敷地内通路(幅3m)が必要な建築計画を解説|施行令第128条の2

敷地内通路_幅3m 避難規定
  • 延べ面積1000㎡を超える建物に必要な敷地内通路の幅は?
  • 建物周囲に3mの敷地内通路が必要となるのは、どんなとき?
  • 建築基準法施行令128条の2について、図で解説してほしい。

こんな悩みに答えます。

 

本記事では、大規模な建築物に必要となる敷地内通路についてわかりやすく解説。

延べ面積が1000㎡を超えるような建築計画をする場合、建築物の構造によっては建物周囲に幅3mの通路が必要となります。

特に、多くの建物がたち並ぶ敷地で増築を計画する設計者にとって役立つ情報です。

小規模な建築物(3階建ての住宅など)に必要となる「敷地内通路」の基準が知りたい方は、敷地内通路とは|建築基準法による幅1.5mまたは90㎝の避難経路の記事をご確認ください。

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大規模建築物の敷地内通路とは【建築基準法施行令128条の2】

敷地内にある建築物の合計面積(延べ床面積)が1000㎡を超えるとき、建物の構造や耐火性能によっては、建物周囲から道に至る幅1.5mまたは3mの敷地内通路が必要となります。

これは、建築基準法施行令128条の2による制限。その規制内容を一覧表にまとめました。

大規模建築物の敷地内通路に関する制限【一覧表】

法令 規制の対象 対象建築物の床面積 通路の位置 建物周囲の
通路幅
令128条の2第1項 主要構造部がすべて木造の建築物

※ただし、耐火建築物を除く

3000㎡≧1棟の延べ面積>1000㎡ 建築物の周囲(道に接する部分は免除) 3m以上(隣地境界線に面する部分は1.5m以上)
1棟の延べ面積>3000㎡ 3m以上
主要構造部の一部が木造の建築物

※ただし、以下のいずれかで区画されている部分の床面積は算入しない

  • 耐火構造とした壁
  • 特定防火設備
3000㎡≧1棟の延べ面積>1000㎡ 3m以上(隣地境界線に面する部分は1.5m以上)
1棟の延べ面積>3000㎡ 3m以上
令128条の2第2項 敷地内に建築物(※)が2棟以上ある場合

※:ただし、以下の建築物を除く

  • 耐火建築物
  • 準耐火建築物
  • 1棟で延べ面積1000㎡を超える建築物
床面積の合計>1000㎡ 建築物の相互間

※延べ面積の合計1000㎡以内ごとに建築物群を区画

3m以上
令128条の2第3項 以下のすべてに当てはまる場合

  • 敷地内に建築物が2棟以上
  • 複数の建築物(建築物群)が、準耐火建築物(または耐火建築物)によって、床面積の合計1000㎡以下となるよう遮られていること
床面積の合計>3000㎡ 建築物の相互間

※延べ面積の合計3000㎡以内ごとに建築物群を区画

3m以上

「延べ面積が1000㎡を超えるような建物は設計しないから大丈夫」と軽く考えてはいけません。

1棟あたりの床面積が1000㎡未満だとしても、敷地内にある建物の合計面積が1000㎡を超えるとき、令128条の2における敷地内通路の検討が必要となります。

特に、増築を計画するときは注意してください。

たとえば工場で、敷地内に床面積400㎡の建物が2棟(400㎡×2棟=800㎡)あり、300㎡の建築物を増築することで、合計が1000㎡を超えるケースなど。

別棟増築で小規模な建物を設計するとしても、既にある建築物と合わせて床面積1000㎡を超えると、敷地内通路(令128条の2)が必要となる可能性があります。

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1棟で1000㎡超の木造建築物の敷地内通路【令128条の2第1項】

以下のいずれかの建築物は、隣地境界線に面して幅1.5m(※床面積3000㎡超は幅3m)、他の建築物との間に幅3mの通路が必要となります。

  • 主要構造部がすべて木造の建築物(ただし、耐火建築物を除く)で、1棟の延べ面積>1000㎡
  • 主要構造部の一部が木造の建築物で、1棟の延べ面積>1000㎡(ただし、●耐火構造とした壁●特定防火設備で区画されている部分の床面積は算入しない)

敷地内通路_1棟1000㎡超

 

複数棟で合計面積1000㎡超の敷地内通路【令128条の2第2項】

敷地内に建築物(※)が2棟以上ある場合で、床面積の合計が1000㎡を超えるとき、建築物群(合計面積1000㎡以下となる建築物のグループ)の周囲に3mの空地が必要となります。

