
- 座屈(ざくつ)ってなに?
- 座屈の計算式は?
- 「座屈長さ」と「座屈係数」について詳しく知りたい。
こんな疑問に答えます。
本記事では、『座屈』についてわかりやすく解説。
座屈の基本メカニズムから、座屈長さ・細長比の設定まで基本知識を理解することができます。

このサイトは、確認検査機関で審査を担当していた一級建築士が運営。
住宅から特殊建築物まで1000件以上の設計相談を受けた経験をもとに、建築知識をわかりやすくまとめていきます。ご参考までにどうぞ。
座屈とは
『座屈』とは、部材が圧縮力(外側から押しつぶそうとする力)を受けた際に、材料そのものの圧縮強度に達する前に、横方向へ急激に変形して耐力を失う現象のこと。
つまり「材料はまだ壊れていないのに、部材としては終わり」という、圧縮材特有の壊れかたですね。

引張力(外側に向かって引き伸ばそうとする力)は、力を加えた分だけ伸びて、最終的に材料が破断するという比較的シンプルな壊れ方。
ところが、圧縮力の場合は違います。
ある荷重を境に、部材が突然「グニャッ」と横に曲がり出し、一気に崩壊へ向かいます。

前兆がほとんどないのが、座屈の恐ろしいところですね。
座屈が起きやすい条件を簡単にまとめると、以下のとおり。
- 部材が細長い(=細長比が大きい)
- 断面の剛性(曲げにくさ)が小さい(=断面二次モーメント I が小さい)
- 支持条件が弱い(=端部が自由に回転・移動できる)
「座屈長さ」と「座屈係数」とは
座屈長さ ( l_k ) とは、部材が座屈する際に実質的に効いている長さのこと。
部材の実長( l )そのものではありません。

なぜ実長と異なるの?

それは、部材の両端がどう支持されているかによって、座屈時の変形形状(たわみ曲線)が変わるからです。
端部がガッチリ固定されていれば、部材は曲がりにくくなり、座屈長さは実長より短くなる。
逆に端部が自由に動ける状態なら、座屈長さは実長より長くなります。
座屈長さの計算式は以下のとおり。

l_k=K×l
- l_k:座屈長さ
- K:座屈係数(境界条件で決まる)
- l :部材の実長
座屈係数 (K) は、部材の両端の支持条件(境界条件)によって変わります。
代表的な4パターンを整理すると、以下のとおり。
| 境界条件 | 一端 | 他端 | 座屈係数 (K) |
| 両端ピン | ピン(回転自由) | ピン(回転自由) | 1.0 |
| 一端固定・他端ピン | 固定 | ピン(回転自由) | 0.7 |
| 両端固定 | 固定 | 固定 | 0.5 |
| 一端固定・他端自由(片持ち) | 固定 | 自由 | 2.0 |

✓ 直感的なイメージ
- 両端をガッチリ固定すれば「座屈しにくくなる=座屈長さが短い」
- 片持ちのように片端が自由なら「座屈しやすい=座屈長さが長い」
この感覚をまず持っておくと、数値の妥当性を瞬時に判断できます。
座屈の計算
座屈荷重の理論式として最も基本的なのが、オイラーの座屈荷重です。
P_k=π^2EI/l_k^2
- P_k:座屈荷重(部材が座屈を起こす臨界荷重)
- E:ヤング係数(材料の硬さを表す定数)
- I:断面二次モーメント(断面の曲げにくさ)
- l_k:座屈長さ(前章で設定した値)

この式から読み取るべき最重要ポイントは、たった一つ。
つまり、座屈長さが2倍になると座屈荷重は1/4に激減します。
境界条件の設定ミスは致命的ですね。
座屈荷重から「座屈応力」へ変換する
オイラーの座屈荷重は「力(kN)」の次元ですが、実務の構造計算では「応力度(N/mm²)」で比較するのが基本。
座屈荷重を部材の断面積 ( A ) で割れば、座屈応力(σ cr)が得られます。

座屈応力(座屈強度)とは、部材が座屈を起こす臨界点における圧縮応力度のこと。
材料そのものが壊れる圧縮強度とは異なり、「部材として安定を保てなくなる限界の応力」を意味します。
ここで新たに登場した ( λ ) が細長比です。
- λ:細長比(部材の「細長さ」を無次元で表す指標)
- l_k:座屈長さ
- i:断面二次半径(i=√I / A)
この式を眺めると、座屈応力 (σ cr) は細長比 (λ) の2乗に反比例していることがわかります。

つまり、細長比が大きくなるほど、座屈応力はガクッと下がるわけですね。
木造・鉄骨造における「細長比」とは
建築基準法には細長比の上限値が定められています。
木造の柱における有効細長比に関する制限は以下のとおり。(建築基準法施行令43条)
詳しくは、有効細長比とは|木造の柱の有効細長比の求め方【わかりやすく解説】をご確認ください。
鉄骨造における「構造耐力上主要な部分である圧縮材」の細長比の上限は以下のとおり。
- 柱:200以下
- 柱以外の圧縮材(ブレース等):250以下
まとめ
- 座屈とは、部材が圧縮力を受けた際に、横方向へ変形して耐力を失う現象のこと。
- 座屈長さ ( l_k ) とは、部材が座屈する際に実質的に効いている長さ。
- 座屈長さの計算式
- l_k=K×l
- 座屈荷重の理論式
- P_k=π^2EI/l_k^2
- 建築基準法には細長比の上限値が定められている。
人気記事 転職3回の一級建築士が語る。おすすめ転職サイト・転職エージェント

