
- 増築の確認申請をはじめて出すけど、スムーズに進むか心配…。
- 新築と同じような流れなのかな?
- フローチャートで申請の全体像をつかみたい。
こんな悩みに答えます。
本記事では、増築の確認申請の流れをフロチャート付きで解説。
増築の計画を初めて行う設計者の方にとって、建築確認の流れをつかむのに役立つ情報かと。

このサイトは、確認検査機関で意匠審査を担当していた一級建築士が運営しています。
住宅から特殊建築物まで1000件以上の設計相談を受けて得た建築基準法の知識を、できるだけわかりやすくまとめていくので、ご参考までにどうぞ。
増築確認申請の流れをフローチャートで解説
増築の確認申請は、『行政機関(市役所など)』『確認検査機関』『消防署』の3つの機関が関わることになります。
基本的な申請の流れは新築と変わりませんが、増築ならではの動きとして、既存建物の調査をする期間が必要。
✔増築確認申請のフローチャート
確認申請を検査機関に提出してからのフローは「新築」も「増築」も同じ。
だからこそ「既存建物の調査~確認検査機関への事前相談」までのプロセスが、増築の確認申請では最も重要です。
「既存建物の調査」から「増築確認申請」への流れ
増築の計画では、新築とは違い、設計に入る前に既存建物の調査を実施する必要があります。
既存敷地の調査から建築物の設計、確認申請の提出へ至るプロセスは以下のとおり。
- 既存建物の検査済証の有無
- 既存建物の確認申請図書(副本)の有無
- 既存建物の調査
- 増築計画の作成
- 確認申請の提出
『既存建物の検査済証』の有無をチェック
既存建物が検査済証を取得していない場合、その建物が建築基準法に適合していると証明するのが困難なため、確認検査機関では原則として「受付」ができません。
例えば、大阪府で検査済証のない既存建物に対して、同一棟増築をするときのフローチャートは以下のとおり。
詳しくは、増築の確認申請に必要な書類とは【既存建物の検査済証・副本など】という記事を参考にどうぞ。
もしも敷地内に検査済証を取得していない建物がある場合は、所轄の行政機関(特定行政庁)で「どのような手続きをすれば、増築を行うことができるか」を相談しましょう。
既存建物の確認申請図書(副本)の有無をチェック
増築では既存部分の図面を作成し、「既存不適格」が無いかどうかをチェックするため、既存建物の確認申請図書(副本)が欠かせません。
さらに、副本が無い場合、確認検査機関によっては「受付できない」と判断されるケースも。

増築の審査を進めていくなかで、既存建物における建築基準法の解釈がわからないと、「適合」か「不適合」かを判断できないことがあるからです。
実体験を少しお話しすると、既存の事務所に同一棟増築をする計画があったのですが、確認申請図書(副本)がないまま審査をスタート。
しかし、建築確認を進めているうちに既存建物の”建ぺい率”が明らかに少ないことが発覚。
副本がなかったため竣工図などを活用し、建築面積を再算定することで建築基準法に適合することをなんとか確認しましたが、過剰な労力と時間がかかった思い出があります。
既存建物の副本がないときは、確認申請を受付できるか、検査機関へ事前相談に行くことをおすすめします。
既存建物の調査
建築主から『既存建物の検査済証(写し)』と『確認申請図書の副本』を借りたうえで、現地の調査を行います。
既存建物の確認申請図書と現地を見比べて、確認申請手続きがされていない違法な増築や用途変更がないか注意しましょう。
確認申請図書を提出した後の流れは、増築も新築と同じ
確認申請図書を検査機関に提出した後の流れは、『増築』も『新築』もさほど変わりありません。
まずは確認検査機関で受付を行い、申請図書を提出。
確認検査機関が審査をしたうえで、指摘事項を設計者に送付。設計者が図面の修正を終えれば消防同意…という流れですね。
消防署の同意が得られれば、確認検査機関が決裁処理をおこない「確認済証」が交付されます。
既存建物も含めた敷地全体で建築基準法に適合させることが重要
増築計画で意識すべきことは、増築部分の設計だけに集中するのでは無く、既存建物も含めた敷地全体が建築基準法に適合しているかどうかを見る視点。
新築を設計するときには、敷地全体の法適合性に注意をはらう設計者でも、増築になった途端に既存建物を軽視し、他人事のように扱っていることがあります。

既存建物は自分で設計したわけじゃないし、古いし…、建築基準法に適合しているかどうかわからない。

設計者の方がわからないことは、確認検査機関でもわかりません。「敷地全体が建築基準法に適合している」といえる設計ができなければ、確認済証は交付されないでしょう。
設計者には、増築を行う計画敷地を、建築基準法に適合するように保つ責任があります。
もし、増築をしたことによって既存建物が違反建築物となった場合、設計者が処分される可能性も。増築部分だけにとらわれず、広い視野で敷地をくまなく調査しておきましょう。
増築に関する知識が不足しているのであれば、既存の建築物の扱いに自信を持つために、プロが読み解く 増改築の法規入門 増補改訂版などの書籍で予習するのがおすすめ。

確認検査機関への事前相談でも、一定の知識を持った状態で打ち合わせをしなければ、お互い結論を出せないまま終わってしまいますからね。
「とりあえず確認検査機関に考えてもらおう…」というスタンスで臨むと、検査機関からは”知識不足の危険な顧客”とみなされてしまい、以後の申請がスムーズに進みません。
まとめ
- 「増築確認申請のフローチャート」を参考に全体の流れを把握。
- 「既存建物の調査~確認検査機関への事前相談」のプロセスが、増築の確認申請では重要。
- ”既存敷地の調査”から”確認申請”への流れ。
- 既存建物の検査済証の有無
- 既存建物の確認申請図書(副本)の有無
- 既存建物の調査
- 増築計画の作成
- 確認申請の提出
- 既存建物が検査済証を取得していない場合、建築基準法に適合することを証明するのが困難。
- 「既存不適格」の有無をチェックするために既存建物の確認申請図書(副本)が必要。
- 増築の設計では、既存建物も含めた敷地全体の法適合性を意識すること。