- 準耐火構造でない建築物にも竪穴区画が必要?
- どんな用途・規模の建物が当てはまる?
- 小規模建築物にかかる竪穴区画の構造が知りたい。
こんな疑問に答えます。
竪穴区画は、建築物の用途・規模に応じて3つのパターンがあります。
- 耐火構造、準耐火構造等で3階or地階に居室のあるもの
- 病院・診療所・児童福祉施設等で階数3・延べ面積<200㎡
- 共同住宅・ホテル・寄宿舎で階数3・延べ面積<200㎡
本記事では、②の”病院・診療所・児童福祉施設等で階数3・延べ面積<200㎡”の竪穴区画について解説。
対象となる建築物、区画の構造、設計基準をまとめています。
竪穴区画の全体像が知りたい方は、竪穴区画とは|区画が必要な建築物・構造・緩和基準を総まとめという記事を先にご確認ください。
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竪穴区画②が必要となる建築物
以下のすべてに当てはまる建築物は、竪穴区画が必要です。
- 用途:3階が病院・診療所(病室があるもの)・児童福祉施設等
- 階数:3
- 延べ面積:200㎡未満
ただ、上記に当てはまる場合でも、主要構造部が準耐火構造or耐火構造の建築物は、竪穴区画①の基準が適用されるので注意してください。
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竪穴区画②は平成30年の建築基準法改正によって追加された規定
竪穴区画②は平成30年の建築基準法改正によって追加された規定。
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改正前は階数3以上の病院・診療所・児童福祉施設等は耐火建築物とすることが義務化されていたため、竪穴区画も必須でした。
ところが、法改正によって、床面積200㎡未満の小規模な特殊建築物で一定の条件を満たすものは、耐火建築物が免除されることに。
階数3の特殊建築物なのに、耐火構造が不要、竪穴区画も免除では、防火避難上かなり危険な建物となりますよね。
その結果、耐火構造を免れた建築物に対して、従来の制限とは異なる基準が追加されました。
竪穴区画②の構造
竪穴区画となる壁・開口部の構造は以下のとおり。
- 壁:間仕切り壁
- 開口部:遮煙性能付きの防火設備(20分間の遮炎性能)で以下のいずれかの構造
- 常時閉鎖式
- 常時開放の場合は、以下のいずれかと連動して自動閉鎖するもの
- 煙感知器
- 熱煙複合式感知器
✓ 竪穴区画②の概要
対象となる建築物 | 区画が必要となる部分 | 壁の構造 | 開口部の構造 |
病院・診療所・児童福祉施設等で階数3・延べ面積<200㎡ |
|
間仕切壁 | 防火設備(遮煙性能付き)
|
竪穴区画②は、壁の構造に耐火性能は問われません。
なんらかの壁で区画されていればOK。
逆にいえば、居室などの部屋と一体になった階段や吹き抜けはNGですね。
遮煙性能付きの防火設備とは
「遮煙性能付きの防火設備」とは、”建築基準法2条九号の二ロによる防火設備”で、“遮煙性能を持つもの”です。
①告示仕様・②大臣認定仕様の2種類あり、いずれかを選択。
- 告示仕様の基準:以下の両方を満たすもの
- ”建設省告示1360号”による遮炎性能(20分間)を満たすこと
- ”建設省告示2564号”による遮煙性能をもつこと
- 大臣認定仕様の基準:
CAS-〇〇〇〇の認定を取得した建具であること
出典:文化シャッター
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竪穴区画②の緩和
居室・倉庫などの部分にスプリンクラー設備等を設けた場合は、竪穴区画の開口部の基準が緩和されます。
- スプリンクラー設備あり:防火設備(10分間遮炎性能)の設置
- スプリンクラー設備なし:防火設備(20分間遮炎性能)の設置
スプリンクラー設備は、「水道連結型スプリンクラー設備」を想定。
防火設備は、火災による炎・煙の拡散を防ぎ、避難経路を確保することを目的として建築基準法に規定された設備です。
✓ 主な防火設備
- 防火扉
- 防火シャッター
- 耐火スクリーン
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10分間遮炎性能をもつ防火設備とは
“10分間遮炎性能をもつ防火設備”は、周囲で発生した火災に、10分間は加熱面以外の面に火炎を出さない性能を持つもの。
建築基準法施行令で定めた基準を満たす以下のいずれかの仕様を選びます。
- 告示仕様:国土交通省告示198号
- 大臣認定:EBN010-〇〇〇〇(数字4桁)
告示仕様を採用する場合は、下図のような構造の建具を製作。
出典:国土交通省(平成30年改正建築基準法に関する説明会)資料 P.51
大臣認定として、例えば(株)大林組とコクヨ(株)が共同開発した認定番号EBN010-0001の連装ガラスパーテーションがあります。
竪穴区画②について建築基準法を読む
竪穴区画②の基準は、令112条12項に書かれています。
12 3階を病院、診療所(患者の収容施設があるものに限る。次項において同じ。)又は児童福祉施設等(入所する者の寝室があるものに限る。同項において同じ。)の用途に供する建築物のうち階数が3で延べ面積が200平方メートル未満のもの(前項に規定する建築物を除く。)の竪穴部分については、当該竪穴部分以外の部分と間仕切壁又は法第2条第九号の2ロに規定する防火設備で区画しなければならない。ただし、居室、倉庫その他これらに類する部分にスプリンクラー設備その他これに類するものを設けた建築物の竪穴部分については、当該防火設備に代えて、10分間防火設備(第109条に規定する防火設備であつて、これに通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後10分間当該加熱面以外の面に火炎を出さないものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものをいう。第19項及び第121条第4項第一号において同じ。)で区画することができる。
10分間防火設備を使用する場合は、告示198号を確認しましょう。
建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第112条第11項ただし書の規定に基づき、10分間防火設備の構造方法を次のように定める。
以下省略
まとめ
- 竪穴区画は、建築物の用途・規模に応じて3パターン。
- 耐火構造、準耐火構造等で3階or地階に居室のあるもの
- 病院・診療所・児童福祉施設等で階数3・延べ面積<200㎡
- 共同住宅・ホテル・寄宿舎で階数3・延べ面積<200㎡
- 本記事は、”②病院・診療所・児童福祉施設等で階数3・延べ面積<200㎡”の竪穴区画を解説。
- 以下のすべてに当てはまる建築物は、竪穴区画が必要。
- 用途:3階が病院・診療所(病室があるもの)・児童福祉施設等
- 階数:3
- 延べ面積:200㎡未満
- 竪穴区画の構造
- 壁:間仕切り壁
- 開口部:遮煙性能付きの防火設備(20分間の遮炎性能)で以下のいずれかの構造
- 常時閉鎖式
- 常時開放の場合は、以下のいずれかと連動して自動閉鎖するもの
- 煙感知器
- 熱煙複合式感知器
- 遮煙性能付きの防火設備は、いずれかを選択。
- 告示仕様:以下の両方を満たすもの
- ”建設省告示1360号”による遮炎性能(20分間)
- ”建設省告示2564号”による遮煙性能
- 大臣認定仕様:CAS-〇〇〇〇
- 告示仕様:以下の両方を満たすもの
- 居室・倉庫などにスプリンクラー設備等を設けた場合は、開口部の基準が緩和
- スプリンクラー設備あり:防火設備(10分間遮炎性能)
- スプリンクラー設備なし:防火設備(20分間遮炎性能)