- 防火壁(ぼうかへき)って何?
- どのような規模、用途の建築物に必要?
- 免除する方法があれば知りたい。
こんな悩みに答えます。
本記事では、建築基準法における『防火壁』の基準について解説。
主に延べ面積が1000㎡を越える建築物に適用される制限で、建築基準法の26条に定められています。
延焼ラインの制限を緩和するために設ける「防火塀」とは、基準が異なるのでご注意を。
「防火塀」については、延焼ライン内の防火設備を『袖壁・塀』で緩和する方法【図解あり】の記事で詳しく解説しています。
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防火壁(ぼうかへき)とは
『防火壁(ぼうかへき)』とは、火災時に炎の拡大を防ぐことを目的として設置される壁のことです。
防火壁が必要な建築物・設置位置
建築基準法において、防火壁が必要とされる建築物は以下のとおり。
✔️ 防火壁の設置位置
ただし、防火壁には準耐火建築物など、防火性能を高めた建築物への緩和規定があります。
つまり、準耐火建築物以外(その他建築物)で、床面積が1000㎡を越える場合にのみ、防火壁が必要となるわけですね。
防火壁が免除される建築物
以下のいずれかに当てはまる場合は、防火壁が免除されます。
上記のなかで、「防火上必要な政令で定める技術的基準に適合するもの」とは、以下の要件をすべて満たす建築物です。(令115条の2)
- 構造方法:大断面木造建築物(令46条2項一号イ・ロ)
- 階数:2以下(地階を除く)
- 2階の床面積≦1階の床面積×1/8
- 外壁・軒裏:防火構造
- 1階の床(直下に地階がある部分のみ)・2階の床(体育館のギャラリー等を除く):一定の防火措置をしたもの(H12告示1368号)
- 地階の主要構造部:耐火構造、または不燃材料で造られていること
- 火気使用室とその他の部分:防火区画(区画貫通部には防火措置をする)
- 【内装制限等】建築物の各室・各通路:壁・天井の室内に面する部分の仕上げが難燃材料、またはスプリンクラー設備等で自動式のもの、及び排煙設備を設けること
- 接合部の防火措置(S62建告1901)
- 火災時の構造の安全性(S62建告1902)
「防火壁の仕様(構造)」と「開口部の基準」
防火壁の仕様は、建築基準法の施行令113条で、以下のように定められています
✔️ 防火壁に求められる基準
✔️ 防火壁内の開口部の構造
- 幅:2.5m以下
- 高さ:2.5m以下
- 特定防火設備で以下のいずれかであるもの
- 常時閉鎖式
- 熱感知器などと連動
防火壁を設備配管が貫通する場合の措置
防火壁を給水管、配電管、風道(換気ダクトなど)が貫通する場合は、防火上有効な措置が必要となります。
各種配管の防火措置について、概要をまとめると以下のとおり。
- 給水管・配電管:配管と防火壁との隙間をモルタルなどの不燃材料で埋める。
- 換気・暖房・冷房の設備の風道:FD(防火ダンパー)を設置。
具体的な基準は、建築基準法の施行令113条、および令112条20項・21項に定められています。
(木造等の建築物の防火壁及び防火床)
令113条前略
2 前条第20項の規定は給水管、配電管その他の管が防火壁又は防火床を貫通する場合に、同条第21項の規定は換気、暖房又は冷房の設備の風道が防火壁又は防火床を貫通する場合について準用する。
以下省略
「前条」が「ひとつ前の条文」を示しているので、令112条を見てみましょう。
(防火区画)
第112条前略
20 給水管、配電管その他の管が第1項、第4項から第6項まで若しくは第18項の規定による1時間準耐火基準に適合する準耐火構造の床若しくは壁、第7項若しくは第10項の規定による耐火構造の床若しくは壁、第11項本文若しくは第16項本文の規定による準耐火構造の床若しくは壁又は同項ただし書の場合における同項ただし書のひさし、床、袖壁その他これらに類するもの(以下この条において「準耐火構造の防火区画」という。)を貫通する場合においては、当該管と準耐火構造の防火区画との隙間をモルタルその他の不燃材料で埋めなければならない。
21 換気、暖房又は冷房の設備の風道が準耐火構造の防火区画を貫通する場合(国土交通大臣が防火上支障がないと認めて指定する場合を除く。)においては、当該風道の準耐火構造の防火区画を貫通する部分又はこれに近接する部分に、特定防火設備(法第2条第九号の二ロに規定する防火設備によつて区画すべき準耐火構造の防火区画を貫通する場合にあつては、同号ロに規定する防火設備)であつて、次に掲げる要件を満たすものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものを国土交通大臣が定める方法により設けなければならない。
一 火災により煙が発生した場合又は火災により温度が急激に上昇した場合に自動的に閉鎖するものであること。
二 閉鎖した場合に防火上支障のない遮煙性能を有するものであること。
防火壁について建築基準法を読む
防火壁は、建築基準法26条に定められています。
「建築基準法を読みたくない」という方は、建築法規PRO2024 図解建築申請法規マニュアルや建築申請memo2024といった書籍で、図や表を見て理解するのがおすすめです。
(防火壁等)
第26条延べ面積が1000㎡を超える建築物は、防火上有効な構造の防火壁又は防火床によつて有効に区画し、かつ、各区画の床面積の合計をそれぞれ1000㎡以内としなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する建築物については、この限りでない。
一 耐火建築物又は準耐火建築物
二 卸売市場の上家、機械製作工場その他これらと同等以上に火災の発生のおそれが少ない用途に供する建築物で、次のイ又はロのいずれかに該当するもの
イ 主要構造部が不燃材料で造られたものその他これに類する構造のもの
ロ 構造方法、主要構造部の防火の措置その他の事項について防火上必要な政令で定める技術的基準に適合するもの
三 畜舎その他の政令で定める用途に供する建築物で、その周辺地域が農業上の利用に供され、又はこれと同様の状況にあつて、その構造及び用途並びに周囲の状況に関し避難上及び延焼防止上支障がないものとして国土交通大臣が定める基準に適合するもの
まとめ
- 防火壁とは、火災時に炎の拡大を防ぐことを目的として設置される壁。
- 防火壁が必要とされる建築物:床面積1000㎡を超えるもの
- 防火壁の設置位置:床面積1000㎡以内ごとに区切る位置
- 以下のいずれかに当てはまる場合は、防火壁が免除
- 耐火建築物
- 準耐火建築物
- 卸売市場の上家、機械製作工場などの建築物で、以下のいずれかに当てはまるもの
- 主要構造部が不燃材料で造られたもの(その他これに類する構造)
- 防火上必要な政令で定める技術的基準に適合するもの
- 畜舎、堆肥舎などで、大臣が定める基準に適合するもの
- 防火壁に求められる基準
- 自立した耐火構造の壁
- 両端および上端を界壁面と屋根面から50㎝以上突出させること(※免除規定あり)
- 防火壁内の開口部の構造
- 幅:2.5m以下
- 高さ:2.5m以下
- 特定防火設備で以下のいずれかであるもの
- 常時閉鎖式
- 熱感知器などと連動
- 防火壁を設備配管が貫通する場合、防火上有効な措置が必要。
- 給水管・配電管:配管と防火壁との隙間をモルタルなどの不燃材料で埋める
- 換気・暖房・冷房の設備の風道:FD(防火ダンパー)を設置