- 特定天井って何?
- どんな建築物に必要となる?
- 特定天井を設ける場合の基準が知りたい。
こんな疑問や要望に答えます。
本記事では、建築基準法における「特定天井」についてわかりやすく解説。
天井の水平投影面積が200㎡を超える居室で、吊り天井を設計するときに役立つ情報です。
このサイトは、確認検査機関で審査を担当していた一級建築士が運営。
住宅から特殊建築物まで1000件以上の設計相談を受けた経験をもとに、建築知識をわかりやすくまとめていきます。ご参考までにどうぞ。
特定天井とは
『特定天井』とは、以下の項目すべてに当てはまる「吊り天井」です。
- 居室や廊下など人が日常立ち入る場所に設けられるもの
- 高さが6mを超える天井の部分で、 水平投影面積が200m²をこえる部分を含むもの
- 単位面積質量が2kg/m² をこえるもの
なお、構造躯体と一体で天井下地材や天井板を設ける「直天井」 は対象外。
日常的に人が立ち入らない場所(倉庫など)も対象外となります。
万が一、天井が脱落しても、大きな人的被害が生じにくいからですね。
特定天井の施行日
「特定天井」は、東日本大震災による天井脱落事故をうけて、 建築基準法施行令の改正が行われ、平成26年4月から施行されました。
特定天井が必要となる条件【具体例】
パターン | 断面図 | 特定天井の対象範囲 |
6m超と6m以下の天井がある場合 | 高さ6m超、水平投影面積200㎡超の部分が、特定天井の対象となる。 | |
6m超と6m以下の天井が接合している場合 | 高さ6m超の部分と6m以下の部分が接合されていれば、高さ6m以下の部分を含めて特定天井の対象となる。(ただし、高さ6m以下の部分の水平投影面積は計上しない。) | |
6m超の天井がクリアランスで分割されている場合 | 高さ6m超の部分がクリアランスで分割されていても、特定天井の対象としては一続きの天井として扱う。(ただし、クリアランス部分の水平投影面積は計上しない。) | |
斜めの天井がある場合 | 高さ6m超、水平投影面積200㎡超の部分が、特定天井の対象となる。 |
特定天井の検証方法
特定天井は、以下のいずれかの方法によって建築基準法への適合性を検証します。
- 仕様ルート
- 仕様ルート(隙間なし天井)
- 計算ルート
- 大臣認定ルート
仕様ルート
check | 技術基準 |
□ | 天井面構成部材等の質量は、20kg/㎡以下とする。 |
□ | 天井材は、ボルト接合、 ねじ接合その他これらに類する接合方法により相互に緊結する。 |
□ | 支持構造部は、十分な剛性及び強度を有するものとし、 建築物の構造耐力上主要な部分に緊結する。 |
□ | 吊り材は、JIS A 6517-2010に定めるボルトの規定に適合するもの又はこれと同等以上の引張強度を有するものとする。 |
□ | 吊り材及び斜め部材 (天井材に緊結するものを除く。) は、 埋込みインサートを用いた接合、 ボルト接合その他これらに類する接合方法により構造耐力上主要な部分等に緊結する。 |
□ | 天井面構成部材に天井面の段差その他の地震時に有害な応力集中が生じるおそれのある部分を設けない。 |
□ | 吊り長さは、3m以下としておおむね均一とする。 |
□ | 斜め部材は2本の斜め部材の下端を近接してV字状に配置したものを1組として算定した組数以上を釣合い良く配置する。 |
□ | 天井面構成部材と壁等との間に6cm以上の隙間を設ける。 |
□ | 屋外に面する天井は、 風圧により脱落することがないように取り付ける。 |
仕様ルート(隙間なし天井)
check | 技術基準 |
□ | 天井面構成部材等の質量は、20kg/㎡以下とする。 |
□ | 天井材は、ボルト接合、 ねじ接合その他これらに類する接合方法により相互に緊結する。 |
□ | 支持構造部は、十分な剛性及び強度を有するものとし、 建築物の構造耐力上主要な部分に緊結する。 |
□ | 吊り材は、JIS A6517-2010に定めるポルトの規定に適合するもの又はこれと同等以上の引張強度を有するものとする。 |
□ | 天井構成部材に天井面の段差その他の地震時に有害な応力集中が生じるおそれのある部分を設けない。 |
□ | 天井板にはせっこうボード (JIS A6901-2014) のうち厚さ9.5mm以上のもの又はこれと同等以上の剛性及び強度を有するものを用いる。 |
□ | 天井面構成部材 (天井板を除く。)にはJIS A6517-2010に定める天井下地材の規定に適合するもの又はこれと同等以上の剛性及び強度を有するものを用いる。 |
□ | 吊り材は、埋込みインサートを用いた接合、 ボルト接合その他これらに類する接合方法により構造耐力上主要な部分等に緊結する。 |
□ | 吊り材は、天井面構成部材を鉛直方向に支持し、かつ、 天井面の面積が1㎡当たりの平均本数を1本以上とし、釣合い良く配置する。 |
□ | 天井面は水平とする。 |
□ | 吊り長さは、 1.5m (吊り材の共振を有効に防止する補剛材等を設けた場合にあっては、3m) 以下とする。 |
□ | 天井面の長さは、張り間方向及び桁行方向それぞれについて、計算した数値(最大20m) 以下とする。 |
□ | 天井面の周囲には、壁等を天井面の端部との間に隙間が生じないように設けること。 この場合、天井面構成部材並びに天井面構成部材に地震その他の震動及び衝撃により生ずる力を負担させるものの単位面積重量に、天井を設ける階に応じて算出した水平震度以上の数値を乗じて得られた水平方向の地震力を壁等に加えた場合に、構造耐力上支障のある変形及び損傷が生じないことを確かめること |
