
- 階段の手すりを設計するときの基準は?
- 建築基準法でのルールはある?
- 利用者別の最適な手すり高さが知りたい。
こんな疑問や要望に応えます。
本記事では、階段の手すりの基準についてわかりやすく解説。
階段の手すりの設置位置、材質、取り付け方法など、建築設計において欠かせない知識が身につきます。

このサイトは、確認検査機関で審査を担当していた一級建築士が運営。
住宅から特殊建築物まで1000件以上の設計相談を受けた経験をもとに、建築知識をわかりやすくまとめていきます。ご参考までにどうぞ。
階段の手すりの基準
建築基準法における階段の手すりに関するルールをまとめると以下のとおり。
- 手すり設置の義務:階段には、手すりを設けなければなりません。
- 側壁(そくへき)の設置:階段およびその踊り場の両側(手すりが設けられた側を除く)には、側壁またはこれに代わるものを設けなければなりません。
- 幅3mを超える階段は中間手すりを設置:階段の幅が3mを超える場合は、階段の中間にも手すりを設ける必要があります。ただし、けあげが15cm以下で、かつ、踏面が30cm以上の緩やかな階段の場合は免除。
- 高さ1m以下の免除:高さが1m以下の階段の部分については、上記の手すり等の設置義務は免除されます。
階段の手すりの高さに基準はない
建築基準法において、手すりの「高さ」に関する具体的な数値基準は定められていません。

階段には手すりを設けなければならないとされていますが、高さの数値基準はありませんね。
利用者の身体を基準にして高さを決める方法
手すり高さの決め方として実務上よく使われるのが、利用者の「大転子(だいてんし)」を基準にする方法です。
直立した状態でこの大転子の位置を測り、その高さ付近に手すりを設定すると、力を入れやすく安定した昇降が可能に。
成人の場合、大転子の高さはおおむね身長の45〜47%程度。身長170cmの方であれば765mm〜800mm前後が目安となります。
【利用者別】最適な「階段の手すりの高さ」の目安
実際の設計では「誰が使うか」を起点に最適な高さを決めることになります。
利用者別に推奨される手すり高さの目安を知っておきましょう。
一般的な「階段の手摺りの高さ」の目安
一般的な住宅の階段手すりの高さは、段鼻(踏面の先端)から手すり上端まで750mm〜850mmです。
この数値は、成人が階段を昇降するときに、手すりを自然に握れる高さとするもの。 手すりが肘よりやや低い位置にくることで、腕に負担をかけず、体重を支えやすくなります。

住宅メーカーの多くは、800mmを標準的な取り付け高さとして推奨していますね。
迷った場合はまず800mmで検討するとよいでしょう。
子どもにとって最適な手すりの高さ
子どもが利用する階段では、段鼻から手すり上端まで500mm〜600mmが目安とされています。
大人用の手すり(750mm〜850mm)は、小さな子どもにとっては高すぎて手が届かなかったり、届いても腕を上げた不自然な姿勢になるので、体を支えることができません。

子どもの転落事故を防ぐためには、身長に合った高さの手すりを用意することが重要ですね。
✓ 子どもの大転子の高さを基準にした年齢別の目安
| 年齢の目安 | 身長の目安 | 推奨される手すり高さ |
| 3〜4歳 | 約95cm〜105cm | 450mm〜500mm |
| 5〜6歳 | 約105cm〜115cm | 500mm〜550mm |
| 7〜9歳 | 約115cm〜135cm | 550mm〜600mm |
| 10〜12歳 | 約135cm〜155cm | 600mm〜700mm |
大人用の手すりの下に、子ども用の手すりをもう1本追加する「2段手すり」も有効です。子どもの成長に関わらず大人も子どもも安全に階段を利用することが可能に。

保育施設や小学校などは、2段手すりの設置が設計指針として推奨されていますね。
ちなみに、手すり子の間隔にも注意しましょう。
子どもの頭が入り込まないよう、間隔は110mm以下にすることが基本です。
高齢者にとって最適な手すりの高さ
高齢者が利用する階段では、段鼻から手すり上端まで700mm〜800mmが目安です。
一般的な成人の基準よりやや低めに設定するのがポイント。
高齢になると、筋力が低下し、階段での転倒リスクが増加します。
手すりが高すぎると、体重をしっかりと預けることができません。
やや低めの位置に設定することで、手すりを上から握り込み、体を引き上げたり支えたりする動作がしやすくなります。
✓ バリアフリー関連の設計指針
| 基準・指針 | 推奨高さ |
| バリアフリー法(誘導基準) | 750mm〜850mm |
| 高齢者向け住宅設計指針 | 700mm〜800mm |
| 2段手すりの場合(下段) | 600mm〜650mm |

高齢者の階段手すりでは高さに加えて連続性も重要。
階段の始まりと終わりで手すりが途切れていると、最も体勢が不安定になる「昇り始め」と「降り終わり」で支えを失うことに。
手すりは階段の前後に200mm〜300mm程度の水平部分を延長して取り付けると、安全性が大きく向上します。
階段の手すりの位置【右、左、両側?】
建築基準法において、階段の手すりを左右どちらに付けるかの規定はありません。
実務においては、手すりの位置は「降りるときに利き手で握れる側」に設置するのが基本ですね。
理由は、階段事故の大半は「降りるとき」に発生するから。
日本人の約9割が右利きとされているため、住宅の多くでは降りるときの右側に手すりが設置されています。
両側への手すり設置が推奨されるケース
以下のような場合は、階段の両側に手すりを設けた方がいいでしょう。
✓ 高齢者が利用する施設
筋力やバランス能力の低下によって、昇り・降りの両方で手すりが必要になります。
片側だけでは、昇りまたは降りのどちらかで利き手側へ手すりがない状態に。

