- キッチンの内装制限を緩和する方法は?
- 壁や天井の仕上げにこだわりたい!
- ガスコンロのあるLDKに、準不燃材料以外も使用できる?
こんな悩みに答えます。
本記事では、火気使用室(ガスコンロのあるキッチン等)の内装制限を緩和する方法を解説。
理解すべきは「国土交通省告示225号」です。
✓ 緩和のポイント
- コンロ周囲の内装を制限する代わりに、その他の壁や天井に難燃材料等が使える
- コンロ周りの内装制限は「長期加熱部分」と「短期加熱部分」2つのエリアに分かれる
たとえば、LDKの内装仕上げを選ぶときに覚えておきたい知識です。
このサイトは、確認検査機関で審査を担当していた一級建築士が運営。
住宅から特殊建築物まで1000件以上の設計相談を受けた経験をもとに、建築基準法の知識をわかりやすくまとめていきます。ご参考までにどうぞ。
火気使用室の内装制限の緩和とは
火気使用室の壁・天井にかかる内装制限は、国土交通省告示225号の基準を満たすことによって、緩和することができます。
おおまかに言うと、以下の2ステップ。
- コンロまわりの内装を燃えにくくする。
- 室内の壁・天井は難燃材料等の使用が可能に。
令和2年12月まで、戸建て住宅にしか告示の緩和は使えませんでした。
建築基準法の改正によって、対象となる建物用途が拡大。
緩和が使える室
告示225号の緩和が使えるのは、以下を除く火気使用室です。
- 令128条の5第1項~5項によって、壁・天井を準不燃材料等で仕上げなければならない室
- ホテル・旅館・飲食店等の厨房その他の室
①は、建築基準法の規定によって、火気使用の有無に関わらず内装制限の対象となる場合「告示225号の緩和が使えない」という意味。
たとえば、以下のような建築物が当てはまります。
- 一定規模以上の特殊建築物
- 無窓の居室
- 低層の大規模建築物
上記はほんの一例。詳しくは、内装制限とは|建築基準法をわかりやすく解説【緩和条件も紹介】の記事をご確認ください。
緩和の要件
緩和の要件は、まとめると4つ。以下すべてに適合させる必要があります。
- コンロ:一口における一秒間あたりの発熱量が4.2kW以下
- 長期加熱部分(水平25㎝、垂直80㎝の円すいの範囲):下地と内装仕上げを特定不燃材料にする
- 短期加熱部分(水平80㎝、垂直235㎝の円錐の範囲など):下地と内装仕上げを指定された材料にする
- 長期加熱部分、短期加熱部分以外:内装仕上げは難燃材料等にする
①の「コンロの発熱量」はメーカーの発行した仕様書をみれば確認できます。
問題は②〜④の基準ですね。
ここからは、長期加熱部分・短期加熱部分の範囲や必要とされる基準について、図をまじえて解説していきます。
長期加熱部分の範囲・内装制限
長期加熱部分とは、コンロからの水平距離25㎝、垂直距離80㎝の円すい状の範囲です。
調理をするときに長い時間、加熱されているエリアですね。
✓ 長期加熱部分の内装に関する規制
- 下地:特定不燃材料
- 仕上げ:特定不燃材料
特定不燃材料とは…
- コンクリート
- れんが
- 瓦
- 陶磁器質タイル
- 繊維強化セメント板
- 厚さが3㎜以上のガラス繊維混入セメント板
- 厚さが5㎜以上の繊維混入ケイ酸カルシウム板
- 鉄鋼
- 金属板
- モルタル
- しっくい
- 石
- 厚さが12㎜以上のせっこうボード(ボード用原紙の厚さが0.6㎜以下のものに限る。)
- ロックウール
- グラスウール板
詳しくは、特定不燃材料とは|内装制限の緩和(告示225号)に必要な仕上げの記事をご確認ください。
短期加熱部分の範囲・内装制限
短期加熱部分は「コンロから天井までの距離」によって範囲のとり方が2つに分かれます。
- コンロから天井までの距離が235㎝以上
- コンロから天井までの距離が235㎝未満①コンロから天井までの垂直距離が235㎝以上
①コンロから天井までの垂直距離が235㎝以上
②コンロから天井までの距離 H≦235㎝
✓ 【図解】155㎝≦コンロから天井までの垂直距離≦235㎝
✓ 【図解】コンロから天井までの垂直距離が155㎝未満
エリア分けは天井の高さによって異なるものの、求められる内装の仕様は同じ。
短期加熱部分の内装は、①または②のいずれかとします。
✓ 短期加熱部分の内装に関する規制①
- 下地:特定不燃材料
- 仕上げ:特定不燃材料
✓ 短期加熱部分の内装に関する規制②
- 下地:規制なし
- 仕上げ:以下のいずれか
- 厚さ12.5㎜以上のせっこうボード
- 厚さ5.6mm以上の繊維混入ケイ酸カルシウム板、または繊維強化セメント板の2枚貼り
