
- 採光補正係数を求めたい。
- バルコニーや庇があるときの計算方法は?
- 天窓の採光補正係数は3でいい?
こんな疑問に答えます。
本記事では、採光補正係数の計算方法・緩和について詳しく解説。
居室の窓から室内にどの程度の採光が入るか、建築基準法で定められた採光有効面積を算定する際に必須の知識です。

このサイトは、確認検査機関で審査を担当していた一級建築士が運営。
住宅から特殊建築物まで1000件以上の設計相談を受けた経験をもとに、建築知識をわかりやすくまとめていきます。ご参考までにどうぞ。
採光補正係数とは
採光補正係数とは、居室の窓に対して“採光上有効な面積”を算定するときに用いる係数。
窓の屋外側の環境や用途地域によって、数値が変わります。
この係数が大きければ大きいほど、室内に入る光が多いことに。(ただし、係数3.0が上限)
✓ 採光上有効な開口部の計算式

居室が採光無窓かどうかを判定するために、採光補正係数の検討は欠かせません。
✓ 関連記事
採光補正係数の計算方法
採光補正係数の計算式は、用途地域ごとに異なります。
✓ 採光補正係数の計算式
用途地域 | 算定式 | 採光補正係数を1とみなせる(窓から隣地・別建物までの)水平距離 |
住居系地域 | (D/H)×6-1.4 | 7m |
工業系地域 | (D/H)×8-1 | 5m |
商業系地域 | (D/H)×10-1 | 4m |
- D(水平距離):開口部の直上にある建築物の部分から、以下のいずれかまでの距離
- 隣地境界線
- 同一敷地内の他の建築物
- 当該建築物の他の部分
- H(垂直距離):開口部の中心から直上にある建築物の部分までの距離

上記の算定式における(D/H)を”採光関係比率”と言います。
採光窓の上部で、建築物がセットバックしていたり、オーバーハングする場合は下図のように水平距離と垂直距離を求めます。
また、窓の前面の隣地境界線が斜めであったり、いびつな形状のときは下図の位置で水平距離Dを計測します。
窓の上部に庇やバルコニーがある場合
窓の屋外側に庇やバルコニーなど、日射を遮るものがある場合は、採光補正係数の検討方法が変わります。
天窓(トップライト)の計算方法
天窓(トップライト)の採光補正係数は、原則として「3.0」です。
ただし、天窓から天井まで光井戸(ライトウェル)がある場合は、採光補正係数の計算が必要。

建築物の軒や庇によって、天窓への日射が阻害される部分は、採光補正係数0となるので注意しましょう。
インナーバルコニーや吹きさらしの廊下に面する場合
窓の屋外側にインナーバルコニーや吹きさらしの廊下など、“外気に開放された空間”がある場合、奥行きに応じて採光補正係数が低減されます。
採光関係比率をD/Hとし、用途地域別に算出した数値に、下表の係数を掛けて採光補正係数を求めます。
吹きさらし廊下・バルコニーなどの奥行き | 採光の有効係数 |
2m以下 | 100% |
2m超~4m以下 | 70% |
4m超 | 0% |

たとえば、住居系の用途地域では「採光補正係数=(D/H×6-1.4)×上表の数値」となりますね。
窓の外に、奥行き4mを超える屋根がある場合は、採光補正係数0。
つまり、法律上は光の入らない窓とみなす自治体が多いわけですね。
採光補正係数の緩和
建築物の敷地が以下のいずれかに面する場合、空地の幅の半分だけ敷地境界線があるものとみなされ、採光補正係数を算定する際の水平距離Dが緩和されます。
- 里道、農道、臨港道路など(公共団体が所有・管理するもの)
- 水道、都市下水路など(公共団体が所有・管理するもの)
- 水面(川・海)
- 線路敷き
- 公園・広場
将来にわたって空地であることが条件。