両側に設置することで常に利き手で握ることができます。
✓ 階段幅が広い場合
有効幅が広い階段では、手すりまでの距離が遠くなりがち。
両側に設置すれば、どの位置を歩いていても手すりに手が届きやすくなります。
ちなみに、建築基準法では幅が3mを超える階段には中間にも手すりを設けることが義務付けられています。
手すりの太さと形状の選び方
手すりの断面形状と太さについて、まとめると以下のとおり。
✓ 推奨される太さ
- 住宅での標準:直径32mm〜35mm
- 手の小さな方や高齢者:32mm
- 手の大きな方:35mm
✓ 断面形状
丸型が一般的です。
「楕円型」や下部がフラットな「楕円かまぼこ型」は、手を滑らせながら移動しやすく、手首への負担も軽減できますね。
✓ 素材
木製が手触り・温度感ともに優れており、住宅では最も多く採用されています。
ステンレスやアルミは屋外階段向きですが、冬場に冷たくなる点に注意が必要。

樹脂被覆のものは滑りにくく、屋外でも有効です。
手すりの取り付け方法
手すりの取り付け方法について、ポイントは以下のとおり。
- 下地への固定
- ブラケット(受け金具)の間隔
- 端部の処理【引っ掛かり防止】
- 壁との間隔(クリアランス)
それぞれの項目について詳しく解説していきます。
下地への固定
手すりの安全性は、壁の下地にしっかり固定されているかどうかで決まります。
石膏ボードにビスを打つだけでは、十分な強度は得られません。
手すりには体重がかかる場面が多いため、壁内部の間柱(通常455mmピッチ)や補強用の下地合板にビスを効かせることが不可欠ですね。
ブラケット(受け金具)の間隔
手すりを支えるブラケットの取り付け間隔が広すぎると、手すりにたわみが生じ、体重をかけた際にぐらつきます。
- 推奨間隔:600mm〜900mm以内
- ブラケットは必ず下地のある位置に取り付ける
- 階段の始まり・終わり・曲がり部分にはブラケットを追加する
特に、手すりの端部(始点・終点)は力が集中しやすいので、ブラケットを必ず設置しましょう。
端部の処理【引っ掛かり防止】
手すりの端部が壁から突き出た状態で切りっぱなしになっていると、衣服の袖口やポケットが引っ掛かり、転倒の原因になります。
端部の処理方法として推奨されるのは以下のとおり。
- 壁側に曲げ込む(エンドブラケット):端部を壁面に向けて曲げて納める方法。最も安全性が高い。
- 下方に曲げ込む:端部を下向きに曲げて床方向に納める方法。壁が近くにない場合に有効。

特に、高齢者や子どもが利用する階段では、壁側への曲げ込み処理とすべきですね。
手すりの連続性を確保する
踊り場部分も含め、手すりは可能な限り連続させます。
折り返し部分で連続が難しい場合は、手すり同士の途切れを最小限(100mm以内)にしましょう。
壁との間隔(クリアランス)
手すりと壁面の間隔が狭すぎると、手を差し込んで握ることができません。
逆に広すぎると、子どもの腕が挟まるリスクが高まります。
- 推奨クリアランス:壁面から手すり中心まで35mm〜50mm
- 手すりの直径が35mmの場合、壁面から手すり内側までの隙間は約17mm〜32mm
階段の手すりについて建築基準法を読む
階段の手すりの設置基準を定めているのは、建築基準法施行令25条です。
「建築基準法を読みたくない」という方は、建築法規PRO2026 図解建築申請法規マニュアルや建築申請memo2026といった書籍で、図や表を見て理解を深めていきましょう。
(階段等の手すり等)
第二十五条
階段には、手すりを設けなければならない。
2 階段及びその踊場の両側(手すりが設けられた側を除く。)には、側壁又はこれに代わるものを設けなければならない。
3 階段の幅が三メートルをこえる場合においては、中間に手すりを設けなければならない。ただし、けあげが十五センチメートル以下で、かつ、踏面が三十センチメートル以上のものにあつては、この限りでない。
4 前三項の規定は、高さ一メートル以下の階段の部分には、適用しない。
まとめ
- 建築基準法における階段の手すりに関する基準
- 手すり設置の義務
- 側壁の設置
- 幅3mを超える階段は中間手すりを設置
- 高さ1m以下の手すり設置免除
- 手すりの最適な高さ(踏面の先端から手すり上端まで)
- 一般的な住宅:750mm〜850mm
- 子どもが利用する施設:500mm〜600mm
- 高齢者が利用する施設:700mm〜800mm
- 建築基準法において、階段の手すりは左右どちらかにあればOK。
- 推奨される手すりの太さ
- 住宅での標準:直径32mm〜35mm
- 手の小さな方や高齢者:32mm
- 手の大きな方:35mm
- 手すりの取り付けに関するポイント
- 下地への固定
- ブラケットの間隔
- 端部の処理
- 壁との間隔
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