□ | 天井面を貫通して地震時に天井面と一体的に振動しないおそれのあある部分が設けられている場合は、天井面と当該部分との間に、5cm(当該部分が柱である場合は、2.5cm) 以上の隙間を設けること |
□ | 斜め部材を設けない。 |
□ | 屋外に面しないものとする。 |
計算ルート
計算ルートでは、まれに発生する地震によって天井に作用する加速度や震度に対し、「天井を構成する各部材および接合部が損傷しないこと」「周囲の壁などとの間に十分な隙間(クリアランス)が確保されていること」を、以下のいずれかの方法で確認します。
- 水平震度法
- 簡易スペクトル法
- 応答スペクトル法
水平震度法
check | 技術基準 |
□ | 天井面構成部材の各部分が、地震の震動により生じる力を構造耐力上有効に当該天井面構成部材の他の部分に伝えることができる剛性及び強度を確かめる。 |
□ | 天井を設ける階に応じ定められた水平震度を用いて、天井面に作用する慣性力を計算し、天井を構成する各部材及び接合部が損傷しないことを確かめる。 |
□ | 天井面構成部材と壁等との間に6cm以上の隙間を設ける。 |
□ | 吊り長さ3mを超える場合、 6cm+ (吊り長さ-3m)×1.5/200以上 |
□ | 風圧並びに地震以外の震動及び衝撃を適切に考慮する。 |
簡易スペクトル法・応答スペクトル法
check | 技術基準 |
□ | 天井面構成部材の各部分が、地震の震動により生じる力を構造耐力上有効に当該天井面構成部材の他の部分に伝えることができる剛性及び強度を確かめる。 |
□ | 天井が取り付く部分に生じる水平方向の加速度によって天井面に作用する力を求め、 天井の許容耐力を超えないことを確かめる。 |
□ | 天井面構成部材と壁等と隙間が天井面に作用する力及び天井を設ける階に生じる層変位を考慮して算出した値以上であることを確かめる。 |
□ | 風圧並びに地震以外の震動及び衝撃を適切に考慮する。 |
大臣認定ルート
大臣認定ルートには、以下の2パターンがあります。
- 時刻歴応答計算による特定天井として建築基準法20条に基づく大臣認定を受けるもの
- 特殊な構造の特定天井として、建築基準法施行令第39条に基づき大臣認定を受けるもの
増改築や大規模修繕・模様替えにおける対策
既存建築物に「特定天井」が設けられている場合、増改築や大規模修繕・模様替えをおこなう際には、特定天井の技術基準が適用されます。
ただし、建築基準法20条が既存不適格となる建築物において増改築等をおこなう場合、一部制限の緩和が認められていますね。
建築基準法施行令137条の2に定められた範囲の増改築については、技術基準に代わる措置として「落下防止対策」を講じればOK。
check | 技術基準 |
□ | 落下防止措置部材を構成する材料の品質(強度、耐久性等)が明らかにされていること |
□ | 天井材が落下しない状態で地震力が作用した時に、 落下防止措置部材が天井材に作用する地震力を負担しない構造であること |
□ | ネット等を面的に張る場合は、 必要に応じて外周部に補強ケーブルを組み合わせるものとして、これらの材料に張力を導入して荷重及び外力を常時負担することのできる平面又は曲面とすること |
□ | 落下防止措置部材の吊り元は、剛性及び強度を持った構造とすること |
□ | 落下防止措置部材の吊り元は、天井面に地下高さに設けること |
□ | 落下防止措置部材は、落下するおそれのある天井面構成部材を適切に保持する構造であること |
□ | 落下防止措置部材の片側又は両側の端部は、構造耐力上主要な部分等又は吊り材に取り付けること |
□ | 落下防止措置部材は、天井全体に均等に設けること |
特定天井について建築基準法を読む
特定天井の技術基準は、建築基準法施行令39条に定められています。
「建築基準法を読みたくない」という方は、建築法規PRO2024 図解建築申請法規マニュアルや建築申請memo2024といった書籍で、図や表を見て理解を深めていきましょう。
(屋根ふき材等)
第三十九条
中略
3 特定天井(脱落によつて重大な危害を生ずるおそれがあるものとして国土交通大臣が定める天井をいう。以下同じ。)の構造は、構造耐力上安全なものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとしなければならない。
4 特定天井で特に腐食、腐朽その他の劣化のおそれのあるものには、腐食、腐朽その他の劣化しにくい材料又は有効なさび止め、防腐その他の劣化防止のための措置をした材料を使用しなければならない。
「国土交通大臣が定めた構造方法」は、平成25年国土交通省告示771号に記載。
特定天井及び特定天井の構造耐力上安全な構造方法を定める件
建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第39条第3項の規定に基づき、特定天井を第二に、特定天井の構造方法を第三に定める。
以下省略
まとめ
- 特定天井とは、以下の項目すべてに当てはまる吊り天井。
- 居室や廊下など人が日常立ち入る場所に設けられるもの
- 高さが6mを超える天井の部分で、 水平投影面積が200m²をこえる部分を含むもの
- 単位面積質量が2kg/m² をこえるもの
- 「特定天井」は、平成26年4月から施行。
- 特定天井は、以下のいずれかの方法によって建築基準法への適合性を検証。
- 仕様ルート
- 仕様ルート(隙間なし天井)
- 計算ルート
- 大臣認定ルート
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