せん断力とは|単位・記号・計算方法・図の描き方をわかりやすく解説

せん断力とは 構造規定
  • 「せん断力」って何?
  • 単純梁のせん断力は、どのように計算する?
  • せん断力図の描き方が知りたい。

こんな疑問に答えます。

本記事では、構造力学における「せん断力」についてわかりやすく解説。

記事の内容

  • 梁にせん断力がかかるときの変形をイメージする
  • せん断力を切断法で求める方法
  • せん断力を簡単に描く方法

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住宅から特殊建築物まで1000件以上の設計相談を受けた経験をもとに、建築知識をわかりやすくまとめていきます。ご参考までにどうぞ。

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せん断力とは

せん断力(記号:Q)とは、長方形のものを平行四辺形に変形させる直角方向の一対の力です。

ハサミで切るように、2つの刃のすれ違いで破壊するイメージ。

応力_一覧

部材が荷重を受けると、伸びたり曲がったりします。せん断力は部材の中に生じる3種類の力のうちの一つです。

  1. 軸方向力(圧縮力・引張力)
  2. せん断力
  3. 曲げモーメント

せん断力を示す記号

構造力学において、せん断力は「Q」という記号で表します。

「Querkrafte」というドイツ語が由来です。

せん断力のイメージ【図解】

例えば、集中荷重のかかる単純梁を考えてみましょう。

おおげさに描くと、梁は「くの字」に変形します。

せん断力_図_くの字変形

目視では弓なりに曲がっているように見えるものの、実際には、ほんのわずかにくの字に折れ曲がっています。

くの字に曲がった梁を部分的に取り出すと、以下のような変化が。

  • 変形前は長方形
  • 変形後は平行四辺形

長方形を平行四辺形に変えるのは、どのような力でしょうか?

せん断力とは

直角方向の力が左右逆向きに働いたときですね。この力のことを「せん断力」と呼びます。

 

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せん断力の単位

せん断力は「kN(キロニュートン)」や「N(ニュートン)」という単位で表します。

1kNは1000Nです。

【参考】せん断応力度の単位

せん断応力を断面積で除した値を「せん断応力度」といいます。

  • せん断応力:せん断力により物体の断面に生じる内力
  • せん断応力度=せん断応力÷断面積

せん断応力度の単位はN/m㎡(読み:ニュートンパースクエアミリ)です。

 

せん断力の正負符号|+(プラス)・-(マイナス)

構造力学において、せん断力の正負は以下のとおり。

  • 左上がり右下がりの変形:プラス(+)
  • 右上がり左下がりの変形:マイナス(−)

せん断力_正負4

 

せん断力の求め方

単純梁や片持ち梁に以下の荷重がかかるときのせん断力は、「切断法」によって求めることができます。

  • 集中荷重
  • 分布荷重
  • モーメント荷重

切断法(断面法)とは、部材を任意の位置で仮想的に切断し、鉛直方向・水平方向・回転方向のつり合い式から軸力を求める方法。

切断法の参考図

せん断力_集中荷重_単純梁2

詳しくは、せん断力の求め方をわかりやすく解説【片持ち梁・単純梁に生じる力】の記事をご確認ください。

 

せん断力図の描き方

せん断力図を「力の矢印」を使って描く方法を解説します。

まず、完成形のイメージをご確認ください。

せん断力_図_単純梁

単純梁がせん断力を受けるとき、どのような変形になるか考えます。

上図のAC間は、反力と集中荷重によって平行四辺形に変形するはず。

せん断力_図_くの字変形

せん断力_変形_単純梁

+(左上がり)の変形を示すため、せん断力は+30kNで一定値となります。

BC間も同じように考えると、−(右下がり)の変形を示すことから、せん断力は−70kNで図示します。

せん断力_図_単純梁2

力の矢印の長さとせん断力図の高さは同じになりますね。

集中荷重を受ける単純梁のせん断力図

せん断力図_集中荷重_単純梁A

まずは、反力を求めます。

  • VA=30kN
  • VB=70kN

せん断力図_集中荷重_単純梁2

左端から描き始めましょう。点Aの反力を上向きの矢印で描きます。

せん断力図_集中荷重_単純梁C

矢印の先から次の力へ当たるまで水平線を引きましょう。

せん断力図_集中荷重_単純梁5A

点Cの集中荷重にあたった時点で、力の矢印を描きます。

せん断力図_集中荷重_単純梁B

矢印の先から次の力へ当たるまで水平線を引きます。

せん断力図_集中荷重_単純梁D

点Bの反力に当たったら、その力の矢印を描きましょう。終了点は必ず軸上となります。軸上で終わらない場合は、どこかに間違いがあるはず。

せん断力図_集中荷重_単純梁7png

せん断力図の完成です。

せん断力図_集中荷重_単純梁9

 

分布荷重を受ける単純梁のせん断力図

せん断力_単純梁_分布荷重

まずは、反力を求めます。

  • VA=50kN
  • VB=50kN

せん断力図_分布荷重_単純梁

左端から描き始めましょう。点Aの反力を上向きの矢印で描きます。

せん断力図_分布荷重_単純梁2

分布荷重の面積を求めます。

10kN/m × 10m =100kN

せん断力図_分布荷重_単純梁3

矢印の先端から分布荷重の終了点まで水平に移動します。その位置から分布荷重の面積(100kN)を示す矢印を下向きにおろしてください。

せん断力図_分布荷重_単純梁4

点Aの反力を示す矢印の先端から直線を結びます。交点から点Bの反力(上向き50kN)を立ち上げて軸上に戻ります。

せん断力図_分布荷重_単純梁5

分布荷重のせん断力図の完成です。

せん断力図_分布荷重_単純梁6

 

モーメント荷重を受ける単純梁のせん断力図

せん断力図_集中荷重_単純梁D

まずは、反力を求めます。

  • VA=10kN
  • VB=10kN

せん断力図_モーメント荷重_単純梁2

左端から描き始めましょう。点Aの反力を下向きの矢印で描きます。

せん断力図_モーメント荷重_単純梁3

矢印の先から次の力へ当たるまで水平線を引きます。

せん断力図_モーメント荷重_単純梁4

モーメント荷重は無視して水平線を引き続けましょう。モーメント荷重は部材に対して直角方向にかかる力ではないため、せん断力図には影響しないからです。

せん断力図_モーメント荷重_単純梁5

水平線が点Bに至ったら、反力(10kN上向き)を描いて軸上に戻ります。

せん断力図_モーメント荷重_単純梁6

モーメント荷重のせん断力図の完成です。

 

まとめ

  • せん断力とは、長方形のものを平行四辺形に変形させる直角方向の一対の力。
  • せん断力を示す記号:Q
  • せん断力の単位:kN または N
  • せん断力の正負
    • 左上がり右下がりの変形:プラス(+)
    • 右上がり左下がりの変形:マイナス(−)
  • 梁に以下の荷重がかかるときのせん断力は「切断法」によって求めることが可能。
    • 集中荷重
    • 分布荷重
    • モーメント荷重

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