面積区画とは|防火設備の種別と緩和方法まとめ【図解あり】

面積区画とは 防火規定
  • 面積区画が必要となる建物の規模や基準を知りたい。
  • 面積区画の仕様、防火設備の種別が知りたい。
  • 区画を緩和する方法があれば教えてほしい…。

こんな疑問に答えます。

本記事では、建築基準法における『面積区画』の設置基準や免除方法について解説。

床面積が500㎡を超える建物は、面積区画の要否を検討する必要があるため、中規模以上の建築物を計画する設計者にとって役立つ情報かと。

このサイトは、確認検査機関で意匠審査を担当していた一級建築士が運営しています。

1000件以上の設計相談を受けて得た建築基準法の知識を、できるだけわかりやすくまとめていくので、ご参考までにどうぞ。

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面積区画とは

『面積区画』とは、火災時に延焼を防止するための防火区画の一つで、建築物の規模や構造に応じて区画の位置や仕様が決まります。

建物を”防火性能の高い壁・床”や”防火設備”によって分割し、火災を封じ込めることで、被害を最小限にとどめるのが目的。

平面図に面積区画を表現すると、以下のようなイメージです。

 

断面図に面積区画を表現すると、以下のとおり。

防火区画は「壁」と「床」・「防火設備」で炎をさえぎるのが基本。

床の防火区画位置は、断面図で表現すべきですね。

 

面積区画の種類は3つ

面積区画は、建築物の規模と構造種別ごとに3種類に分けられます。

上記は略称です。建築基準法の本文に定義されている言葉ではありません。

 

面積区画の種別・区画の構造【一覧表】

※”区画対象建築物”は、該当する建物すべてを表記すると難解になるため、主要なものを一部抜粋しています。

防火区画 対象建築物(※一部抜粋) 区画面積 区画の床・壁の構造 区画の防火設備の種別
1500㎡
区画
  • 主要構造部を耐火構造とした建築物
  • 準耐火建築物
床面積≦1500㎡ 1時間準耐火構造 特定防火設備
500㎡
区画
法27条・法61条により、準耐火構造を義務付けられた以下の建築物

床面積≦500㎡(防火上主要な間仕切壁も必要) 1時間準耐火構造 特定防火設備
1000㎡
区画
法27条・法61条により、準耐火構造を義務付けられた以下の建築物

床面積≦1000㎡ 1時間準耐火構造 特定防火設備

例えば、1500㎡を超える耐火建築物を設計する際は、1500㎡以内ごとに防火区画を入れなければならないということですね。

 

準耐火建築物の区別がよくわからないという方は、先に準耐火建築物まとめ|『イ-1・イ-2・ロ-1・ロ-2』の基準を解説という記事をご確認ください。

ここからは面積区画の種別ごとに要求される、区画の壁・床の仕様、開口部の防火設備について解説していきます。

 

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1500㎡面積区画(建築基準法|施行令112条1項)

1500㎡面積区画は、建築基準法施行令112条1項に規定されています。

1500㎡面積区画が必要な建築物

  • 主要構造部を耐火構造とした建築物
  • 準耐火建築物
  • 令136条の2第1項による基準適合建築物(延焼防止時間以上)

区画の壁・床の構造

1時間準耐火構造の壁・床で区画すること

区画の防火設備種別

特定防火設備(告示1369号 or 大臣認定EA)

1500㎡面積区画が免除される建築物

  • 劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂、集会場の客席、体育館、工場その他これらに類する用途である建築物の部分
  • 階段室の部分または、昇降機の昇降路部分(乗降ロビーを含む)で一時間準耐火基準に適合する準耐火構造の床、壁、特定防火設備で区画されたもの

 

1000㎡面積区画(建築基準法|施行令112条5項)

1000㎡面積区画は、建築基準法施行令112条5項に規定されています。

1000㎡面積区画が必要な建築物

  • 法27条3項による準耐火建築物イ-1・準耐火建築物ロ-2(主要構造部不燃):特殊建築物用途・規模による制限
  • 法61条による準耐火建築物イ-1・準耐火建築物ロ-2(主要構造部不燃):準防火地域の規定によるもの
  • ”法21条1項””令109条の5”による基準適合建築物(通常火災終了時間が1時間以上のものに限る)
  • ”法27条1項””令110条”による基準適合建築物(特定避難時間が1時間以上のものに限る)
上記のとおり、”建築基準法の制限”で準耐火建築物とした場合に限り、1000㎡ごとの面積区画が必要となります。

