- 防火区画を貫通する設備配管は、どのような処理が必要?
- 鋼製の配管であればOK?
- 大臣認定や告示など、処理方法の種別をまとめてほしい。
こんな悩みに答えます。
本記事では、建築基準法における防火区画貫通処理について解説。
以下の4種の防火区画を計画する場合に欠かせない知識です。
防火区画の概要が知りたい方は、防火区画まとめ|『面積・高層・竪穴・異種用途』4つの基準を解説という記事をご確認ください。
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防火区画貫通処理とは【設備配管への防火措置】
防火区画となる壁・床を設備配管が貫通する場合、耐火性能を低下させないような措置(防火区画貫通処理)をとる必要があります。
防火区画の壁は、天井でとまらず、屋根裏や上階のスラブ床まで達します。よって、天井裏で区画貫通処理をおこなうことが多いですね。
床が防火区画を兼ねるときは、PS(パイプスペース)内の床で炎を遮る措置をほどこします。
防火区画貫通処理の方法
建築基準法における防火区画貫通処理の規定を整理しました。
まず、防火区画を貫通する設備配管は、大きく分けて2つの処置が必要に。
そして、上記2が満たせない不燃材以外の配管(塩ビ管など)には、以下のいずれかの処理が認められています。
- 建築基準法による告示1422号の基準を満たすもの
- 大臣認定を受けた工法
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建築基準法による告示1422号の基準を満たすもの
告示1422に定められた配管の外径・肉厚の基準を満たすものは、防火区画貫通部の前後1mを不燃材料としなくてもOK。
塩ビ管(硬質塩化ビニル管)を使用することも可能です。
✓ 硬質塩化ビニル管等の防火区画貫通部の取り扱い(平12建告1422号)
配管の用途 | 覆いの有無 | 肉厚 | 配管の外径 | |
防火区画となる壁・床の区分 | ||||
1時間耐火構造 | 2時間耐火構造 | |||
給水管 | - | 5.5㎜以上 | 90㎜(75) | |
- | 6.6㎜以上 | 115㎜(100) | 90㎜ | |
配電管(VE管) | - | 5.5㎜以上 | 90㎜(82) | |
|
なし | 4.1㎜以上 | 61㎜(50) | |
5.5㎜以上 | 90㎜(75) | 61㎜ | ||
6.6㎜以上 | 90㎜ | 61㎜ | ||
厚さ0.5㎜以上の鉄板で覆う場合 | 5.5㎜以上 | 90㎜(75) | ||
6.6㎜以上 | 115㎜(100) | 90㎜ | ||
7.0㎜以上 | 115㎜ | 90㎜ |
※配管の外形の( )内の数値は、適合可能な硬質塩化ビニル管(JIS規格)の呼び径寸法を示す
JISに適合した硬質塩化ビニル管のうちVP管であれば、上表の肉厚に満たなくても使用することができます。逆に、VU管は肉厚が薄いため不可。
大臣認定を受けた工法
配管が不燃材(鋼管など)以外で、告示1422号にも適合しない場合は、貫通部から1mの範囲に大臣認定を取得した防火措置が必要となります。
大臣認定番号は、壁・床それぞれで異なります。
✔ 防火区画貫通処理の認定番号
- 壁:FP060WL-〇〇〇〇
- 床:FP060FL-〇〇〇〇
換気設備・電気設備の貫通処理事例
換気設備・電気設備において、よく利用されている区画貫通処理の事例をまとめました。
換気設備のダクトが防火区画を貫通する場合
換気設備のダクトが防火区画を貫通する場合は、区画の種別に応じて、FDまたはSFDを設置する必要があります。
防火区画の種類 | ダンパーの制御方式 |
面積区画 | FD、または SD(SFD) |
高層区画 | FD、または SD(SFD) |
たて穴区画 | SD(SFD) |
異種用途区画 | SD(SFD) |
界壁、防火上主要な間仕切り壁、隔壁 | FD、または SD(SFD) |
防火壁(1000㎡区画) | FD、または SD(SFD) |
※FD:温度ヒューズまたは、煙感知器連動
※SD:煙・熱煙複合感知器連動
電気設備配管が防火区画を貫通する場合
例えば、電線管の防火区画貫通処理には、積水化学工業のフィブロックやフラマシステムのCMAがあります。
出典:積水化学工業
出典:フラマシステム株式会社
消防法の令8区画は、建築基準法の防火区画と扱いが違う
消防法施行令8条による区画(令8区画)と本記事で解説している建築基準法施行令112条による防火区画は、基準が異なります。
簡単にいうと、令8区画を設備配管が貫通するのは不可。
