『防火区画』が必要な建築物を設計するとき、設計図書にどのように表現すべきでしょうか。
確認申請をスムーズに、最短期間でとおすためにも、確認検査機関から指摘を受けない図面にしたいですよね。
確認検査員が見て「設計者の意図を読み取りやすい図面」を作成するのが一番の近道。
この記事では、確認検査機関で1000件以上審査した経験から、さまざまな設計事務所を比較して見やすいと感じた設計図書の表現を紹介しています。
確認申請で審査しやすい『防火区画』の図面表現とは
『防火区画』は、建築基準法施行令112条に定められており、面積区画・高層区画・竪穴区画・異種用途区画の4種類があります。
確認申請における審査で、防火区画は最も重要な項目のひとつ。

防火避難規定は、居住者の人命に直結するということもあり、厳しい目で審査を行っています。
確認検査機関の検査員が、防火区画の審査で確認している内容
確認検査員は、防火区画について審査するときに、以下の内容が建築基準法に適合しているかどうかを確認しています。
- 防火区画の種別は正しいか?
(面積区画・高層区画・竪穴区画・異種用途区画) - 防火区画の位置は正しいか?
- 防火区画の構造・仕様は正しいか?
- スパンドレル(令112条10項)は設けられているか?
- 防火区画の設備配管の貫通処理を行っているか?
- 防火区画を設備配管が貫通するときの処理方法は適切か?
防火区画の設計内容を記載すべき図書
『防火区画』の種別・位置・仕様は、設計図書の以下の書類に明示しておきましょう。
- 平面図:防火区画の種別・位置を示す
- 断面図:防火区画の種別・位置を示す
- 主要構造部の詳細図:防火区画の構造・仕様を示す
- 建具表:防火区画の構造・仕様を示す
- 設備配管図:防火区画貫通位置を示す
- 系統図:防火区画貫通位置を示す
『防火区画』を計画したときの設計図書の書き方
防火区画を計画したときの設計図書の書き方を紹介していきます。
あくまでも参考事例ですが、確認検査機関で審査をしてきたなかで、見やすく、わかりやすかった図面表現です。
平面図に防火区画の位置・種別を示す
平面図には防火区画の位置と種別を示します。
壁にハッチングで、防火区画の位置を記載。凡例で区画の種別を表示するとわかりやすいですね。
断面図に防火区画の位置・種別を示す
断面図にも平面図と同様に防火区画の位置と種別を表示します。
平面図だけでなく、断面図にも区画を表示する意図は、以下のとおり。
- 床の防火区画位置を表示
- 防火区画の壁が小屋裏と天井裏まで達していることを明示
耐火リスト(主要構造部の詳細図)に防火区画の壁、床の仕様を書く
耐火建築物や準耐火建築物を設計する際に、耐火リストと呼ばれる「主要構造部の構造・仕様を示す詳細図を作成して添付しますよね。
その耐火リストに、防火区画の断面仕様を表示しておきましょう。
各主要構造部ごとの耐火構造等の告示番号や大臣認定番号が正しいかどうか、確認検査員が審査します。
建具表に防火区画の防火設備仕様を書く
防火区画に位置する開口部は、防火設備・特定防火設備としなければいけません。
さらに、防火区画の種別によって、必要となる防火設備の性能が変わります。
例えば、竪穴区画であれば、開口部は「防火設備(遮煙性能付き)」が必要。
異種用途区画であれば、「特定防火設備(遮煙性能付き)」が必要という具合です。
各防火区画に求められる防火設備の性能ごとに、告示仕様か大臣認定仕様かを選択。
具体例として、竪穴区画の「防火設備(遮煙性能付き)」仕様であれば、いずれかで設計する必要があります。
- 告示仕様は、遮炎性能が建設省告示第1360号・遮煙性能が建設省告示第2564号
- 大臣認定仕様は、CAS-1234というように「CAS認定」を取得した防火設備
防火区画にある開口部が、告示仕様か、大臣認定仕様かを建具表で明確にしましょう。
設備配管図に防火区画位置を表示
平面的に配管がどのように整備されているかが確認できる、各種設備の配管図に防火区画の貫通位置を明示し、貫通処理方法を記載します。
設備図面の記載方法については、『確認申請マニュアル コンプリート版』という書籍が参考になります。
具体的な図面の作成例も書かれていますので、確認申請を提出する際は、ぜひ参考にしてみてください。
設備配管系統図に防火区画貫通位置を表示
各種設備配管の系統図に、防火区画となる床を貫通する位置と、貫通した部分の処理方法を表示しましょう。
まとめ
- 確認検査機関の検査員が、防火区画の審査で確認している内容を理解する
- 『防火区画』の種別・位置・仕様がわかるよう図面に明示する
- 設備図面の記載方法については、『確認申請マニュアル コンプリート版』という書籍を参考にする