- 部分溶け込み溶接って何?
- 記号はどのように書く?
- 部分溶け込み溶接と完全溶け込み溶接の違いが知りたい。
こんな疑問に答えます。
本記事では、「部分溶け込み溶接」についてわかりやすく解説。
建築物の設計実務や資格試験に役立つ溶接の基礎知識が身につきます。
このサイトは、確認検査機関で審査を担当していた一級建築士が運営。
住宅から特殊建築物まで1000件以上の設計相談を受けた経験をもとに、建築知識をわかりやすくまとめていきます。ご参考までにどうぞ。
部分溶け込み溶接とは
部分溶け込み溶接とは、母材の一部に開先を設けて母材どうしをつなぐ溶接です。
主に厚みのある板を溶接するときに用いられますね。
溶接はボルト接合のように断面を欠損することなく、部材どうしを一体とするため、 応力の伝達もスムーズです。
ただし、溶接する環境や施工者の技術に仕上がりが左右されるというデメリットもあります。
特に、部分溶け込み溶接は、曲げモーメントや引張力が作用する箇所において強度が不足しやすいため注意しましょう。
部分溶け込み溶接を示す記号
部分溶け込み溶接を示す記号のイメージは以下のとおり。
JISにおいて、「部分溶け込み溶接」という分類の記号はありません。
代わりに、溶け込み溶接における開先の深さを指定して、完全溶け込み溶接の記号とともに開先深さを書くことが多いです。
部分溶け込み溶接の有効のど厚
有効のど厚は、溶接方法と開先角度によって異なります。
溶接方法 | 開先角度 | 有効のど厚 |
被覆アーク溶接
ガスシールドアーク溶接 |
以下の開先で60°未満
|
開先深さから3mmを減じた値 |
以下の開先の場合
|
開先深さの値 | |
以下の開先で60°以上
|
||
サブマージアーク溶接 | - |
部分溶け込み溶接は、斜めの開先(溝、グルーブ)に簡単に溶着金属を入れるもの。
開先の奥まで溶け込んでいるとは限らないため、開先深さから一定量を引いて有効のど厚とすることがあるわけですね。(出典:日本建築学会「鋼構造接合部設計指針」)
すみ肉溶接との違い
すみ肉溶接とは、母材(溶接する鋼板)を重ねたり、T字形に接合する場合に用いられる方式です。
✓ すみ肉溶接と開先(グルーブ)溶接の違い
- すみ肉溶接:直交する2つの部材(T継手・十字継手・角継手など)の面をつなぐ三角形状の溶接。
- 開先(グルーブ)溶接:突合せ継手やT継手などで、部材に開先(グルーブ)と呼ぶ溝を設けて行う溶接。
溶接する部材を完全に溶かし込む「完全溶込み溶接」と部分的に溶かす「部分溶込み溶接」の2種類に分類されます。
詳しくは、すみ肉溶接とは|記号の書き方、脚長・サイズ・のど厚の意味を解説という記事をご確認ください。
完全溶け込み溶接との違い
完全溶け込み溶接(突合わせ溶接)は母材の板厚全面を溶接します。
一般的に、部分溶け込み溶接よりも完全溶け込み溶接を採用することが多いですね。
部材の設計・製作の都合により接合部が交錯する場合に部分溶け込み溶接が必要となります。ただし、完全溶け込み溶接と部分溶け込み溶接では、強度に大きな差があるもの。
完全溶け込み溶接から部分溶け込み溶接への仕様変更はできないことが多いでしょう。
さらに詳しく知りたい方は、突き合わせ溶接(完全溶け込み溶接)とは|溶接記号・余盛高さを図解をご確認ください。
まとめ
- 部分溶け込み溶接とは、母材の一部に開先を設けて母材どうしをつなぐ溶接。
- 部分溶け込み溶接は、曲げモーメントや引張力が作用する箇所において強度が不足しやすい。
- 有効のど厚は、溶接方法と開先角度によって異なる。
- 一般的に、部分溶け込み溶接よりも完全溶け込み溶接を採用することが多い。
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