国や地方自治体が管理する敷地でなければ緩和の対象とならないのでご注意を。
採光補正係数Q&A
採光補正係数に関して、よくある質問をQ&A形式でまとめました。
✓ 採光補正係数Q&A【一覧】
- 敷地内に2棟以上の建物がある場合
- 屋上に開放性の高い手すり(縦格子など)がある場合
- 窓の屋外側に透明な庇がある場合
- 地階の居室でドライエリアに面して窓がある場合
敷地内に2棟以上の建物がある場合
屋上に開放性の高い手すり(縦格子など)がある場合
窓の屋外側に透明な庇がある場合
地階の居室でドライエリアに面して窓がある場合
採光補正係数について建築基準法を読む
採光補正係数の定義は、建築基準法施行令20条に書かれています。
「建築基準法を読みたくない」という場合は、建築法規PRO2025 図解建築申請法規マニュアル や建築申請memo2025 といった書籍で、図や表を見て理解を深めていきましょう。
第二十条
法第二十八条第一項に規定する居室の窓その他の開口部(以下この条において「開口部」という。)で採光に有効な部分の面積は、当該居室の開口部ごとの面積に、それぞれ採光補正係数を乗じて得た面積を合計して算定するものとする。ただし、国土交通大臣が別に算定方法を定めた建築物の開口部については、その算定方法によることができる。
2 前項の採光補正係数は、次の各号に掲げる地域又は区域の区分に応じ、それぞれ当該各号に定めるところにより計算した数値(天窓にあつては当該数値に三・〇を乗じて得た数値、その外側に幅九十センチメートル以上の縁側(ぬれ縁を除く。)その他これに類するものがある開口部にあつては当該数値に〇・七を乗じて得た数値)とする。ただし、採光補正係数が三・〇を超えるときは、三・〇を限度とする。
一 第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域又は田園住居地域 隣地境界線(法第八十六条第十項に規定する公告対象区域(以下「公告対象区域」という。)内の建築物にあつては、当該公告対象区域内の他の法第八十六条の二第一項に規定する一敷地内認定建築物(同条第九項の規定により一敷地内認定建築物とみなされるものを含む。以下この号において「一敷地内認定建築物」という。)又は同条第三項に規定する一敷地内許可建築物(同条第十一項又は第十二項の規定により一敷地内許可建築物とみなされるものを含む。以下この号において「一敷地内許可建築物」という。)との隣地境界線を除く。以下この号において同じ。)又は同一敷地内の他の建築物(公告対象区域内の建築物にあつては、当該公告対象区域内の他の一敷地内認定建築物又は一敷地内許可建築物を含む。以下この号において同じ。)若しくは当該建築物の他の部分に面する開口部の部分で、その開口部の直上にある建築物の各部分(開口部の直上垂直面から後退し、又は突出する部分がある場合においては、その部分を含み、半透明のひさしその他採光上支障のないひさしがある場合においては、これを除くものとする。)からその部分の面する隣地境界線(開口部が、道(都市計画区域又は準都市計画区域内においては、法第四十二条に規定する道路をいう。第百四十四条の四を除き、以下同じ。)に面する場合にあつては当該道の反対側の境界線とし、公園、広場、川その他これらに類する空地又は水面に面する場合にあつては当該公園、広場、川その他これらに類する空地又は水面の幅の二分の一だけ隣地境界線の外側にある線とする。)又は同一敷地内の他の建築物若しくは当該建築物の他の部分の対向部までの水平距離(以下この項において「水平距離」という。)を、その部分から開口部の中心までの垂直距離で除した数値のうちの最も小さい数値(以下「採光関係比率」という。)に六・〇を乗じた数値から一・四を減じて得た算定値(次のイからハまでに掲げる場合にあつては、それぞれイからハまでに定める数値)
イ 開口部が道に面する場合であつて、当該算定値が一・〇未満となる場合 一・〇
ロ 開口部が道に面しない場合であつて、水平距離が七メートル以上であり、かつ、当該算定値が一・〇未満となる場合 一・〇
ハ 開口部が道に面しない場合であつて、水平距離が七メートル未満であり、かつ、当該算定値が負数となる場合 零
二 準工業地域、工業地域又は工業専用地域 採光関係比率に八・〇を乗じた数値から一・〇を減じて得た算定値(次のイからハまでに掲げる場合にあつては、それぞれイからハまでに定める数値)
イ 開口部が道に面する場合であつて、当該算定値が一・〇未満となる場合 一・〇
ロ 開口部が道に面しない場合であつて、水平距離が五メートル以上であり、かつ、当該算定値が一・〇未満となる場合 一・〇
ハ 開口部が道に面しない場合であつて、水平距離が五メートル未満であり、かつ、当該算定値が負数となる場合 零
三 近隣商業地域、商業地域又は用途地域の指定のない区域 採光関係比率に十を乗じた数値から一・〇を減じて得た算定値(次のイからハまでに掲げる場合にあつては、それぞれイからハまでに定める数値)
イ 開口部が道に面する場合であつて、当該算定値が一・〇未満となる場合 一・〇
ロ 開口部が道に面しない場合であつて、水平距離が四メートル以上であり、かつ、当該算定値が一・〇未満となる場合 一・〇
ハ 開口部が道に面しない場合であつて、水平距離が四メートル未満であり、かつ、当該算定値が負数となる場合 零
まとめ
- 採光補正係数とは、窓の“採光上有効な面積”を算定する際に用いる係数。
- 採光上有効な開口部の計算式
- 採光上有効な開口部の面積 = 窓の面積 × 採光補正係数
- 採光補正係数の計算式は、用途地域ごとに異なる。
- 住居系地域 :(D/H)×6-1.4
- 工業系地域 :(D/H)×8-1
- 商業系地域: (D/H)×10-1
- 天窓(トップライト)の採光補正係数は、原則として「3.0」。
- 窓の外に、屋根のある“半屋外空間”がある場合、奥行きに応じて採光補正係数が低減される。
- 建築物の敷地が以下のいずれかに面する場合、採光補正係数を算定する際の水平距離Dが緩和される。
- 里道、農道、臨港道路など(公共団体が所有・管理するもの)
- 水道、都市下水路など(公共団体が所有・管理するもの)
- 水面(川・海)
- 線路敷き
- 公園・広場
人気記事 転職3回の一級建築士が語る。おすすめ転職サイト・転職エージェント