
- 外壁後退って何?
- どのような地域に指定される?
- 隣地境界線ぎりぎりに建物を建てることができない?
こんな悩みに答えます。
本記事では、建築基準法における外壁後退の制限について解説。
一種低層住居専用地域など、小規模な建物が建ち並ぶ住宅地で設計をするときに欠かせない知識です。

このサイトは、確認検査機関で意匠審査を担当していた一級建築士が運営。
住宅から特殊建築物まで1000件以上の設計相談を受けた経験をもとに、建築基準法の知識をわかりやすくまとめていきます。ご参考までにどうぞ。
外壁後退の制限とは

以下の用途地域にある敷地で、都市計画によって定められた場合は、建築物の外壁または柱を敷地境界線から一定の距離、離さなければなりません。
- 一種低層住居専用地域
- 二種低層住居専用地域
- 田園住居地域

このような“隣地境界線から外壁までの離隔距離に関する制限”を、略して「外壁後退」と言います。
外壁後退の距離【1mまたは1.5m】
外壁後退の距離は、以下のいずれかの数値を特定行政庁が定めます。
- 1m
- 1.5m
外壁後退は都市計画によって規定
外壁後退の制限を定めていない一種・二種低層住居専用地域、田園住居地域もあります。
制限の対象となる敷地かどうか、調べる手順は以下のとおり。
- インターネットで“〇〇市 都市計画情報”や“〇〇市 用途地域”で検索
- 都市計画情報に関するwebページで、計画敷地の地番を検索
- 対象エリアに「外壁後退〇m」と表示されているかチェック
外壁後退の対象となる部分
外壁後退の対象となるのは、建築物の以下の部分。
- 外壁
- 柱(外壁の代わりとなるもの)
”片持ちの庇”は対象外です。

外壁後退の緩和
外壁後退の制限には、2つの緩和があります。
以下のいずれかの条件を満たす部分は、外壁後退の対象から除外。
- 後退ラインからはみ出す部分の外壁中心線の長さが3m以下
- 物置等で、以下の両方の基準を満たす部分
- 軒の高さ2.3m
- 後退ラインからはみ出す部分の床面積が5㎡以下

外壁後退Q&A
外壁後退の対象となるかどうか、判定に迷う建築物の部分をQ&Aでまとめました。
- バルコニー
- 塀
- カーポート
- 格子窓
- 出窓
バルコニーの取り扱い
大阪府
兵庫県
1 建築面積算入の対象となる柱は、外壁に代わる柱とみなす。
ただし、平成5年告示第1437号で指定する構造のものは、建築面積算入の対象とはならない
が、外壁に代わる柱とみなす。2 建築面積に算入される出窓は外壁として扱う。緩和の長さは、全階の水平投影による最大長
さで算定する。3 戸袋、屋根、外壁のないバルコニー、外壁のない屋外階段、外壁のない開放廊下、玄関ポー
チ等は外壁に含まれない。4 地盤面上1m以下にある建築物の部分は外壁とみなさない。
出典:兵庫県
奈良県
「建築物の外壁又はこれに代わる柱の面」は、下図の場合▲ ▼部分とする
出典:奈良県
塀の取り扱い
カーポートの取り扱い
はね出し庇のカーポートは、外壁後退の対象外。
柱で区画されたカーポートは、外壁後退の対象。ただし、下図に当てはまる部分は緩和されます。

シャッターボックス、格子窓
出窓

床面積等に含まれない出窓の基準は、各特定行政庁が定めている取り扱いを確認してください。
外壁後退の制限について建築基準法を読む
外壁の後退距離の制限は、建築基準法54条に規定。
「建築基準法を読みたくない」という場合は、建築法規PRO2025 図解建築申請法規マニュアル や建築申請memo2025 といった書籍で、図や表を見て理解を深めていきましょう。
第一種低層住居専用地域等内における外壁の後退距離
第54条
第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域又は田園住居地域内においては、建築物の外壁又はこれに代わる柱の面から敷地境界線までの距離(以下この条及び第86条の6第一項において「外壁の後退距離」という。)は、当該地域に関する都市計画において外壁の後退距離の限度が定められた場合においては、政令で定める場合を除き、当該限度以上でなければならない。
2 前項の都市計画において外壁の後退距離の限度を定める場合においては、その限度は、1.5m又は1mとする。
外壁後退の緩和は、建築基準法施行令135条の22に定められていますね。
第一種低層住居専用地域等内における外壁の後退距離に対する制限の緩和
第135条の22
法第54条第1項の規定により政令で定める場合は、当該地域に関する都市計画において定められた外壁の後退距離の限度に満たない距離にある建築物又は建築物の部分が次の各号のいずれかに該当する場合とする。
一 外壁又はこれに代わる柱の中心線の長さの合計が3m以下であること。
二 物置その他これに類する用途に供し、軒の高さが2.3m以下で、かつ、床面積の合計が5㎡以内であること。
まとめ
- 以下の用途地域で都市計画により定められたエリアは、外壁を敷地境界線から一定距離、離隔しなければならない。
- 一種低層住居専用地域
- 二種低層住居専用地域
- 田園住居地域
- 後退距離は、以下のいずれかの数値を特定行政庁が定める。
- 1m
- 1.5m
- 外壁後退の対象となる建築物の部分
- 外壁
- 柱(外壁の代わりとなるもの)
- 以下のいずれかの条件を満たす部分は、外壁後退の制限が免除。
- 後退ラインからはみ出す部分の外壁中心線の長さが3m以下
- 物置等で、以下の両方を満たす部分
- 軒の高さ2.3m
- 後退ラインからはみ出す部分の床面積が5㎡以下







