『避難上有効なバルコニー』の構造とは|二以上の直通階段を免除する方法

避難規定
  • 階段を2つ設置したくないので、『避難上有効なバルコニー』による緩和を使いたい。
  • 建築基準法における『避難上有効なバルコニー』の構造は、どのように調べればいい?

こんな疑問に答えます。

 

本記事では、二以上の直通階段を免除するために必要な『避難上有効なバルコニー』について解説。

例えば、階数6以上の共同住宅を設計する方にとっては、必ず理解しておくべき情報かと。

ここで解説する『避難上有効なバルコニー』は、直通階段を緩和するためのものです。木三共(耐火建築物としない木造3階建て共同住宅)の避難上有効なバルコニーとは基準が異なるので注意してください。

このサイトは、確認検査機関で意匠審査を担当していた一級建築士が運営しています。

確認検査員として共同住宅の審査を数多く経験するなかで、『避難上有効なバルコニー』についての間違いが多くありました。

設計者が見落としやすいポイントをできる限り押さえて解説していくので、ご参考までにどうぞ。

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避難上有効なバルコニーとは【二以上の直通階段を免除する方法】

『避難上有効なバルコニー』とは、避難ハッチなどの避難器具が設置されており、火事が起きたときにタラップ(ハシゴ)を使って地上まで下りられるバルコニーのこと。

 

設計者が「なんとなく危ないから避難ハッチを付けよう」と任意で設置することはありません。

たいていは建築基準法における避難規定を免除するために計画されます。

 

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『避難上有効なバルコニー』が必要となるケース

建築基準法で『避難上有効なバルコニー』が必要となるケースは、大きく分けて3つ。

  1. ”二以上の直通階段”の免除
  2. 木三共(=耐火建築物としない木造3階建て共同住宅)の緩和条件
  3. 児童福祉施設などにおける排煙設備の免除

それぞれ必要とされる基準が異なるため、今回は『二以上の直通階段の免除』における避難バルコニーの構造について掘り下げていきます。

 

『避難上有効なバルコニー』の構造

『避難上有効なバルコニー』の構造は、建築基準法のなかには書かれていません。

用語は記載されているのですが、具体的な仕様について触れられておらず。

 

よって、避難バルコニーの設計をするときは、以下のいずれかの基準を調べる必要があります。

  1. 【Web検索】特定行政庁ごとの建築基準法取り扱い
  2. 【書籍】建築物の防火避難規定の解説

優先順位も上記のとおりで、市町村ごとに特定行政庁が定めた『避難バルコニー』の基準があれば、それが最優先。

無ければ全国的な運用である建築物の防火避難規定の解説に準ずるという流れ。

避難バルコニーなど、”建築基準法の取り扱い基準”を定めていない特定行政庁も多くありますからね。

 

”建築基準法の取り扱い基準”は、インターネットで検索して調べるだけでなく、プロのための 主要都市建築法規取扱基準という書籍を活用するのもおすすめ。

本のタイトル通り、行政が定めている建築基準法の解釈(取り扱い)をテーマごとにまとめてくれています。

避難上有効なバルコニーのページを開くと、行政ごとに少しずつ違う基準を比較することもできるので、建築設計に役立つかと。

 

  • STEP.1
    特定行政庁ごとの『避難上有効なバルコニー』の取り扱いを調べる

    まずは、計画敷地の特定行政庁が建築基準法の解釈をWebで公開しているかどうかを調べる。

    • 大阪市+建築基準法など、「特定行政庁の名前」と「建築基準法」というワードで検索

    建築基準法の取り扱いが公開されていれば、『避難上有効なバルコニー』について書かれたページを読みましょう。

    書籍”プロのための 主要都市建築法規取扱基準”で『避難上有効なバルコニー』について調べる方法もありです。

  • STEP.2
    書籍”建築物の防火避難規定の解説”の『避難上有効なバルコニー』を調べる

    特定行政庁が『避難上有効なバルコニー』の基準を定めていない場合は、書籍”建築物の防火避難規定の解説”に準ずることになります。

 

具体例:大阪市における『避難上有効なバルコニー』

特定行政庁ごとに『避難上有効なバルコニー』の基準を定めている例として、大阪市建築基準法取扱い要領を見てみましょう。

令第 121 条第 1 項第 3 号及び第 6 号( )書き中の「避難上有効なバルコニー」(以下「バルコニー」という。)とは、次の各号に適合するものをいう。

  • バルコニーは直通階段とおおむね対称の位置に設け、その階の各部分と容易に連絡できること。
  • バルコニーは「外気に有効に開放されたもの」(7.参考資料「床面積の算定方法」及び[図-1][図-2][図-3]参照)とすること。
  • バルコニーは道路又は敷地内の避難通路に面する各階(吹抜きとなる階もバルコニーは設置すること)の外壁面に設け、避難タラップ等(項目⑧参照)により、地上の避難通路(項目④参照)へ有効に避難できるものとすること。([図-1] [図-2] [図-3])
  •  敷地内の避難通路は道路又は広場その他これらに類する空地(以下「道路等」という)に有効に通じ、その幅は 90 cm 以上とすること。([図-1] [図-2] [図-3])ただし、避難通路をやむを得ず屋内に設ける場合は、本要領「2-45 屋外避難階段からの敷地内に設けるべき通路を、建物内に設ける場合の取扱い」 に準ずる。この場合の通路の幅も、90 cm 以上とする。

