
- 確認申請がスケジュール通りに進まなかった…。
- 確認済証がないと着工できない…どんな作業が”工事の着手”とみなされる?
- 地盤改良は『着工』にあたるってホント?
こんな疑問に答えます。
本記事では、建築基準法上の『着工』に、どのような工事が当てはまるかを具体的に解説。
確認済証の交付前に「どんな工事は施工可能で、どの作業はダメなのか」設計者自身で判断できるようになります。

このサイトは、確認検査機関で意匠審査を担当していた一級建築士が運営。
1000件以上の設計相談を受けて得た建築基準法の知識を、できるだけわかりやすくまとめていくので、ご参考までにどうぞ。
建築基準法における『着工』とは
『着工』とは、一般的に言えば、「建物の工事を始めること」です。
では、「具体的にどの工事を始めると着工になるのか?」ここが重要。
”工事の着手”に該当する工事は、”集団規定の適用事例”という書籍で紹介されていて、代表的なものを抜粋すると以下のとおり。
✔️『着工』にあてはまる工事
- 杭打ち工事
- 地盤改良工事
- 山留め工事
- 根切り工事
設計者の方からよく質問を受ける「地盤改良」も着工とみなされるので、確認済証の交付前に実施するのはNG。
逆に、工事の着手とみなされない行為の例も以下に記載しておきます。下記の作業であれば、確認申請の前に開始してOKです。
✔工事の着手に当てはまらない行為の例
- 地盤調査のための掘削、ボーリングの実施
- 現場の整地、やり方
- 地鎮祭
- 現場の仮囲いの設置
- 現場事務所の建設
- 既設建物の除却
- 現場への建設資材、建設機械の搬入
「確認済証が交付される前に着工すると建築基準法違反」というのは良く知られています。
ただ、「どの作業が着工とみなされるか」は意外と知られていません。
確認検査機関で相談窓口に出ていると、こんなやりとりがよくあります。

確認済証ってまだおりませんよね…?工期が厳しいので、掘削して土留めまで済ませておきたいんですけど、着工になりませんよね?

「土留め」は工事の着手とみなされますよ。確認済証が交付される前に実施してはいけません。

えっ…。具体的に着工の定義ってあるんですか?

ありますよ。”集団規定の適用事例”という書籍を読んでみてください。
”建築確認のための基準総則・集団規定の適用事例”は、タイトル通りですが、建築基準法の集団規定について解説した本です。
控えめに言っても、建築設計において必須の書籍ですので、持っていない方は速やかに入手すべきかと。
ちなみに、Amazonや楽天などでは販売されていないため、一般財団法人建築行政情報センターのホームページから購入することになります。
なぜ確認済証交付前に『着工』してはいけない?
確認申請が終わっていない段階で、工事に着手するのは建築基準法における手続き違反となります。
法文でいうと、建築基準法6条ですね。
建築物を建てるにあたって、建築主事や確認検査機関の審査を受けてからでないと、工事に着手してはいけないことが基本建築関係法令集〔法令編〕令和3年版で定められています。
建築基準法6条で『工事の着手』について読んでみる
(建築物の建築等に関する申請及び確認)
第6条
建築主は、第一号から第三号までに掲げる建築物を建築しようとする場合
中略
当該工事に着手する前に、その計画が建築基準関係規定(この法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定(以下「建築基準法令の規定」という。)その他建築物の敷地、構造又は建築設備に関する法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定で政令で定めるものをいう。以下同じ。)に適合するものであることについて、確認の申請書を提出して建築主事の確認を受け、確認済証の交付を受けなければならない。
以下省略
まとめ
建築現場はスケジュールがシビアなので、少しでも早く工事に取り掛かりたいですよね…。
「何をすると着工に該当するのか、その根拠はどこに書かれているのか」、本記事でわかって頂けたと思います。
事前着工は、建築基準法違反ですし、絶対にダメ。
僕の知る限りでも、確認済証の交付前に建物の基礎を打っていて、近隣住民から行政に通報が入り、すべて取り壊すよう是正指導をうけた業者がいます。

「ばれないから大丈夫」と自分では思っていても、誰が現場を見ているかわかりません。
家の近くの工事現場って案外気になるもので、建築知識を持った人であれば、正しい手続きを踏んで工事をしているかは簡単にわかります。
建物が完成する前から、周りの住民に変な目で見られて、住み心地が悪くなるのは施主です。
着工の定義を理解し、建築士としての自覚を持った行動をとりましょう。