
- 建物をリノベーションしたい場合、『増築』になる?
- 「別棟増築」や「同一棟増築」の意味を教えてほしい。
- 「0㎡増築」って何?
こんな疑問に答えます。
本記事では、建築基準法における『増築』の定義について、図をまじえながら解説。
「別棟増築」や「同一棟増築」・「0㎡増築」など、増築にまつわる用語の意味が理解できるので、既存建物を有効に活用したい設計者の方にとって役立つ情報かと。

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住宅から特殊建築物まで、1000件以上の設計相談を受けて得た建築基準法の知識をわかりやすくまとめていくので、ご参考までにどうぞ。
建築基準法における『増築』とは?【0㎡増築についても解説】
『増築』とは…すでに建築物が建っている敷地に、新たに建物を築造することです。
建て増しによって床面積が増えるかどうかは、『増築』の基準とは無関係。
「0㎡増築」という言葉もあるように、床面積が増加しない場合でも「増築」とみなされるケースがあります。
例えば、以下のような事例は面積の増加はないものの「増築」には該当します。(=0㎡増築)
- Ex.1:既存建築物に床面積に算入されない“屋外階段”を建築する場合
- Ex.2:既存建築物に付属する“塀”を建築する場合
既存建物に屋外階段を新たに設ける場合、外気に有効に開放された屋外階段は床面積不算入。
ただし、面積は増えないとしても、新たに建物を築造していることに変わりはありません。
よって、「床面積が0㎡の建築物を増築する」、略して「0㎡増築」となるわけですね。

「床面積が増加しなければ増築ではない」と勘違いしている設計者の方は多いかと。確認申請の要否判定にも影響するので、かなり危険です。
『増築』は大きく分けて2種類ある【別棟増築と同一棟増築】
『増築』は大きく分けて、2種類に分類されます。
- 別棟増築
- 同一棟増築
『別棟増築』とは
『別棟増築』とは…既存の建築物とは離れた位置に、”用途上不可分(=既存建物と同じ用途)”の建築物を増築することです。
別棟増築を行うときに必ず確認したいポイントが、”増築する建物”と”既存建築物”が用途上不可分の関係であるかという点。
1つの敷地には、1つの用途の建築物しか建築できないのが建築基準法の原則。(一敷地一建物の原則)
つまり、既にある建物と「同じ用途」または「付属する用途」の建物で無ければ、敷地内に二棟目を増築することはできません。
例1:「戸建て住宅」に「カーポート(屋根付き駐車場)」を別棟増築はOK
”戸建て住宅”に付属する”屋根付き駐車場”のように主従の関係が成り立っている場合は、それぞれの建物を使用用途上分けることができず、用途上不可分といえるため別棟増築が可能。
例2:「A社の金属加工工場」に「A社の部品製造工場」を別棟増築はOK
”A社の金属加工棟”と”A社の部品製造棟”のように、同じ敷地内に2つの作業所があるケースは用途上不可分。管理者が同じで、それぞれの建築物が機能的に強く結びついているからですね。
例3:「共同住宅」に「共同住宅」を別棟増築はNG
共同住宅が既に建っている敷地に、別棟で共同住宅を増築するのは用途上可分であるため増築不可となります。

共同住宅はそれぞれ独立していても生活が成り立ちますし、「2棟とも建っていないと人が住めない」という性質のものでは無いから。
共同住宅を二棟建築したい場合は、敷地を分けて「一敷地一建物」となるような計画を検討しましょう。
『同一棟増築』とは
『同一棟増築』とは…既存建物に新しく建物を接続し、「一つの建築物(一体)」となるように増築すること。
「同一棟増築」には、建物の構造に応じた2種類の接続方法があります。
- Exp.J(エキスパンションジョイント)型
- 構造一体型
Exp.J(エキスパンションジョイント)型の「同一棟増築」とは
Exp.J(エキスパンションジョイント)型は、既存建物と増築建物の構造部が、Exp.Jにより分離した増築方法。
既存建物と増築建物の外観は「一つの建物」に見えますし、内部で行き来ができるなど機能的にも一体となりますが、構造体はぞれぞれ分離しています。

Exp.J型の増築は、「意匠上は同一棟、構造上は別棟」と言ったりしますね。
構造一体型の「同一棟増築」とは
構造一体型は、既存建物と増築建物のそれぞれの構造体が一つになるように接続する方法。
外観上、機能上はもちろん、構造上も「一つの建物」となる増築形式です。

「構造一体型」は、既存建物も含めた建物全体の構造設計を再検討する必要があります。既存建物の構造図・構造計算書が無いと設計することは難しいかと。
構造設計者の高度な法律知識と設計技術がないと、確認申請を通すのも不可能に近いですね。
まとめ
- 『増築』とは…すでに建築物が建っている敷地に、新たに建物を築造すること。
- 建て増しによって床面積が増えるかどうかは『増築』の基準とは無関係。
- 「0㎡増築」のように、床面積が増加しない場合でも増築とみなされるケースあり。
- 『増築』は大きく分けて、2種類に分類される。
- 別棟増築
- 同一棟増築
- 『別棟増築』とは…既存の建築物とは離れた位置に、”用途上不可分(=既存建物と同じ用途)”の建築物を増築すること。
- 別棟増築を行うときに必ず確認したいポイント:”増築する建物”と”既存建築物”が用途上不可分の関係であるか。
- 『同一棟増築』とは…既存建物に新しく建物を接続し、「一つの建築物(一体)」となるように増築すること。
- 「同一棟増築」には、建物の構造に応じた2種類の接続方法がある。
- Exp.J(エキスパンションジョイント)型
- 構造一体型
増築の種類ごとに、建築基準法の既存建物に遡及(そきゅう)される条項が変わるため、設計難易度・確認申請の通しにくさが大きく変わります。
個人的な意見ですが、以下の順に難易度が上がっていくかと。
増築の確認申請をする際は、計画がどの増築種別にあたるか、まず把握することからスタートしましょう。