  • 店舗併用住宅にフラット35は利用可能?
  • 住宅と店舗の間に防火区画は必要?
  • 戸建て住宅の一部を飲食店や物販店舗に用途を変える場合、確認申請は必要?

店舗併用住宅にフラット35は利用可能?

Q. 店舗併用住宅にフラット35(長期固定金利住宅ローン)は利用できる?
A. 条件にあてはまれば、融資の対象となります。

店舗併用住宅にフラット35を利用するには以下の条件すべてを満たす必要があります。

  • 住宅部分の床面積が全体の1/2以上
  • 店舗は申込者本人または同居者が生計を営むために自己使用すること
  • 「住宅部分」と「店舗や事務所部分」との間が壁、建具などで区画されており、原則として相互に行き来できること
  • 「住宅部分」と「店舗部分」を一つの建物として登記(一体登記)できること

「住宅部分」と「店舗や事務所部分」を相互に行き来できる構造が条件のため、いわゆる店舗兼用住宅が求められますね。

住宅と店舗の間に防火区画は必要?

Q. 住宅と店舗の間に防火区画は必要?
A. 一般的な店舗併用住宅は規模が小さく、延べ面積100〜200㎡程度のため、防火区画(異種用途区画)は不要です。

異種用途区画とは、「建築基準法27条1項~3項に該当する部分」と「その他の部分」の間を防火上有効に遮る区画です。

たとえば、飲食店は3階建て以上、または2階部分の床面積500㎡以上でなければ異種用途区画の対象となりません。

詳しくは、異種用途区画とは?区画の壁と防火設備の基準を解説をご確認ください。

住宅の一部を用途変更するとき確認申請は必要?

Q. 戸建て住宅の一部を飲食店や物販店舗に用途を変える場合、確認申請は必要?
A. 店舗併用住宅において、店舗部分の床面積が200㎡を超えることはほとんど無いため、確認申請は原則不要です。

以下の両方に当てはまる用途変更は、確認申請の手続きが必要となります。

  • 建物用途:特殊建築物(建築基準法 別表1)への変更
  • 規模:変更部分の床面積が200㎡を超えるもの

つまり、住宅の一部を店舗に用途変更しても、店舗部分が床面積200㎡を超えなければ確認申請対象となりません。設計者の責任において建築基準法へ適合させることになります。

 

まとめ

  • 店舗併用住宅とは、戸建て住宅の一部に店舗を設けたもので、住宅部分と店舗部分が内部で行き来できない構造の建築物。
  • 店舗併用住宅に適用される主な建築基準法の制限
    • 用途地域による制限(建築基準法48条)
    • 避難規定全般(建築基準法施行令第5章)
  • 店舗併用住宅に関する基本知識
    • 店舗併用住宅は一定の条件を満たすことでフラット35が利用可能。
    • 住宅と店舗の間に防火区画は原則不要。
    • 戸建て住宅の一部を飲食店や物販店舗に用途を変える場合、確認申請は原則不要。

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