延焼ラインにかかる防火設備の設置基準【告示・大臣認定仕様を選択】

防火規定
  • 延焼ラインの開口部には、防火設備が必須?
  • 防火設備が必要となる条件が知りたい。
  • 防火設備は告示仕様でOK?

こんな疑問に答えます。

 

本記事では、延焼ラインにかかる開口部に防火設備が必要となる基準について解説。

防火設備の要否の判定に迷うという設計者の方にとって有益な情報です。

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住宅から特殊建築物まで、1000件以上の設計相談を受けて得た建築基準法の知識を、できるだけわかりやすくまとめていくので、ご参考までにどうぞ。

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延焼ライン内の開口部に防火設備が必要となる条件

延焼ライン_配置図

Q. どんな建築物でも 延焼ライン内の開口部は、防火設備にしないといけない?
A.  延焼ラインの開口は、防火設備が必須ではありません。「敷地の防火地域種別」や「建築物の構造」によって、要否が決まります。

 

以下のいずれかに該当する建築物は、延焼ライン内の開口部に防火設備が必要。

 

たとえば、計画敷地が準防火地域内の場合は、建物の構造が「その他建築物(耐火・準耐火建築物以外)」であっても、開口部に防火設備が必要です。

逆に、建物が耐火建築物であれば、「法22条地域」でも延焼ライン内の開口は防火設備となるわけですね。

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延焼ラインにある開口部について建築基準法を読んでみる

”耐火建築物 or 準耐火建築物”で、防火設備が必要となる根拠は”建築基準法2条”に書かれています。

第2条

(前略)

九の二 耐火建築物 次に掲げる基準に適合する建築物をいう。

イ その主要構造部が(1)又は(2)のいずれかに該当すること。

(中略)

ロ その外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に、防火戸その他の政令で定める防火設備(その構造が遮炎性能(通常の火災時における火炎を有効に遮るために防火設備に必要とされる性能をいう。第二十七条第一項において同じ。)に関して政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものに限る。)を有すること。


九の三 準耐火建築物 耐火建築物以外の建築物で、イ又はロのいずれかに該当し、外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に前号ロに規定する防火設備を有するものをいう。

イ 主要構造部を準耐火構造としたもの

ロ イに掲げる建築物以外の建築物であつて、イに掲げるものと同等の準耐火性能を有するものとして主要構造部の防火の措置その他の事項について政令で定める技術的基準に適合するもの

 

防火地域・準防火地域内で、開口部に防火設備が必要となる理由は、建築基準法61条

(防火地域及び準防火地域内の建築物)

第61条

防火地域又は準防火地域内にある建築物は、その外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に防火戸その他の政令で定める防火設備を設け、かつ、壁、柱、床その他の建築物の部分及び当該防火設備を通常の火災による周囲への延焼を防止するためにこれらに必要とされる性能に関して防火地域及び準防火地域の別並びに建築物の規模に応じて政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとしなければならない。ただし、門又は塀で、高さ二メートル以下のもの又は準防火地域内にある建築物(木造建築物等を除く。)に附属するものについては、この限りでない。

 

法61条に書かれている(上記の赤文字部分)防火設備の政令で定める基準は、建築基準法施行令136条の2

(防火地域又は準防火地域内の建築物の壁、柱、床その他の部分及び防火設備の性能に関する技術的基準)

第136条の2 【前略】

三 準防火地域内にある建築物のうち地階を除く階数が二以下で延べ面積が五百平方メートル以下のもの(木造建築物等に限る。) 次のイ又はロのいずれかに掲げる基準

イ 外壁及び軒裏で延焼のおそれのある部分が第百八条各号に掲げる基準に適合し、かつ、外壁開口部設備に建築物の周囲において発生する通常の火災による火熱が加えられた場合に、当該外壁開口部設備が加熱開始後二十分間当該加熱面以外の面(屋内に面するものに限る。)に火炎を出さないものであること。ただし、法第八十六条の四各号のいずれかに該当する建築物の外壁開口部設備については、この限りでない。