- 厚さが12㎜以上のモルタルを塗ったもの
長期加熱部分、短期加熱部分以外の仕上げ
長期加熱・短期加熱部分以外の範囲は、内装仕上げを下記のいずれかとします。
- 難燃材料
- 告示1439号1項二号による材料
✓ 告示1439号1項二号による材料とは(※以下のいずれか)
- 木材
- 合板
- 構造用パネル
- パーティクルボード
- 繊維版
ガスコンロから離れた位置であれば、木材なども仕上げとして使える点が、この告示225号のメリットですね。
「火気使用室の内装制限の緩和」を建築基準法で読む
火気使用室の内装制限の緩和について書かれているのは、国土交通省告示第225号です。
「法文を読みたくない」という場合は、建築法規PRO2024 図解建築申請法規マニュアルや建築申請memo2024といった書籍で、図や表を見て理解を深めていきましょう。
建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)第百二十九条〔現行=一二八条の五=平成二八年一月政令六号により改正〕第一項第二号ロの規定に基づき、準不燃材料でした内装の仕上げに準ずる仕上げを次のように定める。
準不燃材料でした内装の仕上げに準ずる仕上げを定める件
第一 建築基準法施行令(以下「令」という。)第百二十八条の五第一項第二号ロに規定する準不燃材料でした内装の仕上げに準ずる材料の組合せは、令第百二十八条の四第四項に規定する内装の制限を受ける調理室等(令第百二十八条の五第一項から第五項までの規定によってその壁及び天井(天井のない場合においては、屋根。以下同じ。)の室内に面する部分(回り縁、窓台その他これらに類する部分を除く。)の仕上げを同条第一項第二号に掲げる仕上げとしなければならない室及びホテル、旅館、飲食店等の厨房その他これらに類する室を除く。)にあっては、次の各号に掲げる当該室の種類に応じ、それぞれ当該各号に定めるものとする。
一 こんろ(専ら調理のために用いるものであって、一口における一秒間当たりの発熱量が四・二キロワット以下のものに限る。以下同じ。)を設けた室(こんろの加熱部の中心点を水平方向に二十五センチメートル移動したときにできる軌跡上の各点を、垂直上方に八十センチメートル移動したときにできる軌跡の範囲内の部分(回り縁、窓台その他これらに類する部分を含む場合にあっては、当該部分の仕上げを不燃材料(平成十二年建設省告示第千四百号第一号から第八号まで、第十号及び第十二号から第十七号までに規定する建築材料に限る。以下「特定不燃材料」という。)でしたものに限る。)に壁又は天井が含まれる場合にあっては、当該壁又は天井の間柱及び下地を特定不燃材料としたものに限る。) 次に定める材料の組合せであること。
イ こんろの加熱部の中心点から天井までの垂直距離(以下この号において「こんろ垂直距離」という。)が二百三十五センチメートル以上の場合にあっては、当該中心点を水平方向に八十センチメートル移動したときにできる軌跡上の各点を、垂直上方に二百三十五センチメートル移動したときにできる軌跡の範囲内の部分(回り縁、窓台その他これらに類する部分を含む場合にあっては、当該部分の仕上げを特定不燃材料でしたものに限る。以下「こんろ可燃物燃焼部分」という。)の壁及び天井の室内に面する部分の仕上げを、次の(1)又は(2)に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ当該(1)又は(2)に定めるところによりするものとする。
(1) こんろ可燃物燃焼部分の間柱及び下地を特定不燃材料とした場合 特定不燃材料ですること。
(2) (1)に規定する場合以外の場合 次の(i)から(iii)までのいずれかに該当するものですること。
(i) 厚さが十二・五ミリメートル以上のせっこうボードを張ったもの
(ii) 厚さが五・六ミリメートル以上の繊維混入ケイ酸カルシウム板又は繊維強化セメント板を二枚以上張ったもの
(iii) 厚さが十二ミリメートル以上のモルタルを塗ったもの
ロ こんろ垂直距離が二百三十五センチメートル未満の場合にあっては、こんろの加熱部の中心点を水平方向に八十センチメートル移動したときにできる軌跡上の各点を、垂直上方にこんろ垂直距離だけ移動したときにできる軌跡の範囲内の部分及び当該中心点の垂直上方にある天井部の点を二百三十五センチメートルからこんろ垂直距離を減じた距離だけ移動したときにできる軌跡の範囲内の部分(回り縁、窓台その他これらに類する部分を含む場合にあっては、当該部分の仕上げを特定不燃材料でしたものに限る。)の壁及び天井の室内に面する部分の仕上げを、イ(1)又は(2)に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ当該(1)又は(2)に定めるところによりするものとする。
