無窓居室とは|採光・換気・排煙・避難の4種類を整理【一覧表あり】

建築基準法まとめ
  • 『無窓居室(むそうきょしつ)』ってなに?
  • 聞いたことはあるけど、無窓居室の意味がわからない。
  • 無窓居室って何種類あるの?整理しきれない。

こんな悩みに答えます。

本記事では、建築基準法における『無窓居室』について、一覧表を用いてわかりやすく解説。

「通称:無窓居室」は、建築基準法において重要な意味を持ち、特殊建築物などを設計するのであれば必須の知識といえます。

このサイトは、確認検査機関で意匠審査を担当していた一級建築士が運営しています。

住宅から特殊建築物まで1000件以上の設計相談をうけて得た建築基準法の知識を、できるだけわかりやすくまとめていくので、ご参考までにどうぞ。

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『無窓居室(むそうきょしつ)』とは

『無窓居室むそうきょしつ)』とは、「建築基準法における一定の要件を満たす窓」が無い居室のこと。

つまり、単純に窓が全くない部屋を示すのではありません。窓があったとしても「建築基準法上の基準を満たす窓」が無ければ、『無窓居室』にあたります。

 

建築基準法では、人が滞在する居室に対して、環境衛生・防火避難の面からさまざまな規制がかけられています。

建築基準法における居室の窓(開口部)に関する基準は4つ。

  1. 『採光』
  2. 『換気』
  3. 『排煙』
  4. 『避難』

そして、上記の基準を満たす窓がない居室(無窓居室)を、それぞれ以下のように呼びます。

  1. 採光無窓居室:採光の基準を満たす窓がない居室
  2. 換気無窓居室:換気の基準を満たす窓がない居室
  3. 排煙無窓居室:排煙の基準を満たす窓がない居室
  4. 避難無窓居室:避難の基準を満たす窓がない居室

無窓居室にあてはまると、建築基準法の制限が強化されるので注意しましょう。

特に、防火避難に関しては人命に直結するため、とても厳しい条件が課されます。

 

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『無窓居室』の取り扱い一覧表

『無窓居室』の詳しい基準・制限はのちほど解説しますが、まずは全体像をつかむために、一覧表を確認してください。

 建築基準法における無窓居室の取り扱い一覧表

無窓居室の種類 項目 無窓居室となる基準 無窓居室に対する措置 建築基準法関係条項
換気 換気 換気に有効な開口部<居室面積×1/20 自然換気・機械換気・空気調和設備を設置 法28条2項、令20条の2
採光 非常用
照明
採光に有効な開口部<居室面積×1/20 非常用照明を設置 令116条の2、令126条の4
採光 歩行距離 採光に有効な開口部<居室面積×1/20 直通階段までの歩行距離を30m以下とする 令120条、令116条の2
排煙 排煙 排煙に有効な開口部(天井から下方80㎝以内)<居室面積×1/50 排煙設備を設置 令116条の2、令126の2
採光・排煙 内装制限 (1)50㎡を超える居室で、排煙に有効な開口部(天井から下方80㎝以内)<居室面積×1/50

(2)温湿度調整を必要とする作業室その他用途上やむを得ず採光が確保できない居室

※上記(1)(2)いずれも天井高6mを超える室を除く

居室や地上にいたる廊下、階段の壁・天井仕上げを準不燃材料とする 令128条の3の2
採光・排煙 敷地と
道路関係
(1)採光に有効な開口部<居室面積×1/20

(2)排煙に有効な開口部(天井から下方80㎝以内)<居室面積×1/50

道路の幅員、接道長さについて条例で制限が付加 法43条2項、令116条の2、令144条の5
採光・避難 主要
構造部
次の(イ)(ロ)のどちらにも該当する居室

(イ)採光に有効な開口部<居室面積×1/20

(ロ)以下に示す“直接外気に接する避難上有効な開口部”が無いもの

  • 直接1m以上の円が内接できる開口部
  • 幅75㎝×高さ120㎝以上の開口部
居室を区画する主要構造部を耐火構造または不燃材料でつくったもの 法35条の3、令111条

建築基準法を勉強し始めたころは、無窓居室について、ぼんやりとしか理解できずに悩んでいました。

確認検査機関の検査員として、設計者の方から質問を受けても、自信をもって回答できず…。

 

