『特定防火設備』とは|建築基準法による告示仕様・大臣認定品を解説

特定防火設備 防火規定
  • 特定防火設備(とくていぼうかせつび)って何?
  • 特定防火設備の仕様をどのように選べばいいかわからない…。
  • 「特定防火設備」と「防火設備」との違いは?

こんな悩みに答えます。

 

本記事では、建築基準法における『特定防火設備』の構造について解説。

内容

  • 特定防火設備とは
  • 特定防火設備の基準
  • 特定防火設備と防火設備の違い

防火区画が必要な建築物の設計において欠かせない知識なので、非住宅を設計する建築士の方に役立つ情報です。

このサイトは、確認検査機関で意匠審査を担当していた一級建築士が運営。

住宅から特殊建築物まで1000件以上の設計相談を受けた経験をもとに、建築基準法の知識をわかりやすくまとめていきます。ご参考までにどうぞ。

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特定防火設備とは

『特定防火設備』とは、火災の拡大を防ぐために、炎を遮る性能を高めた開口部(扉・窓など)です。

遮炎性能が1時間以上継続する防火設備が、特定防火設備とみなされます。

以前は「甲種防火戸」と呼ばれていましたね。

防火区画の開口部として設置するケースが多く、例えば以下のような扉が特定防火設備に該当。

  • 厚さ1.5㎜以上の鉄製戸
  • 鉄骨枠の両面に厚さ0.5㎜以上の鉄板を張った戸

ここからは建築基準法に定められた具体的な仕様について解説していきます。

 

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特定防火設備の構造

特定防火設備の仕様は、2種類に分類されます。

  • 告示仕様:告示1369号にもとづいて製作されたもの
  • 大臣認定品:大臣の認定を受けた製品(認定番号はEA-〇〇〇〇)

設計実務で特定防火設備を計画する場合は、いずれかの製品を選択するわけですね。

 

告示仕様【建設省告示1369号】

特定防火設備を告示仕様で設計する場合は、建築基準法の告示1369号を満たす必要があります。

【告示1369号】構造・材質(※一部抜粋)

  • 骨組を鉄製とし、両面にそれぞれ厚さ0.5㎜以上の鉄板を張った防火戸
  • 鉄製で鉄板の厚さ1.5㎜以上の防火戸、または防火ダンパー
  • 鉄骨コンクリート製、または鉄筋コンクリート製で厚さ3.5㎝以上の戸
  • 土蔵造で厚さ15㎝以上の防火戸

【告示1369号】炎の侵入する隙間がないこと

  • 防火戸が枠、または他の防火設備と接する部分は、以下のいずれかにより隙間のない構造とする
    • 相じゃくり
    • 定規縁
    • 戸当り
  • 防火設備の取付金物は、取付部分が閉鎖した際に露出しないように取り付ける

 

大臣認定品【EA】

特定防火設備の大臣認定品は、「EA-〇〇〇〇(数字4桁)」の認定書が発行された製品です。

防火設備の大臣認定は3種類あり、炎を遮る性能(遮炎性能)によって区別されています。

認定番号種別の一覧

種類 防火設備
特定防火設備
大臣認定コード EA EB EC
要件 加熱面以外の面に火炎を出さない 加熱面以外の面に火炎を出さない 加熱面以外の面に火炎を出さない
遮炎時間 1時間 20分間 20分間
火災の種類 建築物の屋内または周囲で発生する通常の火災 建築物の屋内または周囲で発生する通常の火災 建築物の周囲で発生する通常の火災
性能 遮炎性能 遮炎性能 準遮炎性能
主な設置場所 防火区画 耐火建築物または準耐火建築物の外壁の開口部で延焼のおそれのある部分 防火地域または準防火地域内の建築物の外壁の開口部で延焼のおそれのある部分
関係法令 令第112条第1項 法第2条第九号二/口
令第109条の2
法第61条
令第136条の2

 

