壁量計算とは|木造2階建て建築物の構造設計【建築基準法令46条】

壁量計算 構造規定
  • 「壁量計算(へきりょうけいさん)」って何?
  • 木造建築物の構造設計方法が知りたい。
  • 許容応力度計算とは、どう違う?

こんな疑問や要望に答えます。

本記事では、木造建築物の「壁量計算」についてわかりやすく解説。

記事を読むことで、小規模な木造建築物(2階建ての戸建て住宅など)の構造設計の基礎知識が身につきます。

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住宅から特殊建築物まで1000件以上の設計相談を受けた経験をもとに、建築知識をわかりやすくまとめていきます。ご参考までにどうぞ。

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壁量計算とは

壁量計算とは、木造建築物の構造設計において、地震や風の力に対する耐力壁の量を簡易的に算出する方法です。

これは建築基準法施行令46条によるもの。

具体的には、建物の床面積や外壁の見付面積をもとに、建築基準法で定められた「必要な耐力壁の量(必要壁量)」を計算し、「実際に設置する耐力壁の量(存在壁量)」がその基準を満たしているかを確認します。

耐力壁(たいりょくへき):地震や風などの横からの力に対して建物を支える役割を果たす壁のこと。

壁量計算では、耐力壁の種類ごとに強度を表す数値「壁倍率」を用いて、必要な壁量を算出します。

小規模な木造建築物(木造2階建ての戸建て住宅など)で、構造計算の代わりに用いられますね。

 

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壁量計算の流れ

壁量計算では、「地震力および風圧力に対する必要な壁の量(必要壁量)」を計画している「耐力壁等の量(存在壁量)」が上回っていることを階ごと、方向ごとに確認します。

  1. 必要壁量の算出
    • 「地震力」に対する必要壁量
    • 「風圧力」に対する必要壁量
  2. 存在壁量の算出
  3. 判定

 

必要壁量の算出

必要壁量を算出する流れは以下のとおり。

  1. 壁量計算用床面積の算出
  2. 地震力に対する必要壁量の計算
    • 2-1.地震力に対する「重い・軽い屋根」による必要壁量(令和7年3月31日まで)
    • 2-2.地震力に対する実荷重に応じた必要壁量(令和7年4月1日改正)
  3. 風圧力に対する必要壁量の計算

1. 壁量計算用床面積の算出

建物の各階の床面積を求めます。

床面積根拠図
出典:国交省

 

小屋裏収納がある場合の床面積の補正

小屋裏収納の床面積が直下の床面積の1/8を超える場合は、 以下の面積(a) を各階の床面積に加えます。

各階に加算する床面積a(㎡)=
小屋裏収納の内法高さの平均h(m)×小屋裏収納の床面積(㎡)/2.1(m)

出典:国交省

2階建ての場合、1階にも床面積aを加算しましょう。

 

2-1. 地震力に対する「重い・軽い屋根」による必要壁量(令和7年3月31日まで)

地震力に対して必要な耐力壁の量を計算します。これは、床面積に地震力用係数を掛けることで求められます。

地震力に対する必要壁量(㎝)=各階の床面積(㎡)×地震力用係数
建築物 平屋 2階建て
1 土蔵造の建築物その他これに類する壁の重量が特に大きい建築物 地震力係数_平屋_瓦屋根 地震力係数_2階建て_瓦屋根
2 (1)に掲げる建築物以外の建築物で屋根を金属板、石板、木板その他これらに類する軽い材料でふいたもの 地震力係数_平屋_金属板 地震力係数_2階建て_金属板

例えば、軽い屋根(スレートなど)の場合、2階は15cm/㎡、1階は29cm/㎡の係数を使用します。

 

2-2.地震力に対する実荷重に応じた必要壁量(令和7年4月1日改正)

令和7年4月1日に施行される建築基準法の改正に伴い、存在壁量の算出方法が変わります。

いわゆる「軽い屋根」「重い屋根」の区分が廃止。

改正後は、実荷重に応じた必要壁量を算定します。

必要壁量の計算式

Lw= Ai⋅C0⋅∑wi/0.0196⋅Afi
  • Lw:床面積あたりの必要な壁量(cm/m²)
  • Ai:層せん断力分布係数
  • C0:標準せん断力係数
  • Σwi:当該階が地震時に負担する固定荷重と積載荷重の和
  • Afi:当該階の床面積

床面積あたりの必要壁量を算定するために、以下の支援ツールが国交省より提供されています。

  • 表計算ツール:プログラム上で情報を入力または選択すると、必要壁量が自動計算されます。
  • 早見表:計画している住宅の条件に適合する早見表を選択。

 

3. 風圧力に対する必要壁量の計算

風圧力に対する必要壁量を計算するために、建物の見付面積を求めます。

見付面積は、建物の外周面積から1.35m以下の部分を除いた面積。

見付面積に風圧力用係数を掛けて必要壁量を算出します。

風圧力に対する必要壁量(cm)=見付け面積(㎡)×見付け面積に乗する値(cm/㎡)

出典:国土交通省

この時、妻側(Y 方向)の面が受ける風圧力を支えるのは、桁行方向 ( X 方向)の耐力壁であることに注意。


出典:国土交通省
参考図面

 