  • バルコニーの大きさは有効長さ 1.8m、有効奥行き 0.9m 以上とし、手すり(1.1m以上)を設けること。([図-4])

  • バルコニーの床は耐火構造とすること。
  • 屋内からバルコニーに通じる出入り口及び通路は、幅 75cm、高さ 180 cm 以上、下端は床面より 15 cm 以下とすること。
  • バルコニーの床に設ける避難口は有効直径 50 cm 以上の円が内接する大きさとし、避難ハッチに格納したはしご・固定はしご・タラップ(以下「避難タラップ等」という。)で地上まで安全に垂直避難できるものとする。(注:垂直避難とは「バルコニーのみを利用して、避難タラップ等同一の方法で地上まで垂直に避難を完了すること」とする。避難階においてバルコニーと避難通路との間に手摺等がある場合には、扉等を設け安全に避難できるようにすること。)
  • バルコニー間の隔壁は、容易に破壊できるもの(隔壁の中間部分に下地部材がある場合は、その位置を考慮すること)とし([図-5])、地上に通ずる避難途中に一度のみ通過できるものとする。ただし、垂直避難になって以降の隔壁通過は不可とする。([図-6] [図-7])

  • 避難タラップ等は各階で互い違いになるように設置すること。

  • 共同住宅の場合、原則として屋外避難階段と概ね対称の位置にある住戸専用のベランダ側にバルコニーを設けること。メゾネット型住戸の場合、各階にバルコニーを設けること。
  •  避難ハッチ等はステンレス製とし、避難階おける降下位置は外気に有効に開放されている場所に設けること。
  •  バルコニーと屋外避難階段の離隔距離は 2m以上とすること。

出典:【確認】大阪市建築基準法取扱い要領

建築基準法の法文には、「避難上有効なバルコニー」と一言しか書かれていませんが、これだけ多くの要件があるわけですね…。

 

全国的な運用:書籍『建築物の防火避難規定の解説』を読むこと

建築物の防火避難規定の解説における『避難上有効なバルコニー』の基準を、おおまかにまとめると以下のとおり。

『避難上有効なバルコニー』の構造

  1. バルコニーの位置は、直通階段とおおむね対象の位置とする
  2. バルコニーは道路または、幅員75㎝以上の敷地内の通路に面する
  3. タラップその他の安全に避難できる設備を有する
  4. バルコニーの面積2㎡以上、奥行75㎝以上
  5. バルコニーから2m以内の外壁は耐火構造等とし、開口部は特定防火設備または両面20分の防火設備
  6. バルコニーに通じる戸は、幅75㎝以上、高さ180㎝以上、下端の床面からの高さは15㎝以下
  7. バルコニーは外気に開放されていること
  8. バルコニーの床は、耐火構造・準耐火構造とする

建築物の防火避難規定の解説を読んでいないと、特殊建築物の設計はできません。

避難上有効なバルコニーと同じく、建築基準法の法文には具体的な仕様が書かれていない用語が多数あるからですね。

例えば、施行令114条『防火上主要な間仕切り壁』についても同じ。防火避難規定の解説にしか細かい内容が書かれていません。

 

特殊建築建築物を設計するときは建築物の防火避難規定の解説を必ず読み、どこに何が書かれているかを、ざっくりつかんだ上で計画にのぞみましょう。

 

建築基準法で『避難上有効なバルコニー』について読んでみる

避難上有効なバルコニーの用語が書かれているのは、建築基準法施行令121条

(二以上の直通階段を設ける場合)

第121条

前略

六 前各号に掲げる階以外の階で次のイ又はロに該当するもの

イ 6階以上の階でその階に居室を有するもの(第一号から第四号までに掲げる用途に供する階以外の階で、その階の居室の床面積の合計が100㎡を超えず、かつ、その階に避難上有効なバルコニー、屋外通路その他これらに類するもの及びその階から避難階又は地上に通ずる直通階段で第123条第2項又は第3項の規定に適合するものが設けられているものを除く。)

ロ 5階以下の階でその階における居室の床面積の合計が避難階の直上階にあつては200㎡を、その他の階にあつては100㎡を超えるもの

「建築基準法を読むのは嫌い」「法文ではわかりづらい」という方は、最低限、建築申請memo2020建築法規PRO2020 図解建築申請法規マニュアルを読んでおきましょう。

2冊とも”図解”や”一覧表”が多く用いられていて読みやすいです。

 

まとめ

  • 『避難上有効なバルコニー』とは、避難器具を使って地上まで下りることができるバルコニーのこと。
  • 建築基準法で避難上有効なバルコニーが必要となるケースは、大きく分けて3つ。
    1. 二以上の直通階段の免除
    2. 木三共(=木造3階建て共同住宅で耐火建築物としない場合)の緩和条件
    3. 児童福祉施設などにおける排煙設備の免除
  • 避難上有効なバルコニーの設置基準は、建築基準法の本文には書かれていない。
  • 避難バルコニーの設計をするときは、以下のいずれかの基準を調べること。

 

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