
- 「べた基礎」って何?
- 布基礎とどう違う?
- べた基礎が必要となる地盤の条件が知りたい。
こんな疑問や要望に答えます。
本記事では、建築物の基礎構造の一つ「べた基礎」について、わかりやすく解説。
記事を読むことで、べた基礎の設計基準やメリット・デメリットを理解することができます。

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べた基礎とは
べた基礎とは、建物の床下全体に渡って鉄筋コンクリートを敷き詰めた基礎です。

「べた」という言葉が示すように、広範囲にわたって一面にコンクリートを打設します。
べた基礎の設計基準
べた基礎の設計基準は、建築基準法施行令第38条および平12建告第1347号に定められています。
✓ べた基礎の設計基準
- 鉄筋コンクリート造であること。
- 立上り部分
- 高さ:地上部分で300mm以上。
- 厚さ:120mm以上。
- 底盤
- 厚さ:120mm以上。
- 根入れの深さ
- 最低120mm以上。
- 凍結深度よりも深くすること。
- 鉄筋配置
- 立上り部分には径12mm以上の異形鉄筋を使用し、上下端に1本以上配置すること。
- 地盤条件(地盤の長期許容応力度に応じて基礎形式を選定)
- 20kN/m²未満:杭基礎のみ
- 20kN/m²以上30kN/m²未満:杭基礎または、べた基礎
- 30kN/m²以上:杭基礎、べた基礎、布基礎のいずれか
べた基礎のメリット
ベタ基礎の主なメリットをまとめると以下のとおり。
1 | 耐震性の向上 | 底面全体に鉄筋コンクリートを使用するため、地震の揺れを効果的に分散し、建物の安定性を高めます。 |
2 | 不同沈下の防止 | 広い面積に荷重を分散させることで、基礎の一部が大きく沈下することを防ぎ、建物が傾かないようにします。 |
3 | 湿気やシロアリの被害防止 | 床下全体をコンクリートで覆うことで、湿気やシロアリが建物に侵入しにくくなり、木材の腐敗や食害を防ぎます。 |
4 | 長期的な耐久性とコストパフォーマンス | 高い耐久性と安定性から、建物の長寿命化に寄与し、長期的なメンテナンスコストを抑える効果があります。 |
べた基礎のデメリット
ベタ基礎の主なデメリットは以下のとおり。
1 | コストが高い | 鉄筋コンクリートを全面に敷くため、布基礎よりも材料費や施工費が高くなります。また、掘削面積が広いため残土の処理費用も増加します。 |
2 | 強度が鉄筋量に依存する | 使用する鉄筋の量によって強度が変わります。鉄筋が少ない場合、求める耐久性を得られない可能性も。 |
3 | 寒冷地に不向き | 寒冷地では地中凍結による膨張で基礎が持ち上げられるリスクがあります。そのため、深い根入れが必要となり、さらにコストがかかります。 |
4 | 湿気対策が必要 | 施工後、コンクリートの乾燥に時間がかかり、「養生水分(コンクリートの硬化過程で必要な水分)」が床下湿害を引き起こす可能性があります。 |
べた基礎と布基礎の違い
布基礎は、建物の柱や壁の下に沿って鉄筋コンクリートを配置する基礎工法です。
ベタ基礎と布基礎の特徴を比較すると以下のとおり。
べた基礎 | 布基礎 | |
構造 | 面で支える | 点や線で支える |
耐震性 | 高い | やや低い |
湿気対策 | 優れている | やや劣る |
コスト | 高い | 低い |
施工期間 | 長い | 低い |
適用地盤 | 軟弱地盤にも対応可能 | 安定した地盤に適している |
寒冷地適性 | 不向き | 向いている |
耐震性を重視する場合には、べた基礎が適しています。