ロ 【中略】

四 準防火地域内にある建築物のうち地階を除く階数が二以下で延べ面積が五百平方メートル以下のもの(木造建築物等を除く。) 次のイ又はロのいずれかに掲げる基準

イ 外壁開口部設備が前号イに掲げる基準(外壁開口部設備に係る部分に限る。)に適合するものであること。

ロ 【以下省略】

 

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延焼ラインにかかる『防火設備』の種別・性能

延焼ラインにかかる開口部の防火設備の種別は、以下のいずれかを選択。

  • 告示仕様:建設省告示1360号(防火設備の構造方法を定める件)
  • 大臣認定仕様
    • 耐火建築物 or 準耐火建築物:認定番号EA・EBのいずれか
    • 防火地域 or 準防火地域:認定番号EA・EB・ECのいずれか

確認申請を提出する際は、申請図書に各防火設備の”認定番号”または”告示番号”を記載しなければなりません。

建具表や平面図の凡例に表示しておきましょう。

 

防火設備の告示仕様とは

防火設備を告示仕様とする場合、建設省告示1360号に定められた基準を満たす建具を用いることになります。

防火設備の構造方法を定める件

(建設省告示第1360号)

建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第二条第九号の二ロの規定に基づき、防火設備の構造方法を次のように定める。

以下省略

建設省告示第1360号における防火設備は、大きく分けて2つの基準で成り立っています。

  1. 防火戸の構造(例:鉄板の厚み0.8㎜以上1.5㎜未満のもの)
  2. 炎を遮る仕様であること(例:相じゃくりで隙間がないこと)

防火設備の告示仕様に関する詳しい内容は、基本建築関係法令集 〔法令編〕でご確認ください。

 

大臣認定仕様の防火設備とは

大臣認定仕様の防火設備は、炎を遮る性能によって、認定基準が変わります。

以下の表をご確認ください。

種類 防火設備
特定防火設備
大臣認定コード EA EB EC
要件 加熱面以外の面に火炎を出さない 加熱面以外の面に火炎を出さない 加熱面以外の面に火炎を出さない
遮炎時間 1時間 20分間 20分間
火災の種類 建築物の屋内または周囲で発生する通常の火災 建築物の屋内または周囲で発生する通常の火災 建築物の周囲で発生する通常の火災
性能 遮炎性能 遮炎性能 準遮炎性能
主な設置場所 防火区画 耐火建築物または準耐火建築物の外壁の開口部で延焼のおそれのある部分 防火地域または準防火地域内の建築物の外壁の開口部で延焼のおそれのある部分
関係法令 令第112条第1項 法第2条第九号二/口
令第109条の2
法第61条
令第136条の2

 

耐火建築物・準耐火建築物の防火設備

上表の”主な設置場所”欄に書かれているとおり、耐火建築物または準耐火建築物で、延焼ライン内の開口部に防火設備を設置するときは「EB認定」が必要

各サッシごとに「EB-1234」などのように「EB-(4桁の番号)」で認定番号が割り振られています。

もちろん、EBの上位の遮炎性能をもつ「EA認定」の防火設備を使用しても構いません。

 

防火地域・準防火地域内の「その他建築物」の防火設備

防火地域または準防火地域内で、「その他建築物(耐火・準耐火以外の建築物)」の延焼ラインにかかる開口部の防火設備は、「EC認定」が設置可能。

逆に言えば、「防火・準防火地域」にある「耐火・準耐火建築物」を設計する場合は「EB認定」が必要ということです。

例えば、”準防火地域内”にある3階建て住宅で”準耐火建築物”とする場合、延焼ライン内の防火設備は、「EB認定」の建具となりますね。

 

まとめ

  • 延焼ラインにかかる開口部の「防火設備」の要否は2つの基準で決まる
    • 建物の構造:耐火建築物・準耐火建築物
    • 地域:防火地域・準防火地域
  • 延焼ラインにかかる開口部の防火設備の種別は、以下のいずれかを選択
    • 告示仕様:建設省告示1360号
    • 大臣認定仕様:
      • 耐火建築物 or 準耐火建築物:認定番号EA・EBのいずれか
      • 防火地域 or 準防火地域:認定番号EA・EB・ECのいずれか