しかし、無窓居室の種類と基準を一覧表にしたことで、あたまの中が整理されて、一気に理解が進んだ思い出があります。

無窓居室の全体像を把握するために、一覧表を何度も見返しながら、実践経験を積むことで確実に理解が深まります。ぜひ試してみてください。

 

『無窓居室』の基準を解説

一覧表で見てもわかるように、無窓居室には4つの種類があります。

それぞれの無窓居室について、判定基準と建築基準法における制限をくわしく解説していきます。

 

採光無窓居室とは

採光無窓居室は、建築基準法において「採光に関する基準を満たしていない居室」です。

✔ 『採光無窓居室』の判定基準

採光に有効な開口部の面積 < 居室床面積の1/20

 

✔ 『採光無窓居室』に対する必要措置

  1. 非常用の照明装置を設置(令116条の2第1項一号・令126条の4)
  2. 直通階段までの歩行距離を30m以内とする(令120条・令116条の2第1項一号)
  3. 道路の幅員、接道長さについて条例で制限が付加(法43条2項・令116条の2・令144条の5)
  4. 居室を区画する主要構造部を耐火構造または不燃材料でつくる(法35条の3・令111条)
    『避難無窓居室』にも当てはまる場合のみ

 

✔ 『採光無窓居室』の注意点

「採光無窓居室は日光が入らないから、非常用照明さえ設置しておけば大丈夫」と、勘違いしている設計者の方がわりといます。

上記の”採光無窓居室に対する必要措置”を見てわかるとおり、「採光無窓」を設計すると、建築基準法における4つの制限について検討しなければいけません。

なかでも、「居室を区画する主要構造部を耐火構造または不燃材料でつくる」という条件は非常に厳しく、木造建築物では適合させることが非常に困難。

木造は主要構造部である壁が木材で構成されているため、不燃材料では無く、耐火構造とするのもハードルが高いからです。

木造建築物の居室は原則、「床面積の1/20の採光に有効な開口部を設ける」という意識で設計に臨みましょう。

ただし、「主要構造部の区画」が必要となるのは、「採光無窓」と「避難無窓」のどちらにも当てはまる場合のみ。

“直接外気に接する避難上有効な開口部”が居室にあれば、採光無窓であっても「主要構造部の区画」は不要となります。

 

✔ 『採光無窓居室』の区画を緩和する規定

採光無窓居室であっても、「国土交通大臣が定める基準(告示249号)」を満たす場合は、耐火構造または不燃材料による区画が免除されます。

詳しくは、採光無窓居室の区画緩和について解説 |法35条の3→告示249号の記事をご確認ください。

 

換気無窓居室

換気無窓居室は、建築基準法において「換気に関する基準を満たしていない居室」です。

✔ 『換気無窓居室』の判定基準

換気に有効な開口部の面積 < 居室床面積の1/20

 

✔『換気無窓居室』に対する必要措置

自然換気設備、機械換気設備、空気調和設備などを設けること(法28条2項・令20条の2)

 

排煙無窓居室

排煙無窓居室は、建築基準法において「排煙に関する基準を満たしていない居室」です。

✔ 『排煙無窓居室』の判定基準

排煙に有効な開口部(天井から下方80㎝以内)< 居室面積×1/50

 

✔『排煙無窓居室』に対する必要措置

  • 自然排煙設備もしくは機械排煙設備を設置する(令116条の2第1項二号・令126の2)
  • 道路の幅員、接道長さについて条例で制限が付加(法43条2項・令116条の2・令144条の5)

 

避難無窓居室

避難無窓居室は、建築基準法において「避難に関する基準を満たしていない居室」です。

✔ 『避難無窓居室』の判定基準

“直接外気に接する避難上有効な開口部”(以下のいずれか)が無い居室

  • 直接1m以上の円が内接できる開口部
  • 幅75㎝×高さ120㎝以上の開口部

 

✔『避難無窓居室』に対する必要措置

居室を区画する主要構造部を耐火構造または不燃材料でつくる(法35条の3・令111条)
採光無窓居室にも当てはまる場合のみ

 

まとめ

  • 無窓居室(むそうきょしつ):「建築基準法における一定の要件を満たす窓」が無い居室
  • 無窓居室は4種類
    • 採光無窓居室
    • 換気無窓居室
    • 排煙無窓居室
    • 避難無窓居室
  • 無窓居室にかかる建築基準法の制限は一覧表で整理するとわかりやすい

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