3階建て住宅における『直通階段』の基準【令第120条の緩和とは】

避難規定
  • 3階建て住宅に直通階段は必要?
  • 階段の経路が複雑だと、建築基準法に不適合となる?
  • 直通階段を緩和する条件を教えてほしい。

こんな疑問に答えます。

本記事では、3階建て住宅における直通階段の基準を解説。

階数が3以上の建物には『直通階段』の設置が必須であり、住宅用途も例外ではありません。

記事を読むことで、”住宅の階段の連続性”や”緩和の要件”について理解できるかと。

このサイトは、確認検査機関で意匠審査を担当していた一級建築士が運営しています。

住宅から特殊建築物まで、1000件以上の設計相談を受けて得た建築基準法の知識を、できるだけわかりやすくまとめていくので、ご参考までにどうぞ。

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3階建て住宅に必要となる『直通階段』の基準とは

戸建住宅で階数3以上とする場合は、建築基準法における「直通階段」を設置する必要があります。

ただの階段との違いは、直通階段とは|建築基準法における『直通階段』の設置基準まとめという記事で解説しています。

 

直通階段が必要となる建築物

  • 法別表第一(い)欄(一)項から(四)項までに掲げる用途に供する特殊建築物
  • 階数が3以上である建築物
  • 採光無窓居室(採光に有効な開口面積<居室面積×1/20)のある階
  • 延べ面積が1000㎡を超える建築物

3階建ての住宅は、上記の「階数が3以上である建築物」に当てはまるため、3階から1階まで直通している階段を設置する必要があるわけですね。

 

ただし、戸建て住宅のみ「直通階段」の一部の条件が緩和されています。

 戸建て住宅の直通階段において緩和される基準

  • 階段の経路が曲折する場合でも、連続性が保たれていればよい
  • 階段の踊り場に扉を設けてもよい

ここからは、戸建て住宅の直通階段にのみ適用される緩和基準について詳しく解説していきます。

 

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3階建て住宅における直通階段の緩和とは

Q. 3階建て住宅における直通階段の緩和について、詳しく教えてください。
A. 直通階段の緩和基準は、書籍“建築物の防火避難規定の解説2016(第2版)”に書かれています。
また、特定行政庁ごとに建築基準法の解釈が異なる場合もあるため、確認検査機関への事前相談が必要です。

戸建住宅を設計しているときに、階段と次の階段への経路が離れていたり、階段の途中に扉を設けたいときは、以下のプロセスに従って検討を進めましょう。

  1. 書籍“建築物の防火避難規定の解説2016(第2版)”を読む(⇒全国的な設計指針を知る)
  2. 特定行政庁ごとの建築基準法取り扱いをWebで調べる(⇒地域ごとの設計指針を知る)
  3. 確認検査機関に事前相談をする(⇒確認申請先の設計指針を知る)

 

1.  “防火避難規定の解説”を読む

「戸建住宅に限り、直通階段が緩和できる」という事実は、建築基準法の本文には記されていません。

建築基準法の防火避難規定の法解釈をまとめた書籍「建築物の防火避難規定の解説2016(第2版)」に示されています。

3階建専用住宅も直通階段は必要となるが、利用者が特定されており、多少の曲折があっても階段が明らかであるものは直通階段に該当する。

また、直通階段は階段の途中に扉を設けないことを原則とするが、2階に玄関扉を設けるなど避難上支障のないものは直通階段とみなされるケースもある。

出典:建築物の防火避難規定の解説2016(第2版)

住宅は利用者が特定されているため、経路が折れ曲がっていても順路が明らかなものは、『直通階段』とみなされるということですね。

 

2. 『直通階段』に関する各地域ごとの取り扱いを調べる

住宅を計画している地域の「建築基準法取り扱い基準」をインターネットで検索し、特定行政庁が直通階段に関する基準を定めていないか検討を重ねましょう。

各都市のホームページで調べるか、もしくは書籍プロのための 主要都市建築法規取扱基準 四訂版で確認。

ちなみに、建築基準法取り扱い基準をWeb上に公開していない地域もあります。その場合は、次のステップ「3.確認検査機関に事前相談」に進んでください。

 

直通階段に関する特定行政庁の取り扱い事例

戸建て住宅における直通階段の緩和事例として、大阪市の基準を見てみましょう。

直通階段の途中に扉があるなど避難上支障があるものや、次の階へ通じる階段の位置が離れていて連続性に欠けるものなどは直通階段に該当しないが、一戸建ての住宅に限り下図のように階段の途中に扉があっても配置により連続性が保たれている場合は、直通階段として扱う。

ただし、令第 112 条の竪穴区画を必要とする場合を除く。

3階建て住宅_直通階段_大阪市

出典:大阪市建築基準法取扱い要領

他にも、特定行政庁ごとに異なる解釈をしている可能性もありますので、計画敷地の「建築基準法取り扱い基準」は必ず調べるようにしましょう。

 

3. 確認検査機関に事前相談

”防火避難規定の解説”にも掲載されておらず、特定行政庁の取り扱いにも定められていない、判断が微妙な直通階段の設計をする場合は、必ず確認検査機関に事前相談をしましょう。

“防火避難規定の解説”を読まなくても、いきなり確認検査機関に相談すればいいのでは?

設計者の見解を持った上で、事前相談に行くのが基本です。

 

確認検査機関がくだす判断が、設計者にとって厳しい結論となるかもしれません。

「戸建て住宅における直通階段の緩和要件」は、階段から次の階段への距離が定められておらず、明確な基準が無いからこそ、確認検査員の裁量による部分が大きいからです。

どうしても実現したいプランがあるのであれば、設計者自身で情報を収集し、確認検査員が納得するような主張を考えたうえで事前相談に出向くことが重要です。

 

まとめ

  • 戸建住宅で階数3以上とする場合は、建築基準法における「直通階段」を設置が必要。
  • 戸建て住宅のみ「直通階段」の条件が緩和されている。
  • 階段の踊り場が長かったり、途中に扉を設けたいときは、以下のプロセスを踏む。