特定防火設備と防火設備の違い

特定防火設備は、防火設備を上回る遮炎性能を持っています。(特定防火設備>防火設備)

特定防火設備と防火設備の違い

  • 特定防火設備:1時間の遮炎性能
  • 防火設備:20分間の遮炎性能

建築基準法において防火設備の設置が必要な位置に、特定防火設備を用いてもOK。

 

特定防火設備に関するQ&A

確認申請において、特定防火設備に関する「よくある質問」をまとめました。

  • 【質問1】告示仕様において、扉の下端と床のあいだの隙間は不可?
  • 【質問2】特定防火設備は、煙を遮る性能(遮煙性能)を持つ?

 

【特定防火設備】扉の下端と床のあいだの隙間は不可?【10㎜まではOK】

Q. 扉の下端と床の間に隙間がある建具は、特定防火設備の告示仕様とみなされますか?
A. 特定行政庁や確認検査機関の判断にもよりますが、10㎜以下の隙間は許容されると思います。

特定防火設備の大臣認定を取得する際の判定方法に、下記のような記載があるからですね。

(特定防火設備の)判定方法

  1. 非加熱側へ10秒を越えて継続する火災の噴出がないこと。
  2. 非加熱側で10秒を越えて継続する発炎がないこと。
  3. 火災が通る亀裂等の損傷及び隙間を生じないこと。但し、防火戸のくつずり及びシャッターの床に接する部分の隙間(10mm以下)は除外する。

 

特定防火設備はすべて遮煙性能も満たしている?【遮炎性能と遮煙性能は別の基準】

Q. 特定防火設備は、煙を遮る性能(遮煙性能)を持つ?
A. 特定防火設備であっても遮煙性能があるとは限りません。

特定防火設備は、遮炎性能があることを示していますが、遮煙性能は基準が異なります。

 

「遮炎性能」と「遮煙性能」の告示仕様、大臣認定品を比較すると以下のとおり。

✔️ 遮炎性能

  • 告示仕様:告示1369号の基準を満たすもの
  • 大臣認定:EA- 〇〇〇〇などの認定を取得したもの

✔️ 遮煙性能

  • 告示仕様:告示2564号の基準を満たすもの
  • 大臣認定:CAS- 〇〇〇〇の認定を取得したもの

例えば、異種用途区画の開口部は、特定防火設備(遮煙性能付き)が必要となるので注意しましょう。

特定防火設備(遮煙性能付き)の大臣認定品は、CAS認定を取得しているもの。

CAS-1109のように扉の材質が鉄製で、ガラス窓が設置されてない製品を選ぶわけですね。

 

特定防火設備について建築基準法を読む

特定防火設備という用語は、建築基準法施行令112条に記載されています。

「建築基準法を読みたくない」という方は、建築法規PRO2024 図解建築申請法規マニュアル建築申請memo2024といった書籍で、図や表を見て理解するのがおすすめです。

(防火区画)

第112条

中略

特定防火設備(第109条に規定する防火設備であつて、これに通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後1時間当該加熱面以外の面に火炎を出さないものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものをいう。以下同じ。)で区画しなければならない。

以下省略

特定防火設備の構造は、建設省告示1369号ですね。

建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第112条第1項の規定に基づき、特定防火設備の構造方法を次のように定める。

特定防火設備の構造方法を定める件

第一 通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後一時間加熱面以外の面に火炎を出さない防火設備の構造方法は、次に定めるものとする。

以下省略

 

まとめ

  • 特定防火設備とは、炎を遮る性能を高めた開口部(扉・窓など)。
  • 特定防火設備は、大きく分けて2種類。
    • 告示仕様:告示1369号にもとづいて製作されたもの
    • 大臣認定品:大臣の認定を受けた製品(認定番号はEA-〇〇〇〇)
  • 特定防火設備と防火設備の違い
    • 特定防火設備:1時間の遮炎性能
    • 防火設備:20分間の遮炎性能

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