- 断面二次モーメントって何?
- どうやって計算する?
- 図を使って説明してほしい。
こんな悩みに答えます。
本記事では『断面二次モーメント』の意味や計算方法について詳しく解説。
断面二次モーメントは、材料の曲げにくさを示す値で、たわみの計算等に必要となります。
✔️ 本記事の内容
- 断面二次モーメントの定義
- 計算方法
- 公式
- 荷重に強い断面とは
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断面二次モーメントとは【部材の曲げにくさを示す値】
断面二次モーメントとは「曲げにくさ(曲げる力への抵抗性)」を示す値です。
曲げに対する強さ(曲げ剛性)は、断面の形によって決まるもの。
✔️ 計算式
- 曲げ剛性=E×I
- E=材料の強さ
- I=断面二次モーメント
断面二次モーメントを求めれば「材料が曲げモーメントにどのくらい耐えられるか」を判断できます。
断面二次モーメントが大きければ大きいほど、曲げにくい材料といえますね。
断面二次モーメントの計算方法
断面二次モーメントの計算式は以下のとおり。
「^(ハット)」は乗数を示す記号。二乗は「^2」と書きます。
たとえば台形は、細かく分割して断面二次モーメントを求め、最後に合計します。
計算式「I=A×y ^2」に着目してください。
断面積Aはそのまま、距離yは二乗してますね。
Iは「断面積Aが大きくなる」よりも、「断面積が軸から遠くに離れる(=距離yが伸びる)」方が大きくなるとわかります。
公式
断面二次モーメントには、一定の形でのみ使える公式があります。
- 長方形:I=bh^3/12
- 円形:I=πd^4/64
- 円筒形:I=π(D^4-d^4)/64
※長方形の幅b、高さh。円形、円筒形の外形D。円筒形の内法寸法d。
たとえば、資格試験で計算問題を解かないといけない場合は、公式を覚えておくと便利です。
長方形断面の場合
上から荷重がかかる長方形断面の場合、断面二次モーメントはI=bh^3/12で計算できます。
幅 b はそのまま、高さ hを三乗しているため、縦に長い方が断面二次モーメントIを大きくすることが分かります。
では、公式を使わずに、そもそもの計算式であるI=A×y ^2でも考えてみましょう。
横長の長方形の場合、X軸の近くに断面積があります。よって、断面二次モーメントIが小さめに。
縦長の長方形の場合、X軸から遠いところに断面積があります。よって、断面二次モーメントIが大きめに。
中立軸とは
中立軸とは、部材に曲げモーメントが加わったとき、応力度が生じない位置です。
断面において、引張力と圧縮力がつり合う位置を示しています。
たとえば、X軸周りの断面二次モーメントを考えるときは、上からの荷重をイメージ。
断面が長方形の梁に対して、上から荷重が作用する様子を考えてみましょう。すると、梁は下にたわむような形で変形しますよね。
これを細かく分割して考えてみると…、上の方は圧縮応力で縮み、下の方は引張応力で伸びます。
ちょうど真ん中の赤色のラインは伸び縮みせず変形しません。この変形しないラインが「中立軸」です。
上からの荷重に強い断面
上からの荷重に最も強いのは、アルファベットのHを横に向けた断面です。
H形は中立軸から遠いところに、大きな断面積を持っています。これは断面二次モーメントをできる限り大きくした結果。
全方向からの荷重に強い断面
全方向からの荷重に強い断面は、中空断面です。
計算式I=A×y ^2から考えてみましょう。
さまざまな方向から力が作用すると、いろんな角度の中立軸ができます。
つまり、どの中立軸からも遠いところに断面積を位置させようとしたとき、中空断面が適しているわけですね。
「植物の茎」や「動物の骨」も中空断面なのは、折れにくい断面形状に進化した結果かもしれません。
まとめ
- 断面二次モーメントとは「曲げにくさ(曲げる力への抵抗性)」を示す値。
- 断面二次モーメントの計算式
- I[m^4]=面積[㎡]×距離y[m]^2
- 断面二次モーメントの公式
- 長方形:I=bh^3/12
- 円形:I=πd^4/64
- 円筒形:I=π(D^4-d^4)/64
- 中立軸とは、部材に曲げモーメントが加わったとき、応力度が生じない位置。
- 上からの荷重に最も強いのは、アルファベットのHを横に向けた断面。
- 全方向からの荷重に強いのは、中空断面。
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