ハ イ又はロの規定にかかわらず、こんろの加熱部の中心点を水平方向に二十五センチメートル移動したときにできる軌跡上の各点を、垂直上方に八十センチメートル移動したときにできる軌跡の範囲内の部分の壁及び天井の室内に面する部分の仕上げを特定不燃材料でするものとする。
ニ イ又はロに規定する部分以外の部分の壁及び天井の室内に面する部分の仕上げを難燃材料又は平成十二年建設省告示第千四百三十九号第一第二号に規定する木材等(以下「難燃材料等」という。)でするものとする。
令和 2 年 12 月 28 日付の技術的助言によって、告示225号による緩和が戸建住宅以外にも適用できるようになりました。
準不燃材料でした内装の仕上げに準ずる仕上げを定める件の一部を改正する件の施行について(技術的助言)
中略
2.告示改正の概要
建築物の用途等に関わらず、一定の火気使用設備(こんろ、いろり等)が設けられた室については、以下に該当する場合を除き、本告示の適用対象とすることとした。
①令第 128 条の5第1項から第5項までの規定によって壁及び天井の室内に面する部分の仕上げを準不燃材料でした仕上げ又はこれに準ずる仕上げとしなければならない室
②ホテル、旅館、飲食店等の厨房その他これらに類する室
(適用対象外とする室について)
上記①に該当する室については、火気使用設備の有無に関わらず内装の制限を受けるものであることから、本告示の適用対象外とした。
また、こんろ周辺の仕上げを強化しなければならない範囲については、こんろの発熱量だけでなく、こんろで使用する調理器具の大きさによっても変わりうることから、住宅において一般的に使用される調理器具よりも大きな器具をこんろで使用することが想定される上記②に該当する室についても、本告示の適用対象外とした。
告示1439号1項二号を抜粋しました。
難燃材料でした内装の仕上げに準ずる仕上げを定める件〔平成十二年五月三十一日号外建設省告示第千四百三十九号〕
第一 中略
一 中略
二 壁の室内に面する部分(回り縁、窓台その他これらに類する部分を除く。)の仕上げにあっては、木材、合板、構造用パネル、パーティクルボード若しくは繊維版(これらの表面に不燃性を有する壁張り下地用のパテを下塗りする等防火上支障がないように措置した上で壁紙を張ったものを含む。以下「木材等」という。)又は木材等及び難燃材料ですること。
第二 建築基準法施行令第百二十八条の五第一項第一号ロ及び同条第四項第二号に規定する難燃材料でした内装の仕上げに準ずる仕上げの方法は、第一第二号の木材等に係る仕上げの部分を次に定めるところによりすることとする。ただし、実験によって防火上支障がないことが確かめられた場合においては、この限りでない。
一 木材等の表面に、火炎伝搬を著しく助長するような溝を設けないこと。
二 木材等の取付方法は、次のイ又はロのいずれかとすること。ただし、木材等の厚さが二十五ミリメートル以上である場合においては、この限りでない。
イ 木材等の厚さが十ミリメートル以上の場合にあっては、壁の内部での火炎伝搬を有効に防止することができるよう配置された柱、間柱その他の垂直部材及びはり、胴縁その他の横架材(それぞれ相互の間隔が一メートル以内に配置されたものに限る。)に取り付け、又は難燃材料の壁に直接取り付けること。
ロ 木材等の厚さが十ミリメートル未満の場合にあっては、難燃材料の壁に直接取り付けること。
省略
まとめ
- 火気使用室の壁・天井にかかる内装制限は、国土交通省告示225号の基準を満たすことによって、緩和できる。
- 告示225号の緩和が使えるのは、以下を除く火気使用室。
- 令128条の5第1項~5項の規定によって内装制限のかかる室
- ホテル・旅館・飲食店の厨房
- 緩和の要件
- コンロ:一口における一秒間あたりの発熱量が4.2kW以下
- 長期加熱部分(水平25㎝、垂直80㎝の円すいの範囲):下地と内装仕上げを特定不燃材料にする
- 短期加熱部分(水平80㎝、垂直235㎝の円錐の範囲など):下地と内装仕上げを指定された材料にする
- 長期加熱部分、短期加熱部分以外:内装仕上げは難燃材料等にする
人気記事 転職3回の一級建築士が語る。おすすめ転職サイト・転職エージェント