
- 防火区画について詳しく知りたい。
- 竪穴区画・異種用途区画など防火区画って何種類ある?
- それぞれの区画の基準について一覧表にまとめてほしい。
こんな疑問や要望に答えます。
本記事では、建築基準法における『防火区画』について解説。
防火区画の4つの種別(面積区画・高層区画・竪穴区画・異種用途区画)について、要求される壁・床の基準や防火設備の構造など、全体像をつかむのに役立つと思います。

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住宅から特殊建築物まで、1000件以上の設計相談を受けて得た建築基準法の知識を、できるだけわかりやすくまとめていくので、ご参考までにどうぞ。
『防火区画』とは?【面積・高層・竪穴・異種用途の4つに分類】
『防火区画』とは、建築基準法に定められた、火災時に炎が燃え広がることを防ぐために設けられる壁・床・防火設備による区画のこと。
防火区画は、大きく分けて4つに分類されます。
- 面積区画
- 高層区画
- 竪穴区画
- 異種用途区画
すべての建築物が防火区画の対象となるわけではありません。
建物の用途や規模、耐火建築物等の種別によって、要求される防火区画の基準が変わります。

建築基準法で読むと、わりと難解なので一覧表にまとめたうえで、解説していきます。
防火区画の基準を一覧表でチェック
防火区画の対象となる建築物とそれぞれの区画に必要な構造をまとめると以下のとおり。
✔ 防火区画【一覧表】
防火区画 | 対象建築物(※一部抜粋) | 区画面積 | 区画の床・壁の構造 | 区画の防火設備の種別 |
面積区画 |
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床面積≦1500㎡ | 1時間準耐火構造 | 特定防火設備 |
〃 | 法27条・法61条により、準耐火構造を義務付けられた以下の建築物 | 床面積≦500㎡
(防火上主要な間仕切壁も必要) |
1時間準耐火構造 | 特定防火設備 |
〃 | 法27条・法61条により、準耐火構造を義務付けられた以下の建築物 | 床面積≦1000㎡ | 1時間準耐火構造 | 特定防火設備 |
高層区画 (11階以上) |
一般の建築物 | 床面積100㎡以内ごとに区画 | 耐火構造 | 防火設備 |
〃 | 内装仕上げ・下地: 準不燃材料 (床面から1.2m以上の範囲) |
床面積200㎡ごとに区画 | 耐火構造 | 特定防火設備 |
〃 | 内装仕上げ・下地: 不燃材料 (床面から1.2m以上の範囲) |
床面積500㎡ごとに区画 | 耐火構造 | 特定防火設備 |
〃 | 共同住宅の住戸部分 | 床面積200㎡ごとに区画 | 耐火構造 | 特定防火設備 |
竪穴区画 | 地階 or 3階以上に居室のある以下の建築物
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準耐火構造 | 防火設備(遮煙性能付) |
〃 | 3階が病院、診療所(病室あり)、児童福祉施設等(寝室あり)で以下の建築物
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間仕切壁 | 防火設備(遮煙性能付) |
〃 | 3階がホテル、下宿、共同住宅、寄宿舎で以下の建築物
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間仕切壁 | 戸(ふすま・障子を除く) |
異種用途区画 | 建物の一部が建築基準法27条(別表1)に該当する建築物 | ”法27条(別表1)の用途”と”その他の用途”を区画 | 1時間準耐火構造 | 特定防火設備(遮煙性能付) |
※表の”防火区画対象建築物”は、該当する建物すべてを表記すると難解になるため、主要なものを一部抜粋しています。
防火区画の設計指針となる4つの記事
建築基準法における防火区画は、大別すると4つで、それぞれの基準を理解して設計を進める必要があります。
そこで、面積区画・高層区画・竪穴区画・異種用途区画について、個別記事にまとめました。
4つの記事を読むことで『防火区画』の全体像をつかむことができます。
『面積区画』の設計指針
面積区画を設計するときに重要な下記のポイントについて、面積区画とは|防火設備の種別と緩和方法まとめ(図解あり)という記事で詳しく解説しています。
- 面積区画がかかる建物の規模や基準
- 区画の仕様、防火設備の種別
- 区画を緩和する方法
『高層区画』の設計指針
高層区画の設計に必要となる下記のポイントについて、高層区画とは|壁・床の基準と防火設備の種別を解説という記事で、詳しく解説しています。
- 高層区画の建築基準法における定義
- 高層区画が必要となる建築物
- 高層区画となる壁・床の仕様、防火設備の種別
『竪穴区画』の設計指針
竪穴区画の設計に必要となる下記のポイントについて、竪穴区画とは|区画が必要な建築物・構造・緩和基準を総まとめという記事で、詳しく解説しています。
- 竪穴区画が必要となる建築物
- 竪穴区画の壁・床の仕様、防火設備の種別
- 竪穴区画の緩和方法
『異種用途区画』の設計指針
異種用途区画の設計に必要となる下記のポイントについて、異種用途区画とは?区画の壁と防火設備の基準を解説という記事で、詳しく解説しています。
- 異種用途区画が必要となる建築物
- 建築基準法改正による異種用途区画の基準の変更点
- 異種用途区画が免除されるケース
面積区画・高層区画・竪穴区画には『スパンドレル』が必須
『スパンドレル』とは防火区画に接する外壁で、区画の内側から外側へ、外気を介した炎の回り込みを防ぐ部位のことです。
下記の防火区画を設けた建築物は、スパンドレルが必要となります。
詳しい基準は、スパンドレルとは|防火区画に接する外壁の構造【外部延焼防止帯】という記事で解説していますので、ご参考にどうぞ。

防火区画の設計に役立つ書籍3冊
防火区画の設計を実務で行うには、建築基準法令集を読み込むだけでは不十分。
建築基準法の本文には、防火区画のおおまかな基準が示されているものの、個別具体的な案件に当てはめると判断に迷うケースが出てくるからです。

法令集とセットで利用できる解説本を読みつつ、多面的に検討をすすめましょう。
ここでは、実際に建築設計や確認申請において役立った書籍を3つ紹介します。
建築物の防火避難規定の解説
1冊目は、防火避難規定の解説2023。
建築基準法における防火避難規定について、法律ではカバーできない範囲を解説している1冊。
防火区画を設計するときには、建築関係法令集と防火避難規定の解説2023のセットが必須です。
建築法規PRO|図解建築申請法規マニュアル
2冊目は、建築法規PRO2025 図解建築申請法規マニュアル です。
建築基準法について、図解多めで解説している本。法文そのものを読むよりも、表や図で見る方がイメージがしやすく、実施設計に活かしやすいと思います。

防火区画は建築基準法のひとつのテーマにしか過ぎないので、法律の全体像を学ぶことも大切。
確認申請マニュアル コンプリート版
3冊目は、確認申請マニュアル コンプリート版 2022-23です。
建築確認の申請図書をどのように作成すべきかが書かれている書籍。
防火区画を平面図にどのように表現するか等、具体的に描かれているので、設計図面を作成する段階で役立ちます。
まとめ
- 『防火区画』とは、火災時に炎が燃え広がることを防ぐために設けられる壁・床・防火設備による区画。
- 防火区画は、大きく分けて4つ。
- 面積区画
- 高層区画
- 竪穴区画
- 異種用途区画
- 防火区画の対象となる建築物とそれぞれの区画に必要な構造は一覧表でチェック
- 下記の防火区画を設けた建築物は、スパンドレルが必要。
- 面積区画
- 高層区画
- 竪穴区画
- 防火区画について理解が深まる書籍3冊。