都市計画法29条(開発許可)をわかりやすく解説【43条との違い】

都市計画法29条 建築基準法まとめ
  • 都市計画法29条の開発許可って何?
  • どんな敷地で造成行為をすると許可が必要になる?
  • 都市計画法43条との違いが知りたい。

こんな疑問に答えます。

 

本記事では、「都市計画法29条の開発行為」についてわかりやすく解説。

市街化区域で開発行為を実施する事業者や、開発許可を取得している敷地に建築物をつくる方に役立つ情報です。

このサイトは、確認検査機関で審査を担当していた一級建築士が運営。

住宅から特殊建築物まで1000件以上の設計相談を受けた経験をもとに、建築知識をわかりやすくまとめていきます。ご参考までにどうぞ。

Sponsored Links

都市計画法29条(開発行為の許可)とは

都市計画法29条は、一定規模以上の開発行為をおこなう場合、都道府県知事等※1の許可が必要であることを定めています。

※ 1:都道府県知事、政令指定都市長、中核市長、知事事務委任市長

開発行為とは、主に建築物や特定工作物(コンクリートプラントやゴルフコースなど)の建設のために、土地の形や高さを変えたり、道路や下水などの公共施設を整備したりすること。

都市の健全な発展と秩序ある整備を図るために、土地利用の適正化や公共施設の確保をうながしているわけですね。

Sponsored Links

都市計画法29条1項とは

都市計画法29条1項により、都市計画区域および準都市計画区域において開発行為をおこなう場合は原則として、都道府県知事等※1の許可が必要となります。

※ 1:都道府県知事、政令指定都市長、中核市長、知事事務委任市長

ただし、開発許可の不要な規模や行為もあります。

開発許可の不要な規模・行為(都市計画法29条1項ただし書き)

  1. 市街化区域内、非線引き都市計画区域内、準都市計画区域内で政令で定める規模未満の開発行為
  2. 農林漁業を営む者の住居の建築を目的とした開発行為
  3. 公益上必要な建築物(駅舎、図書館、公民館、変電所など)の建築を目的とした開発行為
  4. 都市計画事業の施行として行う開発行為
  5. 土地区画整理事業の施行として行う開発行為
  6. 市街地再開発事業の施行として行う開発行為
  7. 住宅街区整備事業の施行として行う開発行為
  8. 防災街区整備事業の施行として行う開発行為
  9. 公有水面埋立法第2条第1項の免許を受けた埋立地であつて、まだ同法第22条第2項の告示がないものにおいて行う開発行為
  10. 非常災害のため必要な応急措置として行う開発行為
  11. 通常の管理行為、軽易な行為その他の行為で政令で定めるもの

多くの建築計画は「①:市街化区域等で政令で定める規模未満の開発行為」または「⑪:通常の管理行為、軽易な行為」に該当するため、開発許可が不要。

よって、ここからは①と⑪の基準について詳しく解説します。

 

「1.市街化区域等で政令で定める規模未満の開発行為」とは

市街化区域内、非線引き都市計画区域内、準都市計画区域内で開発許可が必要となる規模は以下のとおり。

  • 市街化区域:1,000㎡以上(条例で300㎡まで引き下げできる)
    • 大都市圏のうち以下の区域は500㎡以上
      • 首都圏:既成市街地、近郊整備地帯
      • 近畿圏:既成都市区域、近郊整備区域
      • 中部圏:都市整備区域
  • 非線引き都市計画区域・準都市計画区域:3,000㎡以上(条例で300㎡まで引き下げできる)

都市計画区域外

都市部の市街化区域では、敷地面積500㎡で開発許可が必要となるケースもあるため注意しましょう。

 

「11.軽易な行為として政令で定めるもの」とは

開発行為に該当しない軽易な行為をまとめると以下のとおり。

  • 仮設建築物の建築
  • 土木事業などで一時的に使用するための第一種特定工作物の建設
  • 車庫、物置などの附属建築物の建築
  • 建築物の増築・特定工作物の増設で床面積の合計または築造面積が10㎡以内
  • 都市計画法29条1項ニ号または三号に規定する建築物以外の建築物の改築で、用途の変更をともなわないもの、または特定工作物の改築。このほか、建築物の改築で床面積の合計が10㎡以内であるもの
  • 当該開発区域の周辺にある市街化調整区域の居住者が「日常生活に必要な物品の販売などを営む店舗・事業場」で、その延べ面積が50㎡以内のもの(業務エリアが延べ面積の50%以上必要)を新築するために自ら営む開発行為で、規模が100㎡以内

 

都市計画法29条2項とは

都市計画法29条2項により、都市計画区域外・準都市計画区域外で1ha(10,000㎡)以上の開発行為をおこなう場合、都道府県知事等※1の許可が必要です。

※ 1:都道府県知事、政令指定都市長、中核市長、知事事務委任市長

ただし、以下のいずれかに当てはまる場合は開発許可が不要。

  • 農林漁業を営む者の住居の建築を目的とした開発行為
  • 公益上必要な建築物(駅舎、図書館、公民館、変電所など)の建築を目的とした開発行為
  • 都市計画事業の施行として行う開発行為
  • 公有水面埋立法第2条第1項の免許を受けた埋立地であつて、まだ同法第22条第2項の告示がないものにおいて行う開発行為
  • 非常災害のため必要な応急措置として行う開発行為
  • 通常の管理行為、軽易な行為その他の行為で政令で定めるもの