コストを抑えたい場合には、布基礎が選択肢に入りますね。
べた基礎について建築基準法を読む
基礎については、建築基準法施行令第38条および平12建告第1347号に定められています。
「建築基準法を読みたくない」という方は、建築法規PRO2025 図解建築申請法規マニュアル や建築申請memo2025 といった書籍で、図や表を見て理解を深めていきましょう。
(基礎)
第三十八条建築物の基礎は、建築物に作用する荷重及び外力を安全に地盤に伝え、かつ、地盤の沈下又は変形に対して構造耐力上安全なものとしなければならない。
2 建築物には、異なる構造方法による基礎を併用してはならない。
3 建築物の基礎の構造は、建築物の構造、形態及び地盤の状況を考慮して国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものとしなければならない。この場合において、高さ十三メートル又は延べ面積三千平方メートルを超える建築物で、当該建築物に作用する荷重が最下階の床面積一平方メートルにつき百キロニュートンを超えるものにあつては、基礎の底部(基礎ぐいを使用する場合にあつては、当該基礎ぐいの先端)を良好な地盤に達することとしなければならない。
以下省略
平成12年5月23日 建設省告示第1347号
建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第38条第3項及び第4項の規定に基づき、建築物の基礎の構造方法及び構造計算の基準を次のように定める。
建築物の基礎の構造方法及び構造計算の基準を定める件
第1 建築基準法施行令(以下「令」という。)第38条第3項に規定する建築物の基礎の構造は、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、地盤の長期に生ずる力に対する許容応力度(改良された地盤にあっては、改良後の許容応力度とする。以下同じ。)が1平方メートルにつき20キロニュートン未満の場合にあっては基礎ぐいを用いた構造と、1平方メートルにつき20キロニュートン以上30キロニュートン未満の場合にあっては基礎ぐいを用いた構造又はべた基礎と、1平方メートルにつき30キロニュートン以上の場合にあっては基礎ぐいを用いた構造、べた基礎又は布基礎としなければならない。
一 次のイ又はロに掲げる建築物に用いる基礎である場合
イ 木造の建築物のうち、茶室、あずまやその他これらに類するもの
ロ 延べ面積が10平方メートル以内の物置、納屋その他これらに類するもの
二 地盤の長期に生ずる力に対する許容応力度が1平方メートルにつき70キロニュートン以上の場合であって、木造建築物又は木造と組積造その他の構造とを併用する建築物の木造の構造部分のうち、令第42条第1項ただし書の規定により土台を設けないものに用いる基礎である場合
三 門、塀その他これらに類するものの基礎である場合
四 建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第八十五条第二項、第六項又は第七項に規定する仮設建築物(同法第六条第一項第一号又は第二号に掲げる建築物(木造の建築物にあっては、地階を除く階数が三以上であるもの、延べ面積が三百平方メートルを超えるもの又は高さが十六メートルを超えるものに限る。)を除く。)に用いる基礎である場合
2 中略
3 建築物の基礎をべた基礎とする場合にあっては、次に定めるところによらなければならない。
一 一体の鉄筋コンクリートとすること。
二 木造の建築物若しくは木造と組積造その他の構造とを併用する建築物の木造の土台の下又は組積造の壁若しくは補強コンクリートブロック造の耐力壁の下にあっては、連続した立上り部分を設けるものとすること。
三 立上り部分の高さは地上部分で30センチメートル以上と、立上り部分の厚さは12センチメートル以上と、基礎の底盤の厚さは12センチメートル以上とすること。
四 根入れの深さは、基礎の底部を雨水等の影響を受けるおそれのない密実で良好な地盤に達したものとした場合を除き、12センチメートル以上とし、かつ、凍結深度よりも深いものとすることその他凍上を防止するための有効な措置を講ずること。
五 立上り部分の主筋として径十二ミリメートル以上の異形鉄筋を、立上り部分の上端及び立上り部分の下部の底盤にそれぞれ一本以上配置し、かつ、補強筋と緊結したものとすること。
六 立上り部分の補強筋として径九ミリメートル以上の鉄筋を三十センチメートル以下の間隔で縦に配置したものとすること。
七 底盤の補強筋として径九ミリメートル以上の鉄筋を縦横に三十センチメートル以下の間隔で配置したものとすること。
八 換気口を設ける場合は、その周辺に径九ミリメートル以上の補強筋を配置すること。
まとめ
- べた基礎とは、建物の床下全体に渡って鉄筋コンクリートを敷き詰めた基礎です。
- べた基礎の設計基準
- 鉄筋コンクリート造でつくる。
- 立上り部分
- 高さ:地上部分で300mm以上
- 厚さ:120mm以上
- 底盤
- 厚さ:120mm以上
- 根入れの深さ
- 最低120mm以上
- 凍結深度よりも深くする。
- 鉄筋配置
- 立上り部分には径12mm以上の異形鉄筋を使用し、上下端に1本以上配置すること。
- 地盤条件
- 20kN/m²以上
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