非常用照明の緩和まとめ|居室の設置免除【告示1411号も解説】

非常用照明_緩和 避難規定
  • 非常用照明の数を減らしたい…。
  • 建築基準法による緩和はある?
  • 歩行距離を計算すれば、居室の非常用照明が免除されるって本当?

こんな悩みに答えます。

 

本記事では、建築基準法における非常用照明の緩和規定について解説。

コストを削減したい設計者や「避難時の危険性が低い部分の非常用照明は無くしたい」という方に役立つ情報です。

✔️ この記事で紹介する緩和規定

  • 採光がとれる開放性の高い廊下、階段
  • 建物用途による設置免除
  • 告示1411号にもとづく建築物の部分

 

非常用照明の基礎知識が知りたい場合は、非常用照明の設置基準とは|建築基準法による構造・照度範囲【図解】という記事をご確認ください。

このサイトは、確認検査機関で意匠審査を担当していた一級建築士が運営。

住宅から特殊建築物まで、1000件以上の設計相談を受けて得た建築基準法の知識をわかりやすくまとめていくので、ご参考までにどうぞ。

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非常用照明の緩和まとめ【一覧】

建築基準法で定められた非常用照明の免除方法は、以下のとおり。

  • 採光がとれる開放性の高い廊下、階段
  • 一戸建ての住宅、長屋・共同住宅の住戸
  • 病院の病室、下宿の宿泊室、寄宿舎の寝室
  • 学校等
  • 避難階と直上階・直下階の居室で基準を満たすもの(告示1411号第一号)
  • 床面積が30㎡以下の居室で基準を満たすもの(告示1411号第二号)

ここからは、それぞれの緩和基準について詳しく解説していきます。

 

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【緩和①】採光の入る開放性の高い廊下、階段

「採光上有効に外気に開放された廊下・階段」は、非常用照明の設置が免除されます。

 

✔️ 【非常用照明】外気に開放された廊下・階段の基準

  • ほぼ全体にわたって採光上有効な部分(令20条1項)があること
  • 排煙に支障がないよう外気に開放されていること

非常用照明_緩和_開放廊下

屋外にある窓や壁のない廊下・階段のイメージですね。

また、「床面積に算入されない屋外階段」も非常用照明が免除。

屋外階段_床面積

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階段室型の共同住宅のように、部分的な開放階段も特定行政庁や確認検査機関の判断によっては、非常用照明が免除されます。

例えば、大阪市の取り扱いを見てみましょう。

非常用の照明装置の設置が免除される通路等

非常用照明の設置免除の採光上有効に直接外気に開放された通路とは、開放廊下・屋外階段等(床面積に算入しない条件を満たすもの)とする。

ただし、共同住宅・寄宿舎等に設置する屋外階段で、次の条件を満たすものも、採光上有効に直接外気に開放された屋外階段とみなす。

  1. 隣地境界線と階段との距離が 50cm 以上あり、手摺りの上方において天井高さの 1/2
    以上かつ 1.1m以上開放されている。
  2. 階段室の奥行きが開放部分の幅の 2 倍以内である。

共同住宅・寄宿舎の用途に限定して適用される緩和ですね。

 

【緩和②】一戸建ての住宅、長屋・共同住宅の住戸

一戸建ての住宅、長屋・共同住宅の住戸内は非常用照明の設置が免除されています。

仮に停電になっても、部屋の間取りを把握しており、避難経路に迷う危険性が少ないからですね。

共同住宅の住戸を出たあとの「避難経路(共用廊下・階段)」には非常用照明が必要となるので気をつけましょう。

 

【緩和③】病院の病室、下宿の宿泊室、寄宿舎の寝室

就寝をともなう建築物のなかでも、以下の居室は非常用照明の設置が免除されています。

  • 病院の病室
  • 下宿の宿泊室
  • 寄宿舎の寝室

ホテルなどの宿泊施設と違い、一定期間を過ごすことから避難経路を見失う可能性が少ない用途ですね。

 

【緩和④】学校等

建築基準法における「学校等」にあてはまる建物は、非常用照明が免除されています。

✔️ 「学校等」に含まれる用途

  • 幼稚園
  • 小学校
  • 中学校
  • 高等学校
  • 中等教育学校
  • 特別支援学校
  • 大学
  • 高等専門学校
  • 体育館
  • ボーリング場
  • スキー場
  • スケート場
  • 水泳場
  • スポーツの練習場

いわゆる小学校や大学以外にも、さまざまな用途が「学校等」というワードの中に含まれています。

 

保育園・幼保連携認定こども園は学校等に含まれません【非常用照明の緩和不可】

「学校等」のなかに”保育園”や”幼保連携認定こども園”は含まれていません。

✔️ 保育園と幼稚園は規定されている法律が違う

  • 保育園:児童福祉法
  • 幼稚園:学校教育法

保育園は学校等に区分されず、緩和の対象外となるため、非常用照明の検討が必要です。

 

【緩和⑤】避難階と直上階・直下階の居室で基準を満たすもの(告示1411号第一号)

採光に有効な窓(採光窓の面積≧床面積×1/20)のある居室で、以下のいずれかに当てはまるものは、非常用照明が免除されます。

  • 避難階の居室:”屋外への出口”までの歩行距離が30m以下
  • 避難階の直上階・直下階の居室:”屋外への出口”、または”屋外避難階段”までの歩行距離が20m以下
避難階:直接地上へ通じる出入口がある階のこと。