 

都市計画法29条3項とは

開発区域が、以下の区域で2つ以上またがるとき、都市計画法施行令22条の3に当てはまると開発許可が必要です。

  • 市街化区域
  • 区域区分が定められていない都市計画区域
  • 準都市計画区域
  • 都市計画区域・準都市計画区域外の区域

特に、市街化調整区域が一部でも含まれるときは、市街化区域で1,000㎡未満や都市計画区域外で1ha未満でも、開発許可が必要となります。

 

都市計画法32条とは【公共施設の管理者の同意等】

都市計画法第32条では、開発をスムーズかつ適切にすすめるため、公共施設の管理者との同意・協議が義務づけられています。

おおまかな流れは以下のとおり。

  1. 事前相談
    • 開発計画を具体化する前に、土地利用計画図を役所に示し、協議を行います。
    • 道路幅員、緑地配置、排水などのチェックを受けながら計画を確定させます。
  2. 都市計画法32条 同意・協議
    • 開発行為に関連する公共施設(道路・公園・下水など)の管理者と協議を行います。
    • 役所が問題ないかをチェックし、同意を得ます。
  3. 都市計画法29条許可
    • 許可申請の段階です。
    • 事前相談と32条同意・協議で計画が具体的に固まっているため、役所側の許可手続きと考えてよいでしょう。
  4. 開発工事(造成工事)
    • 開発許可を取得したら、実際の工事を実施。
    • 騒音や粉塵などに対処しながら計画通りに進めます。
  5. 竣工検査
    • 工事が完了したら、役所の検査を受けます。
  6. 検査済証発行
    • 検査が完了したら、検査済証が交付され、開発工事は完了となります。

 

都市計画法43条とは【市街化調整区域の建築制限】

都市計画法43条では、「市街化調整区域における開発行為をともなわない建築許可」について示されています。

市街化調整区域では基本的に住居の建築が認められません。

ただし、市街化区域から1km圏内や市街化区域まで4mの道路がつながっている場合など、特定の条件を満たす場合には建築が可能となります。

詳しくは、市街化調整区域とは|建築許可と開発許可の基準・調べ方を詳しく解説をご確認ください。

 

都市計画法を読む

都市計画法29条および32条の本文は下記のとおり。

(開発行為の許可)

第二十九条 都市計画区域又は準都市計画区域内において開発行為をしようとする者は、あらかじめ、国土交通省令で定めるところにより、都道府県知事(地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市又は同法第二百五十二条の二十二第一項の中核市(以下「指定都市等」という。)の区域内にあつては、当該指定都市等の長。以下この節において同じ。)の許可を受けなければならない。ただし、次に掲げる開発行為については、この限りでない。

一 市街化区域、区域区分が定められていない都市計画区域又は準都市計画区域内において行う開発行為で、その規模が、それぞれの区域の区分に応じて政令で定める規模未満であるもの

二 市街化調整区域、区域区分が定められていない都市計画区域又は準都市計画区域内において行う開発行為で、農業、林業若しくは漁業の用に供する政令で定める建築物又はこれらの業務を営む者の居住の用に供する建築物の建築の用に供する目的で行うもの

三 駅舎その他の鉄道の施設、図書館、公民館、変電所その他これらに類する公益上必要な建築物のうち開発区域及びその周辺の地域における適正かつ合理的な土地利用及び環境の保全を図る上で支障がないものとして政令で定める建築物の建築の用に供する目的で行う開発行為

四 都市計画事業の施行として行う開発行為

五 土地区画整理事業の施行として行う開発行為

六 市街地再開発事業の施行として行う開発行為

七 住宅街区整備事業の施行として行う開発行為

八 防災街区整備事業の施行として行う開発行為

九 公有水面埋立法(大正十年法律第五十七号)第二条第一項の免許を受けた埋立地であつて、まだ同法第二十二条第二項の告示がないものにおいて行う開発行為

十 非常災害のため必要な応急措置として行う開発行為

十一 通常の管理行為、軽易な行為その他の行為で政令で定めるもの

2 都市計画区域及び準都市計画区域外の区域内において、それにより一定の市街地を形成すると見込まれる規模として政令で定める規模以上の開発行為をしようとする者は、あらかじめ、国土交通省令で定めるところにより、都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、次に掲げる開発行為については、この限りでない。

一 農業、林業若しくは漁業の用に供する政令で定める建築物又はこれらの業務を営む者の居住の用に供する建築物の建築の用に供する目的で行う開発行為

二 前項第三号、第四号及び第九号から第十一号までに掲げる開発行為

3 開発区域が、市街化区域、区域区分が定められていない都市計画区域、準都市計画区域又は都市計画区域及び準都市計画区域外の区域のうち二以上の区域にわたる場合における第一項第一号及び前項の規定の適用については、政令で定める。

