
- 延焼ラインを袖壁や塀で緩和する方法はある?
- 防火設備をひとつでも無くして、コストを削減したい。
- 準防火地域でも延焼ラインは緩和できる?
こんな疑問に答えます。
本記事では、延焼ラインを『袖壁・塀』によって緩和する方法を解説。
『防火塀』や『袖壁』の位置・構造について、全国どこでも使える建築基準法の知識が身につくかと。

このサイトは、確認検査機関で意匠審査を担当していた一級建築士が運営しています。
住宅から特殊建築物まで、1000件以上の設計相談を受けて得た建築基準法の知識を、できるだけわかりやすくまとめていくので、ご参考までにどうぞ。
延焼ラインを袖壁や防火塀で緩和する方法
延焼ライン(延焼のおそれのある部分)を遮るように、防火性能のある『塀』や『袖壁(そでかべ)』を設ければ、開口部の防火設備を免除することができます。
ここからは『防火塀』等の位置や構造を具体的に解説していきます。
防火上有効な『袖壁・塀』の設置位置
『防火塀・防火袖壁』ともに、開口部にかかる延焼ラインを遮るように設置する必要があります。
下図で見ると、隣地境界線から出ている延焼ラインを遮るように、『袖壁』や『塀』が設けられていることが一目でわかると思います。
『防火塀』の設置位置の基準【平面図】

平面的に見ると、上図のように防火塀を設置。
防火設備の設置を免除したい開口部の端部から、隣地境界線まで3mの円弧を描きます。
開口部の端部から隣地境界まで、3mとなる位置(点線)に防火塀を建てれば、開口部が延焼ラインから遮られるため防火設備が不要。
3mという距離は、隣地境界等からの延焼ラインの長さによって決まります。

1階であれば3m、2階以上の階であれば5mですね。
防火塀で2階以上の階の開口部に適用することはないと思うので、ここでは1階の開口部を想定して図示しています。
『防火塀』の設置位置の基準【断面図】

防火塀の設置基準を断面的に図示すると、上記のようなイメージ。
平面図で検討するプロセスと同じで、開口端部から隣地境界まで最短3mとなる部分(点線)を、遮蔽するように『防火塀』を計画。

延焼ラインを遮るために、開口部よりも高い塀が必要です。
『防火袖壁』の設置位置の基準【平面図】
防火そで壁の設置位置を平面的に示すと、以下のとおり。

延焼ラインの隣地境界等からの長さは、1階であれば3m、2階以上の階は5mです。
もし、2階以上の階にある開口部を『袖壁』によって免除したい場合は、隣地境界線まで5mの延焼ラインを図示し、遮るように袖壁を伸ばさなくてはいけません。

1階に比べて、2階以上の階は『袖壁』を長くする必要があります。
防火上有効な『袖壁・塀』の構造
塀・袖壁は、以下のいずれかの構造が求められます。
- 防火構造
- 準耐火構造
- 耐火構造
『防火塀・袖壁』の仕様は“防火避難規定の解説”による
上記で解説した『防火塀・袖壁』の基準は、“防火避難規定の解説2023”という書籍を参照し、内容をまとめたもの。
情報源である“防火避難規定の解説”を必ず参照してください。
建築基準法の防火避難規定について、全国共通の見解をまとめた本なので、どの市町村で設計をする場合でも使えます。

つまり、今回紹介している防火塀の設置基準は、北は北海道から、南は沖縄まで、日本各地で使える設計手法ということですね。

確認申請に『防火塀・袖壁』を明示する方法
確認申請においては、『防火塀・袖壁』が延焼ラインを有効に遮っていることがわかるように、以下の図書に明示しましょう。
- 配置図・平面図:水平方向の延焼ラインに対する『塀・袖壁』位置を示す
- 断面図:垂直方向の延焼ラインに対する『塀・袖壁』の位置を示す
- 耐火リスト:『塀・袖壁』の耐火構造等の仕様を示す
まとめ
- 延焼ラインを遮るように『塀』や『袖壁』を設ければ、開口部の防火設備を免除可能。
- 塀・袖壁は、開口部にかかる延焼ラインを遮るように設置すること。
- 塀・袖壁は、以下のいずれかの構造とする。
- 防火構造
- 準耐火構造
- 耐火構造

