兼用住宅とは|店舗兼住宅の建築基準法の用途制限【併用住宅と違う】

兼用住宅 建築基準法まとめ
  • 兼用住宅って、どういう意味?
  • 店舗を兼ねる住宅にかかる、建築基準法の制限は?
  • 兼用住宅が建てられる用途地域を教えてほしい。

こんな疑問に答えます。

本記事では、「兼用住宅(読み:けんようじゅうたく)」の設計基準についてわかりやすく解説。

戸建て住宅の一部を店舗や事務所として利用したい方にとって役立つ情報です。

このサイトは、確認検査機関で審査を担当していた一級建築士が運営。

住宅から特殊建築物まで1000件以上の設計相談を受けた経験をもとに、建築知識をわかりやすくまとめていきます。ご参考までにどうぞ。

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兼用住宅の定義とは

兼用住宅とは、小規模な店舗や事務所を兼ねる戸建て住宅です。

店舗兼用住宅

兼用住宅の定義

住宅部分と非住宅部分が構造的にも機能的にも一体となっていて、用途的に分離し難いもの

この定義にある「機能的にも一体」は、住宅と非住宅(店舗など)が内部で行き来できるような間取りを意図しています。

 

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用途地域による建物用途の制限

計画敷地に用途地域が指定されている場合、建築可能な建物の用途は制限されます。 そこで、住居系の用途地域に兼用住宅をつくる際の制限を一覧表にまとめました。

第1種低層住居専用地域 第2種低層住居専用地域 第1種中高層住居専用地域 田園住居地域
日用品販売店、食堂、喫茶店、理髪店、美容院、クリーニング取次店、質屋、貸衣装屋、 貸本屋、学習塾、華道教室、部碁教室等

50㎡以下

150㎡以下かつ2階以下

500㎡以下かつ2階以下

150㎡以下かつ2階以下

洋服店、畳屋、建具屋、自転車店、家庭電気器具店等(原動機を使用する場合は、その出力の合計が0.75kw以下のものに限る)

50㎡以下

150㎡以下かつ2階以下、作業場の床面積50㎡以下

500㎡以下かつ2階以下、作業場の床面積50㎡以下

150㎡以下かつ2階以下、作業場の床面積50㎡以下

パン屋、米屋、豆腐屋、菓子屋等の自家販売のための食品製造業(原動機を使用する場合は、その出力の合計が0.75kw以下のものに限る)

50㎡以下

150㎡以下かつ2階以下、作業場の床面積50㎡以下

500㎡以下かつ2階以下、作業場の床面積50㎡以下

150㎡以下かつ2階以下、作業場の床面積50㎡以下

上記以外の物品販売業を営む店舗または飲食店

500㎡以下かつ2階以下

地域で生産された農産物の販売を目的とする店舗その他の農業の利便を増進するために必要な店舗、飲食店

500㎡以下かつ2階以下、作業場の床面積50㎡以下

美術品又は工芸品を製作するためのアトリエ、工房(原動機を使用する場合は、その出力の合計が0.75kw以下のものに限る)

50㎡以下

50㎡以下

50㎡以下

50㎡以下

特に第一種低層住居専用地域は、低層の戸建て住宅に良好な環境を保護するための地域であり、兼用住宅に対する用途制限が厳しくなっています。

近隣住民の日常生活に必要な施設のみが兼用住宅として建設可能。

第一種低層住居専用地域内に建築可能な兼用住宅用途

  • 事務所
  • 日用品の販売を主たる目的とする店舗、食堂、喫茶店
  • 理髪店、美容院、クリーニング取次店、質屋、貸衣装屋、貸本屋、その他これらに類するサービス業を営む店舗
  • 洋服店、畳屋、建具屋、自転車店、家庭電気器具店、その他これらに類するサービス業を営む店舗(原動機を使用する場合はその出力の合計0.75KW以下に限る)
  • 自家販売のために食品製造業(食品加工業を含む)を営むパン屋、米屋、豆腐屋、菓子屋その他これらに類するもの(原動機を使用する場合はその出力の合計が0.75KW以下に限る)
  • 学習塾、華道教室、囲碁教室その他これらに類する施設
  • 美術品または工芸品を製作するためのアトリエまたは工房(原動機を使用する場合はその出力の合計が 0.75KW 以下に限る)