非常用照明_緩和_告示1411-1_避難階

非常用照明_緩和_告示1411-1_直上階・直下階

上記の緩和で非常用照明の設置が免除されるのは居室のみです。

居室を出たあとの避難経路には、非常用照明が必要となるので注意してください。

確認申請の現場でも、避難経路の非常用照明を忘れる設計者の方が非常に多いですね。

 

【緩和⑥】”床面積が30㎡以下の居室”で基準を満たすもの(告示1411号第二号)

以下のいずれかに当てはまる居室は、非常用照明の設置が免除されます。

  • 床面積30㎡以下の居室で、地上への出口があるもの
  • 床面積30㎡以下の居室で、地上までの避難経路が①または②に当てはまるもの
    1. 非常用照明が設けられたもの
    2. 採光上有効に外気に開放されたもの

 

床面積30㎡以下の居室で、地上への出口があるもの

非常用照明_緩和_告示1411-2_地上への出口

床面積30㎡以下の居室で、地上までの避難経路に非常用照明が設けられたもの

非常用照明_緩和_告示1411-2_屋内廊下

床面積30㎡以下の居室で、避難経路が外気に開放されたもの

非常用照明_緩和_告示1411-2_開放廊下

 

非常用照明の緩和について建築基準法を読む

非常用照明について、建築基準法を読む流れは下記となります。

  • 法35条:特殊建築物等の避難及び消火に関する技術的基準
  • 令126条の4:非常用照明を設置すべき建築物
  • 令126条の5:非常用照明の構造
  • H12建告1411号:居室で避難上支障がないものとして国土交通大臣が定めるもの

建築基準法の令126条の4は以下のとおり。

第126条の4

法別表第一(い)欄(一)項から(四)項までに掲げる用途に供する特殊建築物の居室、階数が3以上で延べ面積が500㎡を超える建築物の居室、第116条の2第1項第一号に該当する窓その他の開口部を有しない居室又は延べ面積が1000㎡を超える建築物の居室及びこれらの居室から地上に通ずる廊下、階段その他の通路(採光上有効に直接外気に開放された通路を除く。)並びにこれらに類する建築物の部分で照明装置の設置を通常要する部分には、非常用の照明装置を設けなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する建築物又は建築物の部分については、この限りでない。

一 一戸建の住宅又は長屋若しくは共同住宅の住戸

二 病院の病室、下宿の宿泊室又は寄宿舎の寝室その他これらに類する居室

三 学校等

四 避難階又は避難階の直上階若しくは直下階の居室で避難上支障がないものその他これらに類するものとして国土交通大臣が定めるもの

上記のただし書きの部分により、非常用照明が免除される建築物が定められています。

告示1411号もご確認ください。

建築基準法施行令(昭和25年政令第338 号)第126条の4第四号の規定に基づき、非常用の照明装置を設けることを要しない避難階又は避難階の直上階若しくは直下階の居室で避難上支障がないものその他これらに類するものを次のように定める。建築基準法施行令(以下「令」という。)第126条の4第四号に規定する避難階又は避難階の直上階若しくは直下階の居室で避難上支障がないものその他これらに類するものは、次の各号のいずれかに該当するものとする。

一 令第116条の2第1項第一号に該当する窓その他の開口部を有する居室及びこれに類する建築物の部分(以下「居室等」という。)で、次のイ又はロのいずれかに該当するもの

イ 避難階に存する居室等にあっては、当該居室等の各部分から屋外への出口の一に至る歩行距離が 30m以下であり、かつ、避難上支障がないもの

ロ 避難階の直下階又は直上階に存する居室等にあっては、当該居室等から避難階における屋外への出口又は令第123条第2項に規定する屋外に設ける避難階段に通ずる出入口に至る歩行距離が20m以下であり、かつ、避難上支障がないもの

二 床面積が30㎡以下の居室(ふすま、障子その他随時開放することができるもので仕切られた2室は、1室とみなす。)で、地上への出口を有するもの又は当該居室から地上に通ずる建築物の部分が次のイ又は口に該当するもの

イ 令第126条の5に規定する構造の非常用の照明装置を設けた部分

ロ 採光上有効に外気に開放された部分

「建築基準法をあまり読みたくない」という方は、建築法規PRO2024 図解建築申請法規マニュアル建築申請memo2024といった書籍で、図や表を見て理解するのがおすすめです。

 

まとめ

  • 建築基準法で定められた非常用照明の免除方法
    • 採光がとれる開放性の高い廊下、階段
    • 一戸建ての住宅、長屋・共同住宅の住戸
    • 病院の病室、下宿の宿泊室、寄宿舎の寝室
    • 学校等
    • 避難階と直上階・直下階の居室で基準を満たすもの(告示1411号第一号)
    • 床面積が30㎡以下の居室で基準を満たすもの(告示1411号第二号)
  • 外気に開放された廊下の基準
    • ほぼ全体にわたって採光上有効な部分(令20条1項)がある
    • 排煙に支障がないよう外気に開放されている
  • 採光に有効な窓(採光窓の面積≧床面積×1/20)のある居室で、以下のいずれかに当てはまるものは、非常用照明が免除。
    • 避難階の居室:”屋外への出口”までの歩行距離30m以下
    • 避難階の直上階・直下階の居室:”屋外への出口”または”屋外避難階段”までの歩行距離が0m以下
  • 以下のいずれかに当てはまる居室は、非常用照明の設置が免除。
    • 床面積30㎡以下の居室で、地上への出口があるもの
    • 床面積30㎡以下の居室で、地上までの避難経路が①または②に当てはまるもの
      1. 非常用照明が設けられたもの
      2. 採光上有効に外気に開放されたもの

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