存在壁量の算出

壁量計算における存在壁量を求める手順は以下のとおり。

  1. 壁倍率の確認
  2. 耐力壁の長さの測定
  3. 存在壁量の計算

存在壁量の計算式

存在壁量(cm)={耐力壁等の壁倍率×耐力壁等の長さ(cm)}の合計

この計算を各階、X方向・Y方向ごとに行い、存在壁量を求めます。

1.壁倍率の確認

耐力壁の仕様と壁倍率は以下の2パターンから選びます。

  1. 建築基準法 告示(昭56建告第1100号)
  2. 大臣認定
壁倍率:耐力壁の強さを示す数値で、建築基準法や国土交通大臣の認定を受けた耐力壁に定められるもの。大臣認定の耐力壁には使用できる条件等があるため要注意。

複数の仕様が併用されている耐力壁では、その壁倍率を合算してOK。

例えば、「片筋かい耐力壁(2.0倍)」と「構造用合板(2.5倍)」を合わせると4.5倍ですね。

ただし、合算した場合の上限は7倍までとされています。

 

2.耐力壁の長さの測定

各階のX方向とY方向ごとに、耐力壁の長さを測定します。

壁量平面図

存在壁量の算定表出典:国土交通省

例えば、1階のX方向に長さ1mの耐力壁が9カ所ある場合、その合計長さは9mです。

 

3.存在壁量の計算

存在壁量は、各耐力壁の長さに壁倍率を掛けた値の合計で求めます。

存在壁量の計算式

存在壁量(cm)={耐力壁等の壁倍率×耐力壁等の長さ(cm)}の合計

例えば、壁倍率2.5倍の耐力壁が1mの長さで9ヶ所ある場合、存在壁量は「2.5倍×1m×9ヶ所=22.5m」となります。

 

判定

必要壁量が存在壁量を上回っていれば、建築基準法に適合となります。

判定基準

必要壁量≧存在壁量

 

壁量計算について建築基準法を読む

令和7年4月1日に改正される建築基準法施行令46条は以下のとおり。

「建築基準法を読みたくない」という方は、建築法規PRO2025 図解建築申請法規マニュアル建築申請memo2025 といった書籍で、図や表を見て理解を深めていきましょう。

(構造耐力上必要な軸組等)
第四十六条

構造耐力上主要な部分である壁、柱及び横架材を木造とした建築物にあつては、全ての方向の水平力に対して安全であるように、各階の張り間方向及び桁行方向に、それぞれ壁を設け又は筋かいを入れた軸組を釣合い良く配置しなければならない。

2 前項の規定は、次の各号のいずれかに該当する木造の建築物又は建築物の構造部分については、適用しない。

一 次に掲げる基準に適合するもの

イ 構造耐力上主要な部分である柱及び横架材(間柱、小ばりその他これらに類するものを除く。以下この号において同じ。)に使用する集成材その他の木材の品質が、当該柱及び横架材の強度及び耐久性に関し国土交通大臣の定める基準に適合していること。

ロ 構造耐力上主要な部分である柱の脚部が、一体の鉄筋コンクリート造の布基礎に緊結している土台に緊結し、又は鉄筋コンクリート造の基礎に緊結していること。

ハ イ及びロに掲げるもののほか、国土交通大臣が定める基準に従つた構造計算によつて、構造耐力上安全であることが確かめられた構造であること。

二 方づえ(その接着する柱が添木その他これに類するものによつて補強されているものに限る。)、控柱又は控壁があつて構造耐力上支障がないもの

3 床組及び小屋ばり組には木板その他これに類するものを国土交通大臣が定める基準に従つて打ち付け、小屋組には振れ止めを設けなければならない。ただし、国土交通大臣が定める基準に従つた構造計算によつて構造耐力上安全であることが確かめられた場合においては、この限りでない。

4 階数が二以上又は延べ面積が五十平方メートルを超える木造の建築物においては、第一項の規定により配置する軸組は、当該建築物の各階に作用する水平力により構造耐力上支障のある変形又は破壊が生じないよう木材、鉄筋その他必要な強度を有する材料を使用した壁又は筋かいが有効に設けられたものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものを、当該建築物が地震及び風圧に対して構造耐力上安全なものとなるように国土交通大臣が定める基準に従つて設置するものでなければならない。

建築基準法施行令46条4項において、国土交通大臣が定めた構造方法は「建設省告示第1100号」に定められています。

建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第46条第4項の規定に基づき、木造の建築物の軸組の構造方法を第1に、木造の建築物の軸組の設置の基準を第2から第5までに定める。

昭和56年6月1日 建設省告示第1100号

木造の建築物の軸組の構造方法及び設置の基準を定める件

第1 建築基準法施行令(以下「令」という。)第46条第4項に規定する木造の建築物の軸組の構造方法は、次の各号に定めるものとする。

以下省略

 

まとめ

  • 壁量計算では、「地震力および風圧力に対する必要な壁の量(必要壁量)」を「耐力壁等の量(存在壁量)」が上回っていることを階ごと、方向ごとに確認する。
  • 壁量計算の流れ
    • 必要壁量の算出
    • 存在壁量の算出
    • 適合性の判定
  • 壁量計算の判定基準
    • 必要壁量≧存在壁量

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