
- 隣地斜線における天空率の測定点は?
- セットバックは使える?
- 天空率を緩和する方法があれば知りたい。
こんな悩みに答えます。
本記事では、隣地斜線制限における天空率について解説。
高さ20mを越えるような高層建築物を設計する方に役立つ情報です。
天空率の基礎知識が知りたい方は、先に『天空率』とは|高さ制限3種(道路・隣地・北側)の計算方法を解説という記事をご確認ください。

このサイトは、確認検査機関で意匠審査を担当していた一級建築士が運営。
住宅から特殊建築物まで1000件以上の設計相談を受けた経験をもとに、建築基準法の知識をわかりやすくまとめていきます。ご参考までにどうぞ。
隣地斜線制限における天空率とは
天空率の検討によって基準を満たすことができれば、隣地斜線を越える建物を設計することが可能です。
これは建築基準法56条7項に定められた規定。
(建築物の各部分の高さ)
第56条 建築物の各部分の高さは、次に掲げるもの以下としなければならない。
中略
7 次の各号のいずれかに掲げる規定によりその高さが制限された場合にそれぞれ当該各号に定める位置において確保される採光、通風等と同程度以上の採光、通風等が当該位置において確保されるものとして政令で定める基準に適合する建築物については、それぞれ当該各号に掲げる規定は、適用しない。
一 中略
二 第1項第二号(⇐隣地斜線制限)、第5項及び前項(同号の規定の適用の緩和に係る部分に限る。) 隣地境界線からの水平距離が、第1項第二号イ又はニに定める数値が1.25とされている建築物にあつては16m、第1項第二号イからニまでに定める数値が2.5とされている建築物にあつては12.4mだけ外側の線上の政令で定める位置

天空率を活用することで隣地斜線による規制が除外されることがわかりますね。
天空率の判定方法
天空率による検討では、建築基準法で定められた測定点において、以下の基準を満たす必要があります。
計画建築物・適合建築物・測定点といった用語の意味がわからない方は、『天空率』とは|高さ制限3種(道路・隣地・北側)の計算方法を解説でご確認ください。
敷地区分方式と一の隣地方式
隣地斜線制限による天空率の検討方法は2種類あります。
- 敷地区分方式
- 一の隣地方式
敷地区分方式とは
敷地区分方式とは、敷地境界線の辺ごとに領域を分けて天空率を検討する方式。
辺ごとに天空率の検討が必要となるため、いびつな形の敷地では、大量の図面を作成する必要があります。

辺の長さが短い境界線では、領域が狭くなり、天空率の検討でNGが出ることも多い…。
入隅敷地での天空率
敷地がL型で入隅のある敷地では、下図のように領域を分けて天空率を検討するのが一般的です。
出典:横浜市
一の隣地方式とは
一の隣地方式とは、敷地の隣地境界線をまとめて一本の線とみなし、天空率を検討する方法。
すべての隣地境界線から発生する斜線を同時にモデリング。

三次元で適合建築物をつくれるCADソフトが必要ですね。
✔️ 一の隣地方式のメリット・デメリット
メリット:
- 敷地区分方式ではNGとなる辺長の短い隣地境界線でも、適合となる可能性がある。
- 設計図書の作成枚数が減らせる。
デメリット:
- 敷地区分方式よりも適合建築物が小さくなるため、敷地の形によっては不利になるケースがある。
- 三次元で適合建築物をモデリングできるCADソフトが必要となる。
- 一の隣地方式による検討を認めない特定行政庁や確認検査機関がある。
測定点の取り方
隣地斜線における天空率の測定点は、適用される斜線の勾配ごとに、以下の基準で設定します。
✔️ 天空率の測定点の位置
隣地斜線の勾配 | 天空率の測定位置 | |
測定距離 | 1.25 | 16m |
2.5 | 12.4m | |
測定間隔 | 1.25 | 8m以下で、等間隔に配置 |
2.5 | 6.2m以下で、等間隔に配置 | |
測定高さ | - | 平均地盤面 |
適合建築物のつくり方
適合建築物は、隣地斜線を超えない高さでモデリングします。
適合建築物を作成するときも、「敷地区分方式」と「一の隣地方式」で考え方が異なります。
- 敷地区分方式:隣地境界線の辺ごとに適合建築物をつくる
- 一の隣地方式:すべての隣地境界線からの斜線制限に適合する建築物をつくる
天空率の緩和
隣地斜線制限による緩和は、天空率の検討においても有効です。
代表的なものを挙げると以下のとおり。
- 隣地との高低差による緩和
- 隣地に公園、広場、水面がある敷地の緩和
計画敷地が隣地の地盤面よりも1m以上低い場合、隣地斜線制限が緩和されます。
計画敷地が以下のいずれかに面しているときは、隣地斜線制限が緩和されます。
- 公園
- 広場
- 水面

逆に言えば、天空率に特有の緩和要件はありませんね。
✓ 関連記事
隣地斜線の天空率について建築基準法を読む
隣地斜線制限の測定点の位置は、建築基準法施行令135条の10に定められています。
「建築基準法を読みたくない」という方は、建築法規PRO2025 図解建築申請法規マニュアル
や最新改訂版 確認申請[面積・高さ]算定ガイドといった書籍で、図や表を見て理解するのがおすすめです。
(法第56条第7項第二号の政令で定める位置)
第135条の10
法第56条第7項第二号の政令で定める位置は、当該建築物の敷地の地盤面の高さにある次に掲げる位置とする。
一 法第56条第7項第二号に規定する外側の線(以下この条において「基準線」という。)の当該建築物の敷地(隣地高さ制限が適用される地域、地区又は区域内の部分に限る。)に面する部分の両端上の位置
二 前号の位置の間の基準線の延長が、法第56条第1項第二号イ又はニに定める数値が1.25とされている建築物にあつては8m、同号イからニまでに定める数値が2.5とされている建築物にあつては6.2mを超えるときは、当該位置の間の基準線上に、同号イ又はニに定める数値が1.25とされている建築物にあつては8m、同号イからニまでに定める数値が2.5とされている建築物にあつては6.2m以内の間隔で均等に配置した位置
まとめ
- 天空率の検討によって、隣地斜線を越える建物を設計することが可能。
- 建築基準法で定められた測定点において、以下の基準を満たすこと。
- 計画建築物の天空率 ≧ 適合建築物の天空率
- 隣地斜線制限による天空率の検討方法は2種類。
- 敷地区分方式:敷地境界線の辺ごとに領域を分ける
- 一の隣地方式:敷地の隣地境界線をまとめて一本の線とみなす
- 天空率の測定点の位置
- 測定距離:
- 勾配1.25→測定位置16m
- 勾配2.5→測定位置12.4m
- 測定間隔:
- 勾配1.25→8m以下で、等間隔に配置
- 勾配2.5→6.2m以下で、等間隔に配置
- 測定高さ:
- 測定距離:
- 適合建築物は、隣地斜線を超えない高さでモデリング。
- 隣地斜線制限による緩和は、天空率の検討においても有効。
- 隣地との高低差による緩和
- 隣地に公園、広場、水面がある敷地の緩和