※:ただし、以下の建築物を除く

  • 耐火建築物
  • 準耐火建築物
  • 1棟で延べ面積1000㎡を超える建築物

敷地内通路_複数棟1000㎡超

 

複数棟で合計面積3000㎡超の敷地内通路【令128条の2第3項)

以下のすべてに当てはまる場合、合計面積3000㎡以下ごとに、建築物群(合計面積1000㎡以下となる建築物のグループ)の周囲に3mの空地が必要となります。

  • 敷地内に建築物が2棟以上
  • 床面積の合計が3000㎡を超える
  • 複数の建築物(建築物群)が、準耐火建築物(または耐火建築物)によって、床面積の合計1000㎡以下となるよう遮られている

敷地内通路_耐火または準耐火建築物による遮蔽

 

敷地内通路について建築基準法を読む

大規模な建築物の敷地内通路については、建築基準法施行令128条の2に定められています。

「建築基準法を読みたくない」という方は、建築法規PRO2024 図解建築申請法規マニュアル建築申請memo2024といった書籍で、図や表を見て理解を深めていきましょう。

(大規模な木造等の建築物の敷地内における通路)

第百二十八条の二

主要構造部の全部が木造の建築物(法第二条第九号の二イに掲げる基準に適合する建築物を除く。)でその延べ面積が千平方メートルを超える場合又は主要構造部の一部が木造の建築物でその延べ面積(主要構造部が耐火構造の部分を含む場合で、その部分とその他の部分とが耐火構造とした壁又は特定防火設備で区画されているときは、その部分の床面積を除く。以下この条において同じ。)が千平方メートルを超える場合においては、その周囲(道に接する部分を除く。)に幅員が三メートル以上の通路を設けなければならない。ただし、延べ面積が三千平方メートル以下の場合における隣地境界線に接する部分の通路は、その幅員を一・五メートル以上とすることができる。

2 同一敷地内に二以上の建築物(耐火建築物、準耐火建築物及び延べ面積が千平方メートルを超えるものを除く。)がある場合で、その延べ面積の合計が千平方メートルを超えるときは、延べ面積の合計千平方メートル以内ごとの建築物に区画し、その周囲(道又は隣地境界線に接する部分を除く。)に幅員が三メートル以上の通路を設けなければならない。

3 耐火建築物又は準耐火建築物が延べ面積の合計千平方メートル以内ごとに区画された建築物を相互に防火上有効に遮つている場合においては、これらの建築物については、前項の規定は、適用しない。ただし、これらの建築物の延べ面積の合計が三千平方メートルを超える場合においては、その延べ面積の合計三千平方メートル以内ごとに、その周囲(道又は隣地境界線に接する部分を除く。)に幅員が三メートル以上の通路を設けなければならない。

4 前各項の規定にかかわらず、通路は、次の各号の規定に該当する渡り廊下を横切ることができる。ただし、通路が横切る部分における渡り廊下の開口の幅は二・五メートル以上、高さは三メートル以上としなければならない。

一 幅が三メートル以下であること。

二 通行又は運搬以外の用途に供しないこと。

5 前各項の規定による通路は、敷地の接する道まで達しなければならない。

 

まとめ

  • 建築物の合計面積が1000㎡を超えるとき、建物の構造や耐火性能によっては、建物周囲に幅1.5mまたは3mの敷地内通路が必要。
  • 以下のいずれかの建築物は、隣地境界線に面して幅1.5m(※床面積3000㎡超は幅3m)、他の建築物との間に幅3mの通路が必要。
    • 主要構造部がすべて木造の建築物(ただし、耐火建築物を除く)で、1棟の延べ面積>1000㎡
    • 主要構造部の一部が木造の建築物で、1棟の延べ面積>1000㎡(ただし、●耐火構造とした壁●特定防火設備で区画されている部分の床面積は算入しない)
  • 建築物(ただし、以下の建築物を除く)が2棟以上ある場合で、合計面積が1000㎡を超えるとき、建築物群(合計面積1000㎡以下となる建築物のグループ)の周囲に3mの空地が必要。
    • 耐火建築物
    • 準耐火建築物
    • 1棟で延べ面積1000㎡を超える建築物
  • 以下すべてに当てはまる場合、合計面積3000㎡以下ごとに、建築物群の周囲に3mの空地が必要。
    • 敷地内に建築物が2棟以上
    • 床面積の合計が3000㎡超
    • 複数の建築物(建築物群)が、準耐火建築物(または耐火建築物)によって、床面積の合計1000㎡以下となるよう遮られている

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