(公共施設の管理者の同意等)

第三十二条 開発許可を申請しようとする者は、あらかじめ、開発行為に関係がある公共施設の管理者と協議し、その同意を得なければならない。

2 開発許可を申請しようとする者は、あらかじめ、開発行為又は開発行為に関する工事により設置される公共施設を管理することとなる者その他政令で定める者と協議しなければならない。

3 前二項に規定する公共施設の管理者又は公共施設を管理することとなる者は、公共施設の適切な管理を確保する観点から、前二項の協議を行うものとする。

 

都市計画法施行令を読む

都市計画法29条に関連する施行令をまとめました。

(開発区域が二以上の区域にわたる場合の開発行為の許可の規模要件の適用)

第二十二条の三 開発区域が、市街化区域、区域区分が定められていない都市計画区域、準都市計画区域又は都市計画区域及び準都市計画区域外の区域のうち二以上の区域にわたる場合においては、法第二十九条第一項第一号の規定は、次に掲げる要件のいずれにも該当する開発行為について適用する。

一 当該開発区域の面積の合計が、一ヘクタール未満であること。

二 市街化区域、区域区分が定められていない都市計画区域又は準都市計画区域のうち二以上の区域における開発区域の面積の合計が、当該開発区域に係るそれぞれの区域について第十九条の規定により開発行為の許可を要しないこととされる規模のうち最も大きい規模未満であること。

三 市街化区域における開発区域の面積が、千平方メートル(第十九条第二項の規定が適用される場合にあつては、五百平方メートル)未満であること。ただし、同条第一項ただし書の規定により都道府県の条例で別に規模が定められている場合にあつては、その規模未満であること。

四 区域区分が定められていない都市計画区域における開発区域の面積が、三千平方メートル(第十九条第一項ただし書の規定により都道府県の条例で別に規模が定められている場合にあつては、その規模)未満であること。

五 準都市計画区域における開発区域の面積が、三千平方メートル(第十九条第一項ただし書の規定により都道府県の条例で別に規模が定められている場合にあつては、その規模)未満であること。

2 開発区域が、市街化区域、区域区分が定められていない都市計画区域又は準都市計画区域と都市計画区域及び準都市計画区域外の区域とにわたる場合においては、法第二十九条第二項の規定は、当該開発区域の面積の合計が一ヘクタール以上である開発行為について適用する。

(開発行為の許可を要しない通常の管理行為、軽易な行為その他の行為)

第二十二条 法第二十九条第一項第十一号の政令で定める開発行為は、次に掲げるものとする。

一 仮設建築物の建築又は土木事業その他の事業に一時的に使用するための第一種特定工作物の建設の用に供する目的で行う開発行為

二 車庫、物置その他これらに類する附属建築物の建築の用に供する目的で行う開発行為

三 建築物の増築又は特定工作物の増設で当該増築に係る床面積の合計又は当該増設に係る築造面積が十平方メートル以内であるものの用に供する目的で行う開発行為

四 法第二十九条第一項第二号若しくは第三号に規定する建築物以外の建築物の改築で用途の変更を伴わないもの又は特定工作物の改築の用に供する目的で行う開発行為

五 前号に掲げるもののほか、建築物の改築で当該改築に係る床面積の合計が十平方メートル以内であるものの用に供する目的で行う開発行為

六 主として当該開発区域の周辺の市街化調整区域内に居住している者の日常生活のため必要な物品の販売、加工、修理等の業務を営む店舗、事業場その他これらの業務の用に供する建築物で、その延べ面積(同一敷地内に二以上の建築物を新築する場合においては、その延べ面積の合計。以下この条及び第三十五条において同じ。)が五十平方メートル以内のもの(これらの業務の用に供する部分の延べ面積が全体の延べ面積の五十パーセント以上のものに限る。)の新築の用に供する目的で当該開発区域の周辺の市街化調整区域内に居住している者が自ら当該業務を営むために行う開発行為で、その規模が百平方メートル以内であるもの

(法第二十九条第二項の政令で定める規模)

第二十二条の二 法第二十九条第二項の政令で定める規模は、一ヘクタールとする。

 

まとめ

  • 都市計画法29条は開発許可制度について定めている。
  • 都市計画法29条1項:都市計画区域・準都市計画区域で開発行為をおこなう場合、都道府県知事等の許可が必要。
  • 都市計画法29条2項:都市計画区域外・準都市計画区域外で1ha以上の開発行為をおこなう場合、都道府県知事等の許可が必要。
  • 開発区域が、以下の区域で2つ以上またがるとき、都市計画法施行令22条の3に当てはまると開発許可が必要。
    • 市街化区域
    • 区域区分が定められていない都市計画区域
    • 準都市計画区域
    • 都市計画区域・準都市計画区域外の区域
  • 都市計画法第32条では、公共施設の管理者との同意・協議が義務づけられている。

人気記事 転職3回の一級建築士が語る。おすすめ転職サイト・転職エージェント

人気記事 副業ブログで月5万円を目指すには? 始め方とおすすめの収益化方法

人気記事 一級建築士試験のおすすめ資格学校・アプリ【総合資格とスタディング】