
- 2018年9月に改正された建築基準法について、建築設計に影響が出そうなポイントを知りたい。
- 建築基準法の改正情報を正しく理解して、トレンドをふまえた設計がしたい。
こんな悩みに答えます。
本記事では、2018年9月に施行された建築基準法改正のポイントを解説。
読んで頂ければ、2018年9月に改正された法律の概要をつかむことができ、ポイントを押さえた設計に取り組めるようになるかと。
とくに設計に影響を与える可能性が高い法改正内容を4つ抜粋しました。
✔ 建築基準法改正のポイント
- その①:木造の特殊建築物における外壁の制限を廃止
- その②:老人ホーム等の共用廊下における容積率免除
- その③:日影規制の特例許可の再申請不要【主に増築】
- その④:宅配ボックス部分の容積率緩和
確認検査機関で働いた経験や、法改正の講習会に参加して得た知識をもとに作成しているので、ご参考までにどうぞ。
建築基準法改正の目的|2018年(平成30年)9月施行分
まずは、法改正の目的を知っておきましょう。

”政府が何を推進するために法律を改正したのか”、その主旨を理解しておいた方が、改正内容が頭に入りやすく、間違った法解釈をする危険性も少なくなります。
✔ 2018年度 建築基準法改正の3つの目的
- 建築物・市街地の安全性の確保
- 既存建築ストックの活用
- 木造建築を巡る多様なニーズへの対応
上記3つの目的を達成するために、建築基準法が一部改正されています。
改正その①:木造の特殊建築物における外壁の制限を廃止
法改正前は、木造の特殊建築物で一定の規模を超えると、外壁を防火構造にしなければいけない、という制限がありました。
今回の改正の目的である「木造建築を巡る多様なニーズへの対応」を達成するために、”木造の特殊建築物における外壁等(建築基準法24条)”の規定を廃止しています。
出典:建築基準法の改正について-国交省
法24条の改正により『異種用途区画』が緩和
個人的に大きいと感じたのが、法24条の規定が削除されたことによって、異種用途区画が緩和されたことですね。
自動車車庫が50㎡を超えたり、倉庫が2階以上かつ200㎡を超えていると、異種用途区画が必要でした。
今回の法改正によって、異種用途区画のかかる建物用途・規模の範囲が狭くなり、一部緩和されています。
法改正によって削除された条文|建築基準法施行令112条12項
もともと、建築基準法施行令112条12項に書かれていた異種用途区画に関する内容が一部削除されて、現在は令112条13項の条文が12項にずれています。
2018年9月の法改正前は、「以下の用途・規模にあてはまる建築物の部分」と「その他の部分」は異種用途区画が必要でしたが、現在は区画不要。
✔ 建築基準法改正によって、異種用途区画が不要となった用途・規模
用途 | 規模 | |
① | 学校、劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂、集会場、マーケット、公衆浴場 | 規定なし |
② | 自動車車庫 | 50㎡超 |
③ | 百貨店、共同住宅、寄宿舎、病院、倉庫 | 階数2かつ200㎡超 |

例えば、”車庫付きの事務所”などを設計するときに、車庫面積が50㎡を超えたとしても異種用途区画が不要。
『異種用途区画』の基準を詳しく知りたい方は、【防火区画】異種用途区画とは?区画の壁と防火設備の基準を解説という記事をどうぞ。
改正その②:老人ホーム等の共用廊下における容積率免除
これまで共同住宅でしか許されていなかった共用廊下部分の容積率緩和が、法改正によって老人ホームでも適用できるようになりました。

老人ホームを計画している建築主や設計者にとっては嬉しい知らせですね。
出典:建築基準法の改正について-国交省
確認申請書第三面に容積率緩和の項目として追加されているので、忘れずに記入しましょう。

建築基準法52条|容積率の条文を読んでみる
建築基準法52条(容積率)には以下のように記載されています。
(容積率)
第52条
前略
6 中略
建築物の容積率の算定の基礎となる延べ面積には、政令で定める昇降機の昇降路の部分又は共同住宅若しくは老人ホーム等の共用の廊下若しくは階段の用に供する部分の床面積は、算入しないものとする。
改正その③:日影規制の特例許可の再申請不要【主に増築】
主に”増築”を計画するときに、設計スケジュールの短縮が図れる緩和ですね。
「日影規制における特例許可」というのは、ふつうに検討すると日影規制でNGとなる建物に対して、相応の理由があり、行政に認められれば制限を免除するというものです。
法改正前までは、増築を行うときに既存建物が日影規制の特例許可を得ていた場合、増築時にも特例許可を再申請しなければいけませんでした。
今回の改正によって、”日影規制に影響を与えない範囲の増築であれば、特例許可を新たに申請し直す必要がない”とされています。
出典:建築基準法の改正について-国交省

特例許可を受けるには、建築審査会の同意が必要。かなりの日数を要するため、許可不要になれば設計の手間やスケジュールが大幅に短縮されますね。
例えば、大規模建築物のある敷地に、小さな物置だけを増築するときとか、今回の法改正を利用できるかもしれません。
その④:宅配ボックス部分の容積率緩和
共同住宅を主に設計している方にとって、嬉しい緩和。
宅配ボックスを設置する部分と物を出し入れする空間を容積率から除外できます。
おそらく「共用廊下に宅配ボックスを設置したいけど、容積率がギリギリなので設置できない」という声が多かったのかと。
容積率を緩和できる範囲は以下のとおり。
確認申請書第三面に宅配ボックスとして緩和する床面積を書くのを忘れずに。

まとめ
建築基準法改正の情報が掲載された国土交通省のWebサイトへのリンクは下記。必ず目を通しておいてください。
- 2018年度 建築基準法改正の3つの目的
- 建築物・市街地の安全性の確保
- 既存建築ストックの活用
- 木造建築を巡る多様なニーズへの対応
- 建築基準法改正のポイント
- その①:木造の特殊建築物における外壁の制限を廃止
- その②:老人ホーム等の共用廊下における容積率免除
- その③:日影規制の特例許可の再申請不要【主に増築】
- その④:宅配ボックス部分の容積率緩和