たわみ(撓み)とは|記号・単位・計算方法・公式をわかりやすく図解

たわみ_計算方法 構造規定
  • 「たわみ」って何?
  • たわみを計算する方法は?
  • 片持ち梁など、構造ごとの公式が知りたい。

こんな悩みに答えます。

 

本記事では、建築構造における「たわみ」の計算について解説。

建築物の梁やスラブが重さによって変形するのは最小限にとどめたいもの。

記事を読むことで、たわみの基準・公式・単位・記号など、ひと通りの知識が身につきます。

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住宅から特殊建築物まで1000件以上の設計相談を受けた経験をもとに、建築知識をわかりやすくまとめていきます。ご参考までにどうぞ。

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たわみとは

「たわみ」とは、梁などの構造材が、荷重を受けることによって反り曲がること。

漢字で書くと「撓み(たわみ)」です。

たわみとは

たわみはできるだけ小さくなるよう設計するもの。

建築基準法では、日常生活で床が変形することがないかを「たわみ制限」によって確認します。

たわみ制限

部材の有効長さに対して 1/250以下

たとえば、梁の有効長さ4000mmの場合は「4000/250=16mm」と計算。たわみが16mm以下で設計するわけですね。

 

たわみ量とは

梁に荷重がかかると曲げモーメントが発生して変形します。その梁の図心軸上の一点が移動したとき、鉛直方向の変位を「たわみ量」と言います。

実務で「たわみ」という場合は「たわみ量」を意味していることが多いですね。

たわみは量は3つの条件で変化します。

  1. 梁の曲げ剛性
  2. 支持条件
  3. 作用する荷重

 

たわみ角とは

「たわみ角」とは、部材がたわむときに生じる角度のことです。

たわみ_たわみ角_単純梁

単純梁の支点に注目してください。梁が傾いて角度がついていますよね。この角度が「たわみ角」。

たわみ角を示す記号は「θ(シータ)」 、単位は「rad(ラジアン)」です。

 

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たわみの単位

たわみの単位は「mm(ミリメートル)」または「cm(センチメートル)」です。

たわみの値は梁のスパン等に比べると小さいため、「mm」や「cm」であらわすのが一般的。

「m(メートル)」を使うことはありません。

 

たわみの記号

たわみの計算に関係する記号の意味と単位をまとめました。

名称 記号 単位
たわみ量 δ(デルタ) mm または cm
たわみ角 θ(シータ) rad
集中荷重 P kN または N
等分布荷重 kN/m または N/m
部材のスパン(支点間距離) L m または mm
弾性係数(ヤング係数) E N/mm2
断面二次モーメント I mm4 または cm4

たわみの計算では、それぞれの記号の単位を合わせることを忘れずに。

 

たわみの公式

主なたわみの公式を一覧表にまとめました。

公式の「^」記号は自乗を表します。たとえば、「x^2」は「xの2乗」という意味です。

単純梁

荷重 荷重状態 最大たわみ δ たわみ角 θ
集中荷重 単純梁_集中荷重 δ=PL^3/48EI θ=PL^2/16EI
等分布荷重 単純梁_等分布荷重 δ=

5wL^4/384EI

θ=wL^3/24EI
三角形分布荷重 単純梁_三角形分布荷重 δ=

0.00652wL^4/EI

θA=7wL^3/360EI

θB=-wL^3/45EI

片持ち梁

荷重 荷重状態 最大たわみ δ たわみ角 θ
集中荷重 片持ち梁_集中荷重 δ=PL^3/3EI θ=-PL^2/2EI
等分布荷重 片持ち梁_等分布荷重 δ=wL^4/8EI θ=-wL^3/6EI
三角形分布荷重 片持ち梁_三角形分布荷重 δ=wL^4/30EI θ=-wL^3/24EI

両端固定梁

荷重 荷重状態 最大たわみ δ たわみ角 θ
集中荷重 両端固定梁_集中荷重 δ=PL^3/192EI θA=θB=0
等分布荷重 両端固定梁_等分布荷重 δ=wL^4/384EI

公式の覚え方や計算方法がくわしく知りたい方は、たわみの公式一覧|片持ち梁・単純梁・両端支持梁の計算方法まとめの記事をご確認ください。

 

たわみの計算

公式だけでなく、たわみを計算するときの考え方も理解しておきましょう。

たとえば、単純梁の中央に集中荷重が作用したときの計算式は「δ=1/48×PL^3/EI」。

たわみ_計算式_単純梁まずはアルファベットに注目してください。

「PL」「荷重×スパン」。

荷重が大きい、もしくはスパンが長い場合は、梁が大きくたわみそうだとイメージできますよね。だから、PとLは計算式の分子に。

次は、曲げ剛性と言われる「EI」をみてみましょう。

「弾性係数(ヤング係数)E×断面二次モーメントI」「曲げに対する強さ」を示します。

曲げに対して強ければ強いほど、たわみは小さくなるため、EIは計算式の分母へ。

 

断面二次モーメントIとは

「断面二次モーメントI」は曲げにくさを示す値で断面の形で決まるもの。

たとえば、長方形断面では「bh^3/12」となります。

長方形断面を横に置いた場合と縦に置いた場合で、上から同じ荷重をかけた状況を想像してください。

断面二次モーメント_長方形断面

どちらがたわみやすいでしょうか?「横に置いた棒の方がたわみやすい」と思いますよね。

同じ断面積の棒でも向きによって、「たわみやすさ=曲げやすさ」が変わるということ。

あらためて、I=bh ^3/12の式に注目。「幅b」はそのままで、「高さh」を3乗してますよね。

「幅b」よりも「高さh」が大きいほど、断面二次モーメントIが大きくなることを示しています。

詳しくは、断面二次モーメントとは|計算方法・公式・単位をわかりやすく解説の記事をご確認ください。

 

弾性係数(ヤング係数)Eとは

材料の曲げにくさを表すのが弾性係数(ヤング係数)Eです。

「断面二次モーメントが大きい=曲げにくい部材」とは言いきれません。

断面二次モーメントが小さかったとしても、鉄とゴムを比べたら、鉄のほうが曲げにくいですよね。

つまり、どんな材料でできているかも曲げにくさの要因になるということ。

だからこそ、材料の曲げにくさを表す曲げ剛性EIの計算式に、弾性係数Eが含まれるわけですね。

詳しくは、ヤング係数(弾性係数)とは|単位・求め方・部材ごとの数値を解説という記事をご確認ください。

 

弾性係数(ヤング係数)Eを示すグラフ

鉄とゴムに同じ圧縮力をかけたら、鉄の方はほとんど変形しません。でも、ゴムは大きく変形します。

たわみ_ヤング係数_グラフ

仮に、同じ力で圧縮力をかけたとき、鉄は歪みが小さく、ゴムは歪みが大きくなります。

このグラフにおける傾きが弾性係数(ヤング係数)Eですね。

 

まとめ

  • たわみとは、梁などの構造材が、荷重を受けることによって反り曲がること。
  • たわみ制限:部材の有効長さに対して 1/250以下
  • たわみを示す記号:δ(デルタ)
  • たわみの単位:mm(ミリメートル)、cm(センチメートル)
  • たわみ角を示す記号:θ(シータ)
  • たわみ角の単位:rad(ラジアン)
  • たわみの計算に関する基礎知識
    • 「PL」は「荷重×スパン」。
    • 「EI」は「弾性係数(ヤング係数)×断面二次モーメント」で曲げに対する強さ。
      • 断面二次モーメントI:曲げにくさを示す値で断面の形で決まるもの。
      • 弾性係数(ヤング係数)E:材料の曲げにくさを表すもの

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