逆に言えば、任意で準耐火建築物にした場合は、1000㎡面積区画は不要。1500㎡面積区画の検討のみでOKです。

区画の壁・床の構造

1時間準耐火構造の壁・床で区画すること

区画の防火設備種別

特定防火設備(告示1369号 or 大臣認定EA)

1000㎡面積区画が免除される建築物

以下のいずれかに該当する建築物の部分で、天井と壁の仕上げが準不燃材料であるもの。

  • 体育館、工場その他これらに類する用途
  • 階段室の部分、昇降機の昇降路の部分(乗降ロビー含む)で1時間準耐火構造の床若しくは壁、特定防火設備で区画されたもの

 

500㎡面積区画(建築基準法|施行令112条4項)

500㎡面積区画は、建築基準法施行令112条4項に規定されています。

500㎡面積区画が必要な建築物

  • 法27条3項による準耐火建築物イ-2、 準耐火建築物ロ-1(外壁耐火):特殊建築物用途・規模によるもの
  • 法61条による準耐火建築物イ-2、 準耐火建築物ロ-1(外壁耐火):準防火地域の規定によるもの
  • ”法21条1項””令109条の5”による基準適合建築物(通常火災終了時間が1時間以上のものを除く)
  • ”法27条1項””令110条”による基準適合建築物(特定避難時間が1時間以上のものを除く)
建築基準法による規定によって準耐火建築物にしたものに限り、500㎡ごとの面積区画が必要になります。

区画の壁・床の構造

1時間準耐火構造の壁・床で区画すること

区画の防火設備種別

特定防火設備(告示1369号 or 大臣認定EA)

500㎡区画のみ『防火上主要な間仕切り壁』が必要

500㎡面積区画のみ、500㎡ごとの防火区画とは別に、『防火上主要な間仕切り壁』の設置が必要となります。(自動スプリンクラー設備等の設置部分は除く)

『防火上主要な間仕切り壁』の構造

45分準耐火構造

『防火上主要な間仕切り壁』の設置位置

建築基準法には設置位置が明言されておらず、防火避難規定の解説2023などの参考書籍にも、「面積区画における防火上主要な間仕切壁」の基準は書かれていません。

 

特定行政庁の方と協議していて多いのは、「以下の部分を防火上主要な間仕切り壁としてください」という指導。

500㎡面積区画における「防火上主要な間仕切壁」の設置位置【例】

  • 居室と避難経路を区画する壁
  • 火気使用室とその他の部分を区画する壁

 

上記の間仕切り壁を準耐火構造とし、原則として、小屋裏まで到達させなければいけません。

例外:以下の部分は間仕切壁を小屋裏まで到達することなく、天井でとめることが可能。
・天井の全部が強化天井である階
・準耐火構造の壁で区画された部分で強化天井を設けた部分

ちなみに、間仕切り壁に設置する開口部は、どんな材質でもOK。木製建具でも大丈夫ですよ。

500㎡面積区画が免除される建築物

下記のいずれかに該当する建築物の部分で、天井と壁の仕上げが準不燃材料であるもの。

  • 体育館、工場その他これらに類する用途
  • 階段室の部分、昇降機の昇降路の部分(乗降ロビー含む)で1時間準耐火構造の床若しくは壁、特定防火設備で区画されたもの

 

面積区画の緩和方法

スプリンクラー・水噴霧消火・泡消火設備等で自動式のものを設けた部分については、その床面積の1/2を面積区画の対象から除くことができます。

 

例えば、2000㎡の建築物を計画しているとして、本来であれば1500㎡ごとに面積区画が必要ですよね。

でも、スプリンクラーが建物全体に設置されている場合は、1/2が控除されるので、床面積1000㎡とみなし面積区画が不要。

大規模建築物になると、消防法の規定からスプリンクラー設置を義務づけられるケースが多いので、緩和規定を有効に活用できます。

 

