- 「せん断力」って何?
- 単純梁のせん断力は、どのように計算する?
- せん断力図の描き方が知りたい。
こんな疑問に答えます。
本記事では、構造力学における「せん断力」についてわかりやすく解説。
✓ 記事の内容
- 梁にせん断力がかかるときの変形をイメージする
- せん断力を切断法で求める方法
- せん断力を簡単に描く方法
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せん断力とは
せん断力(記号:Q)とは、長方形のものを平行四辺形に変形させる直角方向の一対の力です。
ハサミで切るように、2つの刃のすれ違いで破壊するイメージ。
部材が荷重を受けると、伸びたり曲がったりします。せん断力は部材の中に生じる3種類の力のうちの一つです。
- 軸方向力(圧縮力・引張力)
- せん断力
- 曲げモーメント
せん断力を示す記号
構造力学において、せん断力は「Q」という記号で表します。
「Querkrafte」というドイツ語が由来です。
せん断力のイメージ【図解】
例えば、集中荷重のかかる単純梁を考えてみましょう。
おおげさに描くと、梁は「くの字」に変形します。
目視では弓なりに曲がっているように見えるものの、実際には、ほんのわずかにくの字に折れ曲がっています。
くの字に曲がった梁を部分的に取り出すと、以下のような変化が。
- 変形前は長方形
- 変形後は平行四辺形
長方形を平行四辺形に変えるのは、どのような力でしょうか?
直角方向の力が左右逆向きに働いたときですね。この力のことを「せん断力」と呼びます。
せん断力の単位
せん断力は「kN(キロニュートン)」や「N(ニュートン)」という単位で表します。
1kNは1000Nです。
【参考】せん断応力度の単位
せん断応力を断面積で除した値を「せん断応力度」といいます。
せん断応力度の単位はN/m㎡(読み:ニュートンパースクエアミリ)です。
せん断力の正負符号|+(プラス)・-(マイナス)
構造力学において、せん断力の正負は以下のとおり。
- 左上がり右下がりの変形:プラス(+)
- 右上がり左下がりの変形:マイナス(−)
せん断力の求め方
単純梁や片持ち梁に以下の荷重がかかるときのせん断力は、「切断法」によって求めることができます。
- 集中荷重
- 分布荷重
- モーメント荷重
切断法(断面法)とは、部材を任意の位置で仮想的に切断し、鉛直方向・水平方向・回転方向のつり合い式から軸力を求める方法。
✓ 切断法の参考図
詳しくは、せん断力の求め方をわかりやすく解説【片持ち梁・単純梁に生じる力】の記事をご確認ください。
せん断力図の描き方
せん断力図を「力の矢印」を使って描く方法を解説します。
まず、完成形のイメージをご確認ください。
単純梁がせん断力を受けるとき、どのような変形になるか考えます。
上図のAC間は、反力と集中荷重によって平行四辺形に変形するはず。
+(左上がり)の変形を示すため、せん断力は+30kNで一定値となります。
BC間も同じように考えると、−(右下がり)の変形を示すことから、せん断力は−70kNで図示します。
力の矢印の長さとせん断力図の高さは同じになりますね。
集中荷重を受ける単純梁のせん断力図
まずは、反力を求めます。
- VA=30kN
- VB=70kN
左端から描き始めましょう。点Aの反力を上向きの矢印で描きます。
矢印の先から次の力へ当たるまで水平線を引きましょう。
点Cの集中荷重にあたった時点で、力の矢印を描きます。
矢印の先から次の力へ当たるまで水平線を引きます。
点Bの反力に当たったら、その力の矢印を描きましょう。終了点は必ず軸上となります。軸上で終わらない場合は、どこかに間違いがあるはず。
せん断力図の完成です。
分布荷重を受ける単純梁のせん断力図
まずは、反力を求めます。
- VA=50kN
- VB=50kN
左端から描き始めましょう。点Aの反力を上向きの矢印で描きます。
分布荷重の面積を求めます。
矢印の先端から分布荷重の終了点まで水平に移動します。その位置から分布荷重の面積(100kN)を示す矢印を下向きにおろしてください。
点Aの反力を示す矢印の先端から直線を結びます。交点から点Bの反力(上向き50kN)を立ち上げて軸上に戻ります。
分布荷重のせん断力図の完成です。
モーメント荷重を受ける単純梁のせん断力図
まずは、反力を求めます。
- VA=10kN
- VB=10kN
左端から描き始めましょう。点Aの反力を下向きの矢印で描きます。
矢印の先から次の力へ当たるまで水平線を引きます。
モーメント荷重は無視して水平線を引き続けましょう。モーメント荷重は部材に対して直角方向にかかる力ではないため、せん断力図には影響しないからです。
水平線が点Bに至ったら、反力(10kN上向き)を描いて軸上に戻ります。
モーメント荷重のせん断力図の完成です。
まとめ
- せん断力とは、長方形のものを平行四辺形に変形させる直角方向の一対の力。
- せん断力を示す記号:Q
- せん断力の単位:kN または N
- せん断力の正負
- 左上がり右下がりの変形:プラス(+)
- 右上がり左下がりの変形:マイナス(−)
- 梁に以下の荷重がかかるときのせん断力は「切断法」によって求めることが可能。
- 集中荷重
- 分布荷重
- モーメント荷重
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