
- 許容応力度計算ってなに?
- どんな建築物に必要?
- 構造計算の流れを知りたい。
こんな悩みに答えます。
この記事では、建築基準法に定められた計算法の一つ、「許容応力度計算」についてわかりやすく解説。
✔️ 建築基準法における4つの計算法
- 許容応力度計算
- 保有水平耐力計算
- 限界耐力計算
- 時刻歴応答解析
許容応力度計算によって、各種の外力を受けたときに「建物の構造部材に損傷が生じないか」を確認します。
✔️ 記事の内容
- 許容応力度計算の概要
- 計算の流れ
- 部材にかかる力の種類

このサイトは、確認検査機関で意匠審査を担当していた一級建築士が運営。
住宅から特殊建築物まで1000件以上の設計相談を受けた経験をもとに、建築基準法の知識をわかりやすくまとめていきます。ご参考までにどうぞ。
許容応力度計算とは【建築基準法における構造計算法の一つ】
許容応力度計算とは「外力を受けて部材にかかる力(応力度)」が「部材の許容できる力(許容応力度)」以下におさまることを示す計算法です。
✔️ 計算式
部材の許容応力度>中小規模における地震時の各部材の応力度
応力とは、外力をうけたときに部材の内部に起こる抵抗力。
部材に荷重(外力)が加わると、外力につり合う力が部材の内部に生まれます。この部材内部で外力に応える力(内力)を建築構造では「応力」と呼びます。
✔️ 「応力」と「応力度」の違い
- 部材一つ一つに起こる力の大きさが「応力」
- 部材の単位面積あたりに起こる力が「応力度」

許容応力度とは、部材が「耐えられる限界(臨界点)」と考えてください。
許容応力度は荷重の継続する時間に応じて2つに分かれます。
- 長期許容応力度:持続的に生じる
- 短期許容応力度:短い期間で集中的に生じる
許容応力度計算の流れ
許容応力度計算の流れをおおまかにまとめました。
- 外力の設定:建物にかかる力(外力)を求める
- 応力度の計算:建物の形や材料をもとに、構造部材にどれくらいの力(応力)が加わるかを計算する
- 許容応力度の確認:構造部材がどれくらいの力を許容できるかを計算する
- 比較:②と③を比較して「③許容応力度」が上回れば安全
構造部材の内部におこる応力
部材に荷重(外力)が加わるとき、部材内部に生じる力を「応力(外力につり合う力)」といいます。
- 軸力(N):
- 圧縮力:部材を押し潰そうとする力
- 引張力:部材を伸ばす力
- せん断力(Q):ハサミで切るように2つの刃のすれ違いで破壊する力
- 曲げモーメント(M):部材を引っ張る力と圧縮する力の両方がはたらいて湾曲させること
許容応力度とは【許容応力度=材料の基準強度×安全率】
許容応力度は、ある材料が許容できる応力度。材料の基準強度に安全率をみこんで求めます。
例えば、コンクリートを圧縮する場合は「設計基準強度Fc」に対して
- 長期の許容応力度:Fc/3
- 短期の許容応力度:Fc/1.5

材料(木材・鋼材・コンクリートなど)によって「基準強度」の値は変わります。
材料の基準強度とは
材料の基準強度は、以下の力が加えられたときに、変形や破壊に抵抗する力です。
- 圧縮
- 引張
- 曲げ
- せん断
建築基準法で決められている基準強度は、材料が壊れる寸前の強度。このまま計算につかっては危険なので、安全率が定められています。
許容応力度計算においては、材料強度を安全率で低く見積もり、許容応力度を求めるわけですね。
安全率とは
安全率とは、材料の持つ降伏強度を「低減する値」です。
降伏とは、ある力を受けて変形した材料が、力を加えるのをやめても元に戻らなくなる状態。
たとえば、安全率を見込むことによって、予想外の事態(設計時に想定したものより重いものが載るなど)でも降伏を防ぐことができます。

安全率の係数は、荷重継続時間の違いから「長期」と「短期」が建築基準法で定められています。
許容応力度計算について建築基準法を読む
許容応力度計算は、建築基準法施行令82条の6に定められています。
第一款の四 許容応力度等計算
第八十二条の六 第八十一条第二項第二号イに規定する許容応力度等計算とは、次に定めるところによりする構造計算をいう
一 第八十二条各号、第八十二条の二及び第八十二条の四に定めるところによること。
以下省略
具体的な計算の流れは、令82条に規定。
(保有水平耐力計算)
第八十二条 前条第二項第一号イに規定する保有水平耐力計算とは、次の各号及び次条から第八十二条の四までに定めるところによりする構造計算をいう。
一 第二款に規定する荷重及び外力によつて建築物の構造耐力上主要な部分に生ずる力を国土交通大臣が定める方法により計算すること。
二 前号の構造耐力上主要な部分の断面に生ずる長期及び短期の各応力度を次の表に掲げる式によつて計算すること。
表を省略
三 第一号の構造耐力上主要な部分ごとに、前号の規定によつて計算した長期及び短期の各応力度が、それぞれ第三款の規定による長期に生ずる力又は短期に生ずる力に対する各許容応力度を超えないことを確かめること。
四 国土交通大臣が定める場合においては、構造耐力上主要な部分である構造部材の変形又は振動によつて建築物の使用上の支障が起こらないことを国土交通大臣が定める方法によつて確かめること。以下省略
まとめ
- 許容応力度計算とは「外力を受けて部材にかかる力(応力度)」が「部材の許容できる力(許容応力度)」以下におさまることを示す計算法。
- 部材の許容応力度>中小規模における地震時の各部材の応力度
- 許容応力度[N/㎜2]=材料の基準強度[N/㎜2]×安全率の係数
- 許容応力度計算の流れ
- 外力の設定
- 応力度の計算
- 許容応力度の確認
- ②と③を比較して「③許容応力度」が上回れば適合
- 材料の基準強度は、以下の力が加えられたときに、変形や破壊に抵抗する力。
- 圧縮
- 引張
- 曲げ
- せん断
- 安全率とは、材料の持つ降伏強度を「低減する値」。
- 部材に荷重(外力)が加わるとき、部材内部に生じる力を「応力(外力につり合う力)」という。
- 軸力(N):
- 圧縮力:部材を押し潰そうとする力
- 引張力:部材を伸ばす力
- せん断力(Q):ハサミで切るように2つの刃のすれ違いで破壊する力
- 曲げモーメント(M):部材を引っ張る力と圧縮する力の両方がはたらいて湾曲させること
- 軸力(N):
人気記事 転職3回の一級建築士が語る。おすすめ転職サイト・転職エージェント