- 準耐火建築物(イ-1)ってなに?
- 木造3階建て共同住宅(木三共)の設計に必要?
- 延焼ライン内の窓に防火設備がいる?
こんな疑問に答えます。
本記事では、準耐火建築物(イ-1)の主要構造部と開口部の基準について解説。
「耐火建築物としない木造3階建て共同住宅(=木三共)」の設計において必須の知識です。
このサイトは、確認検査機関で意匠審査を担当していた一級建築士が運営。
住宅から特殊建築物まで1000件以上の設計相談を受けて得た建築基準法の知識を、できるだけわかりやすくまとめていくので、ご参考までにどうぞ。
準耐火建築物(イ-1)とは
準耐火建築物(イ-1)とは、建築基準法2条に定められた、以下の基準を満たす建物です。
- 主要構造部:1時間準耐火基準に適合する準耐火構造
- 延焼のおそれのある開口部:防火設備(建築基準法2条九の二号ロ)
「木三共=木造3階建て共同住宅」の計画や「面積区画を設けたくない」といった理由で、準耐火建築物(イ-1)の設計をすることが多いですね。
【Q&A】なぜ「イ-1」と呼ぶ?
主要構造部:準耐火構造(1時間準耐火基準)
準耐火建築物(イ-1)は、主要構造部を「1時間準耐火以上の性能をもつ耐火被覆」で覆います。
つまり、火災がおきてから1時間、建物が倒壊したり、周囲に延焼しない性能をもつわけですね。
主要構造部ごとに異なる準耐火時間を一覧表にまとめました。
主要構造部 | 準耐火時間 |
外壁(耐力壁) | 60分間 |
外壁(非耐力壁):延焼のおそれのある部分 | 60分間 |
外壁(非耐力壁):一般部分 | 30分間 |
間仕切壁(耐力壁) | 60分間 |
柱 | 60分間 |
梁 | 60分間 |
床 | 60分間 |
屋根 | 30分間 |
階段 | 30分間 |
軒裏(延焼のおそれのある部分) | 60分間 |
1時間準耐火基準を満たすには、告示仕様か大臣認定仕様のいずれかを選択。
- 告示仕様:建築基準法の国土交通省告示第195号に適合するもの
- 大臣認定仕様:耐火被覆の仕様ごとに、大臣の認定を受けたもの
告示仕様:国土交通省告示第195号
告示仕様の場合は、主要構造部それぞれに国土交通省告示第195号による耐火被覆をほどこします。
条文を見てみましょう。
国土交通省告示第195号
建築基準法施行令第112条第2項の規定に基づき1時間準耐火基準に適合する主要構造部の構造方法を定める件を次のように定める
一時間準耐火基準に適合する主要構造部の構造方法を定める件
以下省略
詳しくは、国土交通省サイトの一時間準耐火基準に適合する主要構造部の構造方法を定める件(令和元年国土交通省告示第195号)または、建築関係法令集の告示編をご確認ください。
大臣認定仕様:「QF060~」の認定を取得したもの
大臣認定仕様は「QF060BE-####」のように、主要構造部ごとに、それぞれ仕様の異なる認定番号がわり振られています。
個別に”大臣認定書”が発行されており、記載内容をまもって設計・施工しなければいけません。
延焼のおそれのある開口部:防火設備(法2条九の二号ロ)
延焼ラインにかかる開口部の防火設備(建築基準法2条九の二号ロ)は、以下のいずれかを選択。
- 告示仕様:建築基準法の建設省告示第1360号に適合すること
- 大臣認定仕様:サッシの種別ごとに大臣認定(EB-####)を受けているもの
告示仕様:建設省告示第1360号
防火設備の告示仕様は、建設省告示第1360号で定められています。
たとえば、鋼製建具であれば0.8㎜以上の厚みを確保し、炎が入り込むようなすき間のないものを製作しなければなりません。
告示の仕様を満たしているかどうかは、建具の構造詳細図でチェック。
平成12年5月24日建設省告示第1360号
防火設備の構造方法を定める件
建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第二条第九号の二ロの規定に基づき、防火設備の構造方法を次のように定める。
第一 建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)第百九条の二に定める技術的基準に適合する防火設備の構造方法は、次に定めるものとする。
〈中略〉
第二 第一に定めるもののほか、防火戸が枠又は他の防火設備と接する部分は、相じゃくりとし、又は定規縁若しくは戸当りを設ける等閉鎖した際にすき間が生じない構造とし、かつ、防火設備の取付金物は、取付部分が閉鎖した際に露出しないように取り付けなければならない。
条文をすべて掲載すると長くなってしまうので、一部を抜粋しています。必ず基本建築関係法令集 〔法令編〕で確認してください。
大臣認定仕様:EBまたはEA
防火設備の大臣認定は、火災時に炎をさえぎる性能によって3つに区分されます。
- EA
- EB
- EC
種類 | 防火設備 | ||
---|---|---|---|
特定防火設備 | |||
大臣認定コード | EA | EB | EC |
要件 | 加熱面以外の面に火炎を出さない | 加熱面以外の面に火炎を出さない | 加熱面以外の面に火炎を出さない |
遮炎時間 | 1時間 | 20分間 | 20分間 |
火災の種類 | 建築物の屋内または周囲で発生する通常の火災 | 建築物の屋内または周囲で発生する通常の火災 | 建築物の周囲で発生する通常の火災 |
性能 | 遮炎性能 | 遮炎性能 | 準遮炎性能 |
主な設置場所 | 防火区画 | 耐火建築物または準耐火建築物の外壁の開口部で延焼のおそれのある部分 | 防火地域または準防火地域内の建築物の外壁の開口部で延焼のおそれのある部分 |
関係法令 | 令第112条第1項 | 法第2条第九号二/口 令第109条の2 |
法第61条 令第136条の2 |
準耐火建築物(イ-1)には、表に記載されている「EB」もしくは「EA」の認定を受けた防火設備を使用します。
遮炎時間20分の防火設備は、サッシの種別ごとに「EB-####」などの通し番号が割り振られているため、サッシメーカーのWebサイトやカタログで調べましょう。
確認申請の提出時は大臣認定番号の表示がもとめられます。
まとめ
- 準耐火建築物(イ-1)は、以下の基準を満たすもの。
- 主要構造部:準耐火構造(1時間準耐火性能)
- 延焼ライン内の開口部:防火設備(建築基準法2条九の二号ロ)
- 1時間準耐火構造は、以下のいずれかを選択。
- 告示仕様:国土交通省告示第195号
- 大臣認定仕様:QF060○○-####
- 延焼ライン内の防火設備は、以下のいずれかを選択。
- 告示仕様:建設省告示第1360号によるもの
- 大臣認定仕様:EB-####
人気記事 転職3回の一級建築士が語る。おすすめ転職サイト・転職エージェント