面積区画が免除される建築物の補足事項

面積区画は、以下の通達によって建築基準法に関する補足がされています。

  • 昭和44年3月3日 住指発第26号
    倉庫及び荷さばき施設
  • 昭和46年9月8日 住指発第623号
    卸売市場の用に供する建築物の部分のうち、卸売場、仲買売場等の売場、買荷の保管又は積込等の荷捌場の用途に供する部分
  • 昭和46年12月4日 住指発第905号
    ボーリング場、屋内プール、屋内スポーツ練習場などの主たる用途に供する部分

詳しい内容に興味がある方は、インターネットで検索してみてください。

 

「高い開放性のある庇部分」は面積区画における床面積から除外

「高い開放性のある庇部分」は、面積区画における床面積の算定から除外できます。

つまり、「倉庫1000㎡+庇600㎡=1600㎡」の耐火建築物があったとしても、庇部分はカウントしなくてもよいので、面積区画が不要となります。

これは、防火避難規定の解説2023という書籍で解説されている内容のため、情報源を必ずご確認ください。

 

面積区画について勘違いしやすいポイント

面積区画について意識してほしいポイントが、”任意で準耐火建築物にしている場合は、1500㎡を超えないかぎり面積区画はかからない“ということ。

確認検査機関で事前相談を受けていると、この勘違いがとても多いです。僕もはじめは理解できていませんでした…。

 

「準耐火建築物で500㎡、1000㎡を超えたらどんな建物でも面積区画が必要」というわけではありません。

言い換えると、「建築基準法で準耐火建築物にしなければいけない」という規制がなく、任意で準耐火建築物とする場合は、1500㎡を超えない限り面積区画が不要。

 

例えば、以下のどの建築物に1000㎡面積区画が必要でしょうか。

  1. 準防火地域で500㎡を超えたため”準耐火建築物ロ-2”にした1100㎡の建物
  2. 旅館で、2階部分が300㎡を超えるため”準耐火建築物ロ-2”にした1100㎡の建物
  3. 建築基準法の規制はないが、消防法(消防設備の緩和)などの理由で”準耐火建築物ロ-2”にした1100㎡の建物

答えは、「①と②に面積区画が必要」ですね。

③は任意で準耐火建築物にしているので、1500㎡を超えるまで面積区画の規制がかかりません。

面積区画を設置するかどうかで、部材のコストや施工性に影響するため、正しく基準を理解して設計を進めましょう。

 

面積区画について建築基準法を読んでみる

面積区画は、建築基準法施行令112条1項~6項に書かれています。一度は目を通しておきましょう。

Web上では見づらいと思うので、基本建築関係法令集 〔法令編〕で読むのがおすすめです。

第112条

主要構造部を耐火構造とした建築物、法第2条第九号の三イ若しくはロのいずれかに該当する建築物又は第136条の2第一号ロ若しくは第二号ロに掲げる基準に適合する建築物で、延べ面積(スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、泡消火設備その他これらに類するもので自動式のものを設けた部分の床面積の二分の一に相当する床面積を除く。以下この条において同じ。)が1500㎡を超えるものは、床面積の合計(スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、泡消火設備その他これらに類するもので自動式のものを設けた部分の床面積の二分の一に相当する床面積を除く。以下この条において同じ。)1500㎡以内ごとに1時間準耐火基準に適合する準耐火構造の床若しくは壁又は特定防火設備(第109条に規定する防火設備であつて、これに通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後1時間当該加熱面以外の面に火炎を出さないものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものをいう。以下同じ。)で区画しなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する建築物の部分でその用途上やむを得ない場合においては、この限りでない。

以下省略

 

まとめ

  • 『面積区画』とは、火災時に延焼を防止するための防火区画の一つで、建築物の規模や構造に応じて区画の位置や仕様が決まる。
  • 面積区画の種別ごとに、区画の壁・床の仕様、開口部の防火設備種別は異なる。
  • 任意で準耐火建築物にしている場合は、1500㎡を超えないかぎり面積区画はかからない。