防火措置の有無に関わらず、配管を通す行為そのものが禁止されています。
防火区画貫通処理について建築基準法を読む
防火区画を設備配管が貫通する際の基準は、下記の条項に定められています。
- 建築基準法 施行令112条
- 建築基準法 施行令129条の2の4
「建築基準法を読みたくない」という場合は、建築法規PRO2024 図解建築申請法規マニュアルや建築申請memo2024といった書籍で、図や表を見て理解を深めていきましょう。
(防火区画)
建築基準法施行令 第百十二条
中略
20 給水管、配電管その他の管が第一項、第四項から第六項まで若しくは第十八項の規定による一時間準耐火基準に適合する準耐火構造の床若しくは壁、第七項若しくは第十項の規定による耐火構造の床若しくは壁、第十一項本文若しくは第十六項本文の規定による準耐火構造の床若しくは壁又は同項ただし書の場合における同項ただし書のひさし、床、袖壁その他これらに類するもの(以下この条において「準耐火構造の防火区画」という。)を貫通する場合においては、当該管と準耐火構造の防火区画との隙間をモルタルその他の不燃材料で埋めなければならない。
21 換気、暖房又は冷房の設備の風道が準耐火構造の防火区画を貫通する場合(国土交通大臣が防火上支障がないと認めて指定する場合を除く。)においては、当該風道の準耐火構造の防火区画を貫通する部分又はこれに近接する部分に、特定防火設備(法第二条第九号の二ロに規定する防火設備によつて区画すべき準耐火構造の防火区画を貫通する場合にあつては、同号ロに規定する防火設備)であつて、次に掲げる要件を満たすものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものを国土交通大臣が定める方法により設けなければならない。
一 火災により煙が発生した場合又は火災により温度が急激に上昇した場合に自動的に閉鎖するものであること。
二 閉鎖した場合に防火上支障のない遮煙性能を有するものであること。
”建築基準法 施行令129条の2の4”を抜粋すると下記のとおり。
(給水、排水その他の配管設備の設置及び構造)
第百二十九条の二の四
中略
七 給水管、配電管その他の管が、第百十二条第二十項の準耐火構造の防火区画、第百十三条第一項の防火壁若しくは防火床、第百十四条第一項の界壁、同条第二項の間仕切壁又は同条第三項若しくは第四項の隔壁(ハにおいて「防火区画等」という。)を貫通する場合においては、これらの管の構造は、次のイからハまでのいずれかに適合するものとすること。ただし、一時間準耐火基準に適合する準耐火構造の床若しくは壁又は特定防火設備で建築物の他の部分と区画されたパイプシャフト、パイプダクトその他これらに類するものの中にある部分については、この限りでない。
イ 給水管、配電管その他の管の貫通する部分及び当該貫通する部分からそれぞれ両側に一メートル以内の距離にある部分を不燃材料で造ること。
ロ 給水管、配電管その他の管の外径が、当該管の用途、材質その他の事項に応じて国土交通大臣が定める数値未満であること。
ハ 防火区画等を貫通する管に通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後二十分間(第百十二条第一項若しくは第四項から第六項まで、同条第七項(同条第八項の規定により床面積の合計二百平方メートル以内ごとに区画する場合又は同条第九項の規定により床面積の合計五百平方メートル以内ごとに区画する場合に限る。)、同条第十項(同条第八項の規定により床面積の合計二百平方メートル以内ごとに区画する場合又は同条第九項の規定により床面積の合計五百平方メートル以内ごとに区画する場合に限る。)若しくは同条第十八項の規定による準耐火構造の床若しくは壁又は第百十三条第一項の防火壁若しくは防火床にあつては一時間、第百十四条第一項の界壁、同条第二項の間仕切壁又は同条第三項若しくは第四項の隔壁にあつては四十五分間)防火区画等の加熱側の反対側に火炎を出す原因となる亀裂その他の損傷を生じないものとして、国土交通大臣の認定を受けたものであること。
まとめ
- 防火区画を設備配管が貫通する場合、防火区画貫通処理が必要。
- 防火区画貫通処理の方法
- 配管まわりのすき間を不燃材料で埋める
- 防火区画貫通部の配管の構造(※以下のいずれか)
- 貫通位置から両端1mを不燃材料でつくる
- 建築基準法による告示1422号の基準を満たすもの
- 大臣認定を受けた工法
- 壁:FP060WL-〇〇〇〇
- 床:FP060FL-〇〇〇〇
- 消防法による令8区画を設備配管が貫通するのは不可