上記の用途制限に加えて、床面積に関する条件もあります。

住宅部分の床面積が延べ面積の1/2以上(住宅部分の床面積≧延べ面積×1/2) かつ、 住宅以外の用途の床面積の合計は50㎡以内

第一種低層住居専用地域で兼用住宅をつくるなら、建築基準法48条(用途地域等)の規定に要注意ですね。

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兼用住宅と併用住宅の違い

併用住宅(読み:へいようじゅうたく)とは、戸建て住宅の一部に他の用途を設けたもので、住宅部分と店舗部分が内部で行き来できない建築物です。

「兼用住宅」と「併用住宅」の違い

  • 兼用住宅:内部で行き来できる。構造的にも機能的にも一体。
  • 併用住宅:内部で行き来できない。

店舗併用住宅と店舗兼用住宅の違い

兼用住宅と併用住宅では、用途地域による建物用途の制限が大きく異なります。

おおまかに言えば、兼用住宅よりも併用住宅の方が用途の制限が厳しいですね。

詳しくは、店舗併用住宅とは|建築基準法による定義を解説【店舗設計の注意点】の記事をご確認ください。

 

兼用住宅Q&A

兼用住宅の設計において、よくある質問をまとめました。

  • 特殊建築物の用途を含む兼用住宅をつくるときの注意点
  • 戸建住宅を兼用住宅へ用途変更するときの確認申請の可否

特殊建築物の用途を含む場合の注意点

Q. 特殊建築物の用途を含む兼用住宅を設計するときの注意点は?
A. 建築基準法別表1の特殊建築物(飲食店や物品販売業を営む店舗など)には、建築基準法の避難規定が適用されます。特に、非常用照明の要否を見落とす方が多いので注意が必要です。

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兼用住宅への用途変更における確認申請の可否

Q. 戸建て住宅の一部を店舗などの用途に変える場合、確認申請は必要?
A. 確認申請手続きが必要となるのは以下の両方に当てはまる建物用途の変更です。
・建物用途:特殊建築物(建築基準法 別表1)への変更
・規模:変更部分の床面積が200㎡を超えるもの

兼用住宅において、住宅以外の部分の床面積が200㎡を超えることは少ないため、確認申請の不要なケースが多いですね。

設計者の責任において、建築基準法に適合するよう計画すればOK。

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兼用住宅について建築基準法を読む

第一種低層住居専用地域内に建築可能な兼用住宅は、建築基準法施行令130条の3に書かれています。

「建築基準法を読みたくない」という方は、建築法規PRO2024 図解建築申請法規マニュアル建築申請memo2024といった書籍で、図や表を見て理解を深めていきましょう。

(第一種低層住居専用地域内に建築することができる兼用住宅)

第百三十条の三 法別表第二(い)項第二号(法第八十七条第二項又は第三項において法第四十八条第一項の規定を準用する場合を含む。)の規定により政令で定める住宅は、延べ面積の二分の一以上を居住の用に供し、かつ、次の各号のいずれかに掲げる用途を兼ねるもの(これらの用途に供する部分の床面積の合計が五十平方メートルを超えるものを除く。)とする。

一 事務所(汚物運搬用自動車、危険物運搬用自動車その他これらに類する自動車で国土交通大臣の指定するもののための駐車施設を同一敷地内に設けて業務を運営するものを除く。)
二 日用品の販売を主たる目的とする店舗又は食堂若しくは喫茶店
三 理髪店、美容院、クリーニング取次店、質屋、貸衣装屋、貸本屋その他これらに類するサービス業を営む店舗
四 洋服店、畳屋、建具屋、自転車店、家庭電気器具店その他これらに類するサービス業を営む店舗(原動機を使用する場合にあつては、その出力の合計が〇・七五キロワット以下のものに限る。)
五 自家販売のために食品製造業(食品加工業を含む。以下同じ。)を営むパン屋、米屋、豆腐屋、菓子屋その他これらに類するもの(原動機を使用する場合にあつては、その出力の合計が〇・七五キロワット以下のものに限る。)
六 学習塾、華道教室、囲碁教室その他これらに類する施設
七 美術品又は工芸品を製作するためのアトリエ又は工房(原動機を使用する場合にあつては、その出力の合計が〇・七五キロワット以下のものに限る。)

 

まとめ

  • 兼用住宅とは、小規模な店舗や事務所を兼ねる戸建て住宅。
  • 第一種低層住居専用地域で兼用住宅をつくる場合、建築基準法48条(用途地域等)の規定に注意。
  • 兼用住宅と併用住宅の違い
    • 兼用住宅:内部で行き来できる。構造的にも機能的にも一体。
    • 併用住宅:内部で行き来できない。

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