
- 防煙区画って何?
- 排煙設備の設計における防煙区画の基準が知りたい。
- 垂れ壁以外で区画する方法はある?
こんな疑問に答えます。
本記事では、排煙設備を設計するときに必要な『防煙区画』の基準について解説。
床面積が500㎡を超える建築物は、排煙設備が必要となる可能性が高いため、中規模以上の建物を設計する際に必須の知識です。

このサイトは、確認検査機関で意匠審査を担当していた一級建築士が運営しています。
住宅から特殊建築物まで1000件以上の設計相談を受けて得た建築基準法の知識を、できるだけわかりやすくまとめていくので、ご参考までにどうぞ。
防煙区画とは【火災時の煙を遮るための区画】
『防煙区画』とは、火災時の煙が一定の規模でとどまるように、防煙壁(垂れ壁・間仕切り壁)によって防ぐ区画のことです。
建築基準法において、排煙設備の設置が必要な建築物は、防煙区画が欠かせません。
”排煙設備が必要な建築物”の判定基準は、『排煙設備』とは|建築基準法の設置基準まとめ【免除の方法も解説】という記事でフローチャートにより解説しています。
建築基準法における防煙区画の設置基準
建築基準法における”防煙区画の設置位置に関する基準”は以下のとおり。
✔️ 防煙区画を設置するときの基準
- 床面積500㎡以内ごとに区画
- 区画内の各排煙口まで30m以下の距離となるように区画
建築基準法には明記されていないものの「防煙区画を設けることが望ましい」とされている部分もあります。
✔️ 防煙区画を設置することが望ましい部分
- 「階段・吹き抜け」は区画
- 「居室」と「避難経路」は区画
- 「告示1436号の緩和を適用した室」と「その他の部分」は区画
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床面積500㎡以内ごとの防煙区画【排煙口までの距離は30m以下】
建築基準法において、排煙設備が必要な建築物は、床面積500㎡以内ごとの防煙区画が義務付けられています。
また、500㎡以内であればどこで区画してもよいわけではなく、区画内のどこからでも排煙口に30m以内で到達できる位置に防煙垂れ壁や間仕切壁が必要。
「階段・吹き抜け」の防煙区画
階段や吹き抜けなど、下の階から上層階へ煙が流入するおそれのある部分は防煙区画が必要。
ただし、吹き抜けの規模が大きく、上下階を一体として排煙設備を検討すべき空間であれば、吹き抜けに面する防煙垂れ壁の設置が免除されます。
✔ 吹き抜け部分を「一の防煙区画」とみなせる条件
- 吹き抜け部分の面積が大きいこと
- 避難上支障がないこと
- 用途上やむを得ないこと(工場など)
上記の取扱いは防火避難規定の解説2023に書かれているものの、具体的な数値は決まっていません。

設計の際は事前に確認検査機関に相談することをおすすめします。
「居室」と「避難経路」の防煙区画
防火避難規定の解説2023によると「居室と避難経路は防煙区画することが望ましい」とされています。
居室で火災が発生した際、廊下に煙が流れてしまうと避難に支障をきたす恐れがあるからですね。
「告示1436号の適用室」と「その他の部分」との防煙区画
”告示による緩和を適用した部屋”と”その他の部分(廊下など)”は、防煙区画することが望ましいと考えられています。
建築基準法の本文には書かれていないので、法的な拘束力はないかもしれませんが、特定行政庁によっては取り扱いを定めています。
複数の室の防煙区画
図-1のように、自然排煙設備により煙を有効に排出できる室又は居室(以下「室等」という。)は、複数の室等(原則として避難経路となる廊下を除く。)を一の防煙区画にまとめることができる。
なお、一の防煙区画内には、平成12年建設省告示第1436号第4号を適用する建築物の部分を含める
ことはできない。
【排煙設備】二室を一つの防煙区画とみなす方法
壁と扉で区画された2つの室を、一つの防煙区画とみなす方法があります。
✔️ 排煙設備における2室を同一防煙区画とみなす取り扱い
間仕切り壁の上部が排煙上有効に開放され、以下の基準を満たす場合、2室を同一防煙区画とみなす。
- 間仕切壁の上部で、天井面から50㎝下方までの部分が開放されていること
- 開放部分の面積は、それぞれ排煙を負担する床面積の1/50以上

本来、間仕切り壁で区画された二室には、それぞれの部屋ごとに排煙口を設置する必要があります。
でも、上記のルールを守れば、2つの室の排煙設備を一室に設けた排煙口によってまかなうことが可能。

外壁に面していない部屋や廊下の排煙を検討するときに使える設計手法ですね。
防煙壁の構造
防煙区画は、以下のいずれかの防煙壁によって煙を遮る必要があります。
- 防煙垂れ壁
- 防煙間仕切り壁
- 防煙垂れ壁300㎜と常時閉鎖式の不燃戸(煙感知器連動閉鎖でも可)
防煙垂れ壁の設計基準は、『防煙垂れ壁』の設置基準とは|建築基準法による構造・高さを図解という記事で解説しているので、そちらをご確認ください。
防煙区画について建築基準法を読む
建築基準法において「防煙区画」というワードが出るのは、施行令126条の3。
「建築基準法を読みたくない」という方は、建築法規PRO2025 図解建築申請法規マニュアル や建築申請memo2025 といった書籍で、図や表を見て理解するのがおすすめです。
第126条の3
前条第一項の排煙設備は、次に定める構造としなければならない。
一 建築物をその床面積500㎡以内ごとに、防煙壁で区画すること。
二 排煙設備の排煙口、風道その他煙に接する部分は、不燃材料で造ること。
三 排煙口は、第一号の規定により区画された部分(以下「防煙区画部分」という。)のそれぞれについて、当該防煙区画部分の各部分から排煙口の一に至る水平距離が30m以下となるように、天井又は壁の上部(天井から80㎝(たけの最も短い防煙壁のたけが80㎝に満たないときは、その値)以内の距離にある部分をいう。)に設け、直接外気に接する場合を除き、排煙風道に直結すること。
まとめ
- 防煙区画とは、火災時の煙が一定の規模でとどまるように、防煙壁によって防ぐ区画のこと。
- 防煙区画を設置するときの基準
- 床面積500㎡以内ごとに区画
- それぞれの排煙口まで30m以下の距離となるように区画
- 防煙区画を設置することが望ましい部分
- 「階段・吹き抜け」は区画
- 「居室」と「避難経路」は区画
- 「告示1436号の緩和を適用した室」と「その他の部分」は区画
- 2室を同一防煙区画とみなすには、以下の基準に適合させること。
- 間仕切壁の上部で、天井面から50㎝下方までの部分を開放
- 開放部分の面積は、排煙を負担する室面積の1/50以上
- 防煙区画は、以下のいずれかの防煙壁によって煙を遮ること。
- 防煙垂れ壁
- 防煙間仕切り壁
- 防煙垂れ壁300㎜と常時閉鎖式の不燃戸(煙感知器連動閉鎖も可)