- 住宅の居室に必要な採光窓の面積は、緩和できる?
- 照明器具が付いていればいい?
- 確認申請では、どのように対応する?
こんな疑問に答えます。
本記事では、「住宅の居室に求められる採光窓の緩和基準」についてわかりやすく解説。
「敷地が狭く建築基準法に定められた採光の基準を満たすことができない」「デザインに不必要な窓は減らしたい」という設計者に役立つ情報です。
このサイトは、確認検査機関で審査を担当していた一級建築士が運営。
住宅から特殊建築物まで1000件以上の設計相談を受けた経験をもとに、建築知識をわかりやすくまとめていきます。ご参考までにどうぞ。
住宅の採光の緩和基準とは
住宅の居室には「窓面積≧床面積×1/7」を満たす採光上有効な開口部が必要。ただし、以下の基準を満たすことで、「窓面積≧床面積×1/10」まで緩和することができます。
- 床面において50lx(ルクス)以上の照度を保つ照明設備を設けること
- 調光タイプの照明設備は、出力最大時に床面50lx以上の照度を確保すること
この緩和規定は建築基準法改正により2023年4月1日に施行されました。
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照明設備の設置位置
照明設備は、床面すべてにおいて50lx以上の照度が確保できる位置に設置します。
照明設備の仕様
照明設備の種別や形状に関する制限はありません。
一般的な照明である「白熱灯」「LED」どちらでもOK。
形状にも規制はないため、「天井埋め込み型」「吊り下げ型」など、どのような器具も使用することができます。
確認申請図面に記載すべき内容
採光緩和を受ける場合、確認申請図書の「平面図」または「電気設備の詳細図」等に以下の内容を記入しましょう。
- 照明設備の設置位置
- 「50lx以上の照明設備を設置する」という特記事項
完了検査で求められる基準
完了検査では、確認申請図面の位置に照明設備が設置されていることを確認します。
照明器具用のシーリングローゼット等を確認検査員が目視できればOK。
建築基準法を読む
採光窓が必須となる居室は、建築基準法施行令19条に規定されています。
「建築基準法を読みたくない」という方は、建築法規PRO2024 図解建築申請法規マニュアルや建築申請memo2024といった書籍で、図や表を見て理解を深めていきましょう。
(居室の採光)
第十九条中略
3 法第二十八条第一項の政令で定める割合は、次の表の上欄に掲げる居室の種類の区分に応じ、それぞれ同表の下欄に掲げる割合とする。ただし、同表の(一)の項から(六)の項までの上欄に掲げる居室のうち、国土交通大臣が定める基準に従い、照明設備の設置、有効な採光方法の確保その他これらに準ずる措置が講じられているものにあつては、それぞれ同表の下欄に掲げる割合から十分の一までの範囲内において国土交通大臣が別に定める割合とする。
居室の種類 割合 (一) 幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校又は幼保連携型認定こども園の教室 五分の一 (二) 前項第一号に掲げる居室 (三) 住宅の居住のための居室 七分の一 (四) 病院又は診療所の病室 (五) 寄宿舎の寝室又は下宿の宿泊室 (六) 前項第三号及び第四号に掲げる居室 (七) (一)の項に掲げる学校以外の学校の教室 十分の一 (八) 前項第五号に掲げる居室
「照明設備の設置、有効な採光方法の確保その他これらに準ずる措置」は、国土交通省告示第86号に定められています。
国土交通省告示第86号
建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第19条第3項ただし書の規定に基づき、照明設備の設置、有効な採光方法の確保その他これらに準ずる措置の基準及び居室の窓その他の開口部で採光に有効な部分の面積のその床面積に対する割合で別に定めるものを次のように定める。
照明設備の設置、有効な採光方法の確保その他これらに準ずる措置の基準等を定める件
第1 照明設備の設置、有効な採光方法の確保その他これらに準ずる措置の基準
一 幼稚園の教室、幼保連携型認定こども園の教室若しくは保育室又は保育所の保育室にあつては、床面において二百ルックス以上の照度を確保することができるよう照明設備を設置すること。
二 小学校、中学校、義務教育学校、高等学校又は中等教育学校の教室にあつては、次のイ及びロに定めるものとする。
イ 床面からの高さが50センチメートルの水平面において200ルックス以上の照度を確保することができるよう照明設備を設置すること。
ロ 窓その他の開口部で採光に有効な部分のうち床面からの高さが五十センチメートル以上の部分の面積が、当該教室の床面積の七分の一以上であること。
三 小学校、中学校、高等学校又は中等教育学校の音楽教室又は視聴覚教室で建築基準法施行令第20条の2に規定する技術的基準に適合する換気設備が設けられたものにあつては、前号イに定めるものとする。
四 住宅の居住のための居室にあつては、床面において五十ルックス以上の照度を確保することができるよう照明設備を設置すること。
第2 窓その他の閉口部で採光に有効な部分の面積のその床面積に対する割合で国土交通大臣が別に定めるもの
一 第1第一号又は第二号に定める措置が講じられている居室にあつては、7分の1とする。
二 第一第三号又は第四号に定める措置が講じられている居室にあつては、10分の1とする。
まとめ
- 住宅の居室において「窓面積≧床面積×1/7」→「窓面積≧床面積×1/10」へ緩和する基準
- 床面50lx以上の照度を保つ照明設備を設置(調光タイプは出力最大時に床面50lx以上を確保)
- 照明設備は、床面すべてにおいて50lx以上の照度が確保できる位置に設置。
- 照明設備の種別や